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母の病気を治すため、森に薬草を採りに行く話  作者: さまっち
第三章 ロマールの町
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3 採集クエスト

 冒険者ギルドを出た僕たちは、早速、草原地帯に向かうために町の出入口の方へ歩く。

 僕の足取りはとても軽やかだ。

「何だか嬉しそうね、レイン」

「そりゃそうだよ。憧れの冒険者の初仕事なんだから。嬉しくもなるよ」

「それもそうね」


 本当は採集場所まで走って行きたいくらいだけど、そうするとミーシャがついてこれないので、自重してる。

「それにしてもレインが薬草を採りに出かけるって何だか変な感じね。村にいる時は、私が薬草を採りに行く時に、ついてきてもらってはいたけど、レインはいつも私の護衛がメインだったから、薬草採集の手伝いはしてなかったじゃない」

「そうだね」


 僕は村にいた時のその過去の経験を思い出しながら、しみじみと呟く。

 あの頃は魔物と遭遇しないよう細心の注意を払ってミーシャの護衛に集中していた。

 といっても子供の頃はほぼ安全な場所でしか薬草の採集を行っていなかったから、魔物と相対するなんて事態には一度もならなかったけど。

 それでもいつどこで魔物に遭遇するかは運も絡むからと思って、気を抜いたことはなかった。

 まあ子供の頃だったし護衛ごっこみたいなもので、守ることを楽しんでいたのもある。


「今日のレインは護衛がメインじゃなくて採集がメインだけど。ちゃんと私のこと守ってくれる?」

 ミーシャが僕にそう聞いてくる。

 不安そう……には見えないけど、少しは不安なのかな。

 僕はミーシャを安心させるように力強く頷くと、言葉を選びながら答えた。

「大丈夫。ミーシャのことはきちんと守るよ。確かに護衛に集中している時より、周りへの警戒が薄れるかもしれないけど、ミーシャのことは守ると約束するよ」

「そう。ありがとう」


 ミーシャが嬉しそうに感謝を述べた。

 少しミーシャの顔が赤くなっていたが、僕にはその意味がよくわからなかった。

「だからあんまり心配しなくてもいいよ」

「うん。安心する」

 それから少しして町の出入口にやってきた。

 町を出て僕らは西に向かって歩く。

 そうすればもう眼前に草原地帯が広がっている。


「よし、それじゃ採集を始めよう」

「頑張ろう。おー」

「早速だけど、どの草を採ったらいいのか僕に教えてよ、ミーシャ」

「さっき説明を受けてたじゃない」

「そうだけど、あんなに色んな種類の薬草を見せられても、覚えられないよ僕」


 ミーシャが小さなため息をついて「しょうがないなぁ」と呟いた。

「とりあえず一番簡単に見つけられそうな薬草を教えてよ」

「さっきのお姉さんにそう聞いたら良かったのに。私だってこの町の周辺にどんな薬草がどのくらい生えてるかなんて正確には知らないよ」

「えっ、ミーシャにも分からないの? 頼りにしてたのに」

 僕は愕然とした気持ちでミーシャに目を向ける。


「まあ、分からなくはないけど」

「どっちなの!?」

「正確な知識はないけど、見たら大体分かるってこと。それに村からこの町に来るときに通ってきた道だし。私、昨日はずっと珍しい薬草を探しながら歩いてたから、珍しくない薬草はあまり気にしてなかったけど、多少は記憶に残ってるよ」

 それを聞いて僕は一安心だ。

「それじゃ、えっと、どうしよう。まずは少し周辺に生えてる草を調べてみる?」

「そうね。一応、調べさせて」


 まず僕たちは背負っていたバックパックを地面に下ろして身軽になった。

 その後、ミーシャが周辺に生えている草を調べ始める。

 僕はその後ろについて歩き、草を覗き込んでいく。

 しばらく調べた後にミーシャが一つの草に手を伸ばし、引き抜いた。

 その草を僕に見せながら言う。


「この薬草がこの辺りに多いみたい。はい、あげる。見本として持ってて」

「ありがとう、ミーシャ」

 僕は草を受け取り、その姿形を目に焼き付ける。

「じゃあ、その草を頑張って集めてね」

「うん。わかった。ちなみにこの薬草はどんな薬になるの?」

「効能の低い傷薬だよ。主に冒険者じゃなく一般の人の怪我を治すのに使われるの」


「そうなんだ。さすがミーシャだね。勉強になるよ。この薬草の価値はどれくらいなの?」

「価値としては最低ランクね。価値は主に希少性と効能で決まるんだけど。この薬草は希少性も低いし、効能も低いから。何か別の使い道でも見つからない限り、どの町に行っても価値は低いんじゃない」

「逆にいうと、特別な使用法が見つかれば価値が上がる可能性もあるんだ。薬草って奥が深いんだね」


「そうね。薬草の知識を学ぶのは面白いよ。それじゃ、お話はそれくらいにして、そろそろ採集に入りましょ。私は私で勝手に珍しい薬草を探すから。珍しくない薬草も採るけど、そうしたらレインにあげるね。珍しい薬草はあげないけど」

「勝手に探すのはいいけど、あまり僕から離れすぎないでね。離れすぎると万が一ってこともあるから」


 言葉には出さなかったが、守り切れない可能性があるということだ。そんな事態には決してさせないと心に誓ってはいるが、安全対策は万全を期した方がいいだろう。

「わかった。あまり離れないようにする」

 それから僕たちは薬草の採集作業に入った。僕のそばでミーシャも薬草を採集している。

 ミーシャの手には僕のより小さい麻袋が二つあり、一つは珍しい薬草の採集用。

 もう一つは珍しくない薬草の採集用になっているみたい。


 後で珍しくない薬草はくれると言っていたので、自分に必要な分と分けておくためだろう。

 僕の方は、ミーシャに教わった薬草をひたすら探して集めている。

 結構、あちこちに生えているみたいで、沢山集められそうだ。

 最初は手の中の見本と見比べて、草を判別していたけど、徐々に慣れてきた。

 草の特徴を覚えられたので、今はもう見本を手に持たずとも、目的の薬草を判別して採集することができる。

 単純なことだけど成長したなと思う。


「ねえ、ミーシャ。この薬草の特徴は覚えたから、もう一つ何かおすすめの薬草を教えてよ」

「いいわよ。そうねえ」

 ミーシャが草を一つ引っこ抜いて僕に渡してくれる。

「その薬草も結構、生えてるからすぐに見つけられるよ。ちなみに風邪薬になるわ。薬草の価値はこれも最低ランクね。さっきのよりは少しだけ価値が高いくらい」


「ありがとう。この薬草も探してみるね」

 そして僕はまた採集作業に戻る。

 ミーシャの言った通り、この薬草も簡単に見つけることができた。

 薬草を見つけるたびに引っこ抜いて麻袋の中に入れていく。

 一定間隔で立ち上がって周囲を確認することも大事だ。

 採集作業に集中しすぎて周辺確認を忘れることがないように気を付ける。


 まあ草原で視界が開けているので、魔物の接近をいきなり許すことはないと思うけど。

 でも油断や慢心が無いように心掛けている。

 その後も採集をだいぶ続けていると、ぐぅ、と僕の腹が鳴った。

 そろそろお昼の時間かもしれない。


 僕は採集を続けているミーシャに声をかける。

「ねえ、ミーシャ。そろそろお昼じゃない?」

「そうね。私もお腹が空いてきたかも」

「これくらいにして一度町に戻ろっか」

「そうしましょ」

 僕たちは町に向かって歩き始めた。


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