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第十二話 実験

 翌日から旭と満夜は時に別々に、時に共により精密な検査を受けて、心身の詳細なデータを人類側へと提供する時間が続いた。

 満夜の常識を超えた不死身の性質、旭が獲得した人間を超えた身体能力と精神汚染に対する前例のない高い耐性……二人が齎すデータは人類にとって、どちらともに驚天動地のものであり、同時に完全に解明するのはメテオンの技術と解明するのと同等の難度だと、早々に人類に理解させるものだった。


 旭が以前からチームを組んでいた仲間と言葉を交わす時間もなく、満夜と一緒にいる時間も少なくなっていたが、それでもこれまでとは違った形でメテオンを駆除する為に、貢献できているのだと、そう旭は自分に言い聞かせている。

 夜になると吸血鬼化した肉体と精神が活性化し、ほんのりと目が赤色を帯びて眠気が吹き飛んでしまうのには、慣れるまで少しばかり時間が必要だった。

 だが、悪いことばかりではない。満夜が共にいる時には旭の知らない大昔から少し昔まで、世界中の様々な話を聞かせてくれるから、星と月の輝く夜の時間は眠らぬまま夢を見ているように楽しい時間だった。


 そうして幾日かが過ぎたころ、旭はアトラス機関所属の技術者達と美星を含む警護のスパルトイ達に囲まれながら、アイギスフレームの各種テストを行う試験場の一角に居た。

 海神基地の地下に設けられた第三試験場である。

 四方を堅牢な建材で分厚く固め、アイギスフレームにも使用している斥力場シールドを内側に向けて、何重にも展開して万が一の際には、外部へと被害が及ぶのを防ぐ手立てを施した施設だ。


 天井に埋め込まれた照明が照らす中、試験場の中央で旭は久しぶりに会った相棒を前に、隠しきれぬ喜びのままに微笑を浮かべる。

 旭の目の前には、両膝を着いた待機姿勢の星兜があった。搭乗を補助する為の拘束台にセットされていている状態だ。

 武装は全て取り払われているが、傷一つなく照明を浴びてキラキラと輝く装甲の眩しさに、旭は拍手をしたいくらいに浮かれていた。


「そんな時間は経っていないはずなのに、なんだか久しぶりだね、星兜」


 感慨深く星兜の前に立つ旭に対し、玉兎に乗り込んだ美星が通信機越しに話しかけてくる。万が一、旭が暴走した時に留める役だ。旭を発見した縁からか、どうやら海神基地に戻ってからも、旭の面倒を見る羽目になったらしい。


「今回の実験は貴方とプロメテウスドライブの同調と精神汚染の影響を確認するのが目的。私はもしもの時、貴方を止めるのが役割。それは詳しく話さなくてもわかるでしょう」


「はい。私がどんな影響を受けのか。それはこれからのスパルトイにとって、大きな意味を持つのも理解しています」


「うん。なら、私から言えることは……自分をしっかり持って。それくらい。それから、細かい事は、あちらから」


 美星が玉兎ごと振り返ったのは、壁に強化ガラスが何重にも嵌め込まれた一角だ。上から試験場を見下ろせる位置にあるそこは、実験データを観測する為の管制室だ。

 精神汚染を受けずにプロメテウスドライブの出力を上げる、という人類側の戦略上の大問題を解決できるかもしれない可能性の重要性を、本当の意味で理解している人々がそこに詰めている。


『夕闇旭、聞こえている? 今回の実験を監督する外星特異技術開発部のキリエ・サボウ中佐よ』


 耳に被せた通信機から聞こえてきたのは、四十前の女性の声だった。

 外星特異技術──すなわちメテオンによって齎された、地球を起源としない技術を研究・解析する為の部署で、キリエと言えばアイギスフレームの開発にも関わってきた大物である。

 太平洋方面のメテオンと日夜激戦を繰り広げる海神基地で、アイギスフレームの修理、新型機の開発、スパルトイのケアと八面六臂の活躍を見せる重要人物だ。


 アイギス機関の制服の上に、白衣型コンピューターを着込んだキリエは、眼鏡型のデバイスと手元の卓上端末を操作しながら、旭へと話を続ける。

 癖のあるライトブラウンの髪を首筋でカットしたキリエの顔色は、休む暇のない連日の作業で疲労の化粧をうっすらと刷いているが、今は希望の光となるかもしれない未知を前にして、底知れない活力が頬を赤く染めつつある。


「はい、聞こえています。サボウ中佐」


『よろしい。美星から聞いたでしょうけど、今回の実験は貴方の精神汚染に対する抵抗力の変化を確かめる為のものよ。内容としては至ってシンプル。貴方用に調整した星兜に搭乗し、こちらの指示の通りに機体の出力を上げて行くだけ。

 でも貴方の精神汚染への耐性次第では、長時間、アイギスフレームに搭乗する可能性もあるから、油断はしないように。美星に貴方の介錯をさせたくはないし、首のチョーカーを起爆させたくはない。十分に注意するように』


「はいっ!」


『元気があってよろしい。健全な肉体と健全な精神こそ、メテオンの精神汚染に対抗する最善手なのだから。では旭、星兜へ搭乗を』


 許可が下りるのを今か今かと待っていた旭は、手早く星兜に背中を預けて開いていた胸部装甲を閉じ、ヘルメットを被る。

 機体は拘束台にセットされたままで、事前にロックが掛けられていて、プロメテウスドライブに火を入れる以外には、通信機能くらいしか操作できるものはない。


 それほどまでに万が一を警戒している証拠だ。本当にどうしようもなくなったら、旭の首のチョーカーが起動するか、美星が玉兎に握らせている雷火がプラズマの銃弾を撃ち込むのも、本当の話なのだ。

 それを十分に分かった上で、それでも旭は自分の星兜にもう一度乗れたことが嬉しく、またストームマンタを撃った時のように、プロメテウスドライブの鼓動を聞くのが楽しみだった。


『乗り込んだわね? それではプロメテウスドライブの立ち上げを開始して。ステージⅠからスタートよ。こちらの指示があるまではステージを勝手に移行しないこと』


「はい」


 短く明瞭な返事をした後、旭は手早く機体の立ち上げ作業を進め、虹彩認証を始めとした機体側のセキュリティをクリアして、プロメテウスドライブに火を灯す段階に達する。


「サボウ中佐、これよりプロメテウスドライブの稼働を開始します。目標ステージⅠ」


『了解。作業を開始して』


 キリエからの指示を待ち、旭は星兜の心臓であり、頭脳でもあるプロメテウスドライブ──侵略者によって齎された新たな叡智と災厄の火へと意識を向ける。

 旭の思考を受信した機体側がプロメテウスドライブへと働きかけ、その鼓動が緩やかに刻まれだすのを、旭は自分の体の内側から聞いたような気がした。

 自分と機体の心臓の鼓動が重なっていると錯覚を覚えるほど深い同調。それが危険な諸刃の刃であるかを確かめる為に、旭は人身御供としてこの実験に臨む。


「プロメテウスドライブ、ステージⅠに到達。精神汚染率の進行は確認されません」


 管制室のオペレーターからの報告に、キリエは何の反応も見せない。

 それはそうだ。ステージⅠとはプロメテウスドライブを起動した最低限の状態であり、ステージⅠ止まりのスパルトイは決して実戦には出ない。

 せいぜい、貨物の運搬や復興作業への従事くらいが出番だが、そうするくらいならば従来の重機やパワードスーツを使えばいい、という始末である。

 もしステージⅠのスパルトイが戦場に出されたなら、それはもう末期的な戦況に陥った人類の最後の悪あがき以外にあり得ないだろう。


『旭、おかしなところはない? プロメテウスドライブからの干渉は?』


「プロメテウスドライブの鼓動と私の心臓の鼓動が重なって、聞こえています。心臓の真ん中から熱を感じます。その熱が血に宿って、全身に流れる感覚があります」


『体の中が火山のようになった感覚。プロメテウスドライブ稼働時の一般的な反応ね。ではそのままステージⅡまで出力を上げて。ただし、異変を感じたらすぐに報告すること。これは命令よ』


 了解、と短い旭の返答を待ってから、実験が再開される。

 ステージⅡ、最低限、戦闘が可能な出力であり、誕生から教育期間を終えたスパルトイの新人達は、基本的にこのステージⅡで実戦を経験して、精神汚染に徐々に蝕まれ始める。

 旭と星兜のあらゆるデータを計測する中、旭の脳波と星兜のプロメテウスドライブが極めて安定した状態を継続しているのを、キリエは静かに見つめる。


『旭、現在の状態を報告なさい。抽象的な表現になっても構わないから』


「先ほど感じられた熱の温度と量が上がりました。心臓から手足の指先まで、熱に浮かされているような感覚です。でも、苦しさは感じません」


『ステージⅡに慣れたスパルトイの反応、か。ここまでは特筆するべきデータもスパルトイ側の反応もなし。では旭、ステージⅢまで出力を上げて』


 ステージⅢ、ここから管制室ばかりでなく旭、そして旭をいつでも抑え込めるように控えている美星の緊張の度合いも増す。

 実戦をいくつも経験し、戦いに慣れたスパルトイ達が到達するのがステージⅢであり、ベテランと呼ばれるスパルトイ達はおおむね、このステージに到達する。

 当然、それだけ精神汚染を受けている証拠でもあり、スパルトイやその仲間達が彼女らの首のチョーカーを意識し始める頃合いだ。


「夕闇旭35号より報告。先ほどの熱に対し、右首筋の吸血痕を中心として、全身に冷気が広がってプロメテウスドライブの熱を相殺し始めました。

 体中の血液が煮え立つか、凍るか、そのどちらかになっている感覚です。不快感や息苦しさはありませんが、吸血行為を受ける以前と比較して、違和感がかなりあります」


『ステージⅢから変化が生じたか。それにしても吸血痕から冷気が体内に発生とは、分かりやすい変化だわね』


 主力スパルトイ達が到達するステージⅢで如実に発生した変化に、キリエを始めとした面々の顔つきが変わり始める中、キリエはオペレーターの一人に問いかける。

 アジア系の女性オペレーターは、モニタリングしている旭の精神状態に内心の驚きを隠しながら、職務を忠実に果たした。


「夕闇旭35号への精神汚染、進行速度が急激に低下しました。プロメテウスドライブからの精神干渉信号が発信された直後に消滅しています」


「精神汚染それ自体は生じている。しかし、それを別のナニカ……吸血鬼化による精神の変容要素が打ち消している。事前の推測通りということ?」


 もしステージⅢの出力を維持したまま、精神汚染が発生しないのであれば、スパルトイが長時間の戦闘や任務に従事しても、これまでのような汚染者落ちかチョーカーの起爆を心配する必要がなくなる。

 戦力面でも、なによりスパルトイとその周囲の人々の精神にとって、どれだけ大きな助けとなることか。


 それは希望に満ちた祝福なのか、破滅に至る呪いなのか。

 汚染者へ落ちるのと吸血鬼へと変貌するのと、どれほどの差があるのか。

 そこまでしてメテオンに勝つべきなのか? いつかはそれに答えを出さなければならない時が来るだろう。

 それからステージⅢを維持したまま、旭の精神汚染の変化を観測し、一切、汚染が進まないのを認めて、キリエは今回の実験の最終目標を口にする。


『旭、ステージⅢはもういいわ。状態はどう? こちらからの観測では支障はないようだけれど、貴方の主観を優先します。繰り返しになるけれど、少しで精神汚染を感じたなら、即刻、報告しなさい』


「問題はありません。先ほど申し上げたプロメテウスドライブの熱と吸血鬼化の冷たさ、その争いが継続されていますが、私自身の体力、気力の特別な消耗は感じられません」


 各種のデータは旭の言葉に偽りが無いのを証明している。旭はステージⅢを維持しながら、精神汚染のリスクを解消した状態を維持しているのだ。

 実際にこの結果を突き付けられて、キリエだけでなく管制室の面々は大きな衝撃を受けている。

 この結果が吸血鬼と言う迷信や伝説の中の存在でなく、地球人類の手で生み出された技術の成果であったなら、どれほど素晴らしかったか。


『分かったわ。では、夕闇旭、ステージⅣまで出力を上げて。ただしこれまで以上に慎重に、繊細に、注意を重ねること。こちらも厳重にモニタリングをして、最悪の事態が発生しないように細心の注意を払うのを、約束する』


 チョーカーに首を吹き飛ばされたくない旭は、キリエの声色の中に含まれていた真摯な響きを信用し、これまでと同じように務めて冷静に答えた。


「ご配慮、ありがとうございます。これよりステージⅣを目標として、プロメテウスドライブを稼働させます」


 ステージⅣ、莫大な出力と引き換えに精神汚染が急速に進み、いつチョーカーが起爆してもおかしくない状態だ。

 戦闘による負傷や戦況の悪化などから、最後の手段としてスパルトイ達が死ぬまでの短時間、暴れ回る為に到達する、未帰還を前提としたステージである。


 戦場でステージⅣに到達した場合、生還率は極めて低く、奇跡的に生還した場合には強制的に実戦から遠ざけられて、退役扱いとなる。

 本来なら、極限状態に追い込まれたわけではないこの状況で、意図的にステージⅣへ到達するのは、いかにスパルトイに『基本的な人権』が存在しないとはいえ、忌避されるべき行いだった。


「…………」


 美星は、目の前で同じスパルトイの旭が、本来ならば玉砕に等しいステージⅣを目指すのを不安と心配の二つで心を塗り潰しながら、ただ見ている他なかった。

 美星自身ステージⅢで戦う身だ。急激な精神汚染の進行こそないが、戦えば戦うほどに汚染が進み、いずれは戦場から退くか果てるのを待つほかない。

 だが、もし、旭がステージⅣに達してなお、精神汚染を受けなかったら? そこまでいかなくとも精神汚染が緩やかなものに変化したなら?


 それはメテオンへの勝利を義務付けられて生まれてきたスパルトイにとって、とてつもなく甘美な誘惑だ。

 満夜が危惧していた通りに、吸血鬼化の恩恵は永遠の命とは異なる魅力でもって、今を生きる人々を誘惑していた。


「来た。星兜の、プロメテウスドライブの声が、聞こえてきます」


 ソレは明確に言語として聞こえているわけではない。ただ星兜の深奥から、叫びとも囁きともつかない声が、旭の頭の中に響いてくる。ソレは頭の中が割れるような大きさではなく、小さな鈴の音のようだと、旭には感じられた。

 旭からの報告に管制室にはにわかに騒ぎ出す。やはりステージⅣともなれば、変化があるのか、とキリエも表情と精神を引き締める。


「どんなデータも取りこぼさないように注意しなさい。なにより旭への精神汚染の進行には細心の注意を」


 管制室の空気がピリッと引き締まる中、キリエは瞬きすら惜しいとばかりにモニターに映る旭と星兜に意識を向ける。旭の背後を陣取っている美星も、同じくらいに緊張しながら旭を見守っている。


「夕闇旭35号より管制室、プロメテウスドライブ、ステージⅣへ到達。体内に宿る熱と冷気が混ざり合い、どちらも感じられない状態です。吸血行為を受けた後の平時の状態戻りました。

 プロメテウスドライブと私の鼓動が重なり合って、調和が取れた、そう感じます。プロメテウスドライブから聞こえる声も、余計なノイズが取り除かれたようにこれまでよりも澄んだ音として聞こえます。

 憶測ですが、私とプロメテウスドライブ側の双方が、同調に慣れたからではないでしょうか」


『旭、報告をありがとう。では酷なことを言うようだけれど、その状態を可能な限り維持して。繰り返しになるけれど、異変が生じたらすぐに報告するように』


「はい」


 答える旭の声に苦痛を感じている響きはなく、バイタルを見ても実験前と大きな変化のない、生きている人間ではありえない数値を示し続けている。

 これまでのキリエばかりでなく人類の積み重ねてきた経験則からは信じがたいことに、旭はステージⅣによる精神汚染を防ぎながら維持し続けている。

 もしこのまま戦闘も行えたなら、すべてのスパルトイがステージⅣで戦えたなら!


「この戦争の風向きが変わる……」


 しかし、人類にとって大きな前進となり得る可能性を前にして、キリエの表情は苦しげであった。



 旭と彼女専用に調整された星兜によるプロメテウスドライブ稼働実験の第一回目が終了して、数時間後のこと。第三試験場とはまた別の厳重な警備が敷かれた試験場に、キリエの姿があった。

 第三試験場と同じ地下にあるその試験場には、起動済みのアイギスフレームを纏ったスパルトイ達が控え、旭に対するよりも更に厳重な防備が敷かれている。

 そしてこの第一三試験場の中心には、満夜の姿があった。

 陽光こそ届いていないが、海神基地を構成する可動式ブロック内に設けられた一三試験場は、いざとなれば地上部分に移動して、天井部分を展開し、陽光を取り入れるのも可能だから選ばれた場所でもある。


「キリエ中佐、旭ちゃんの様子はどうだった? ステージⅣでも特に問題はなかったはずだけれど、直に目にしてきた貴方から聞いておきたいわね」


 微塵も怯んだ様子はなく、飄々とした態度を崩さない満夜の赤い瞳には、管制室からこちらを見下ろしているキリエの姿がはっきりと映っている。

 旭と別行動をとる時間の増えた満夜は、彼女単独で人類側の様々な検査と実験に協力していた。今もこうしてアイギスフレーム用のインナースーツに袖を通し、首に通常の倍の威力の爆薬入りチョーカーを巻いているのも、協力の一環である。


 特にチョーカーについては、少しでも人類側を安心させる為に、満夜の側から言い出したものだ。

 もっとも、首から上が吹き飛んでも、瞬時に再生する満夜にとっては大した意味はないのだが、それでもスパルトイの例に倣った、満夜なりの誠意の表れには違いない。


『ええ、貴方の言う通りステージⅣでもなんの問題もなかった。あの子はこれからのメテオンとの戦いで、大きな意味合いを持つ子になったわ。貴方がソレを知っているのは、ストームマンタ戦での経験? それとも旭との精神感応で知ったから?』


「両方ね。プロメテウスドライブとの同調を深めるように囁いた時に、旭ちゃんを介してアレがどういうものか、少しだけ私にも伝わったのと、旭ちゃんになにかがあれば、伝わるけどそれがなかったのだもの。上手く行ったってことくらい、分かるってものよ」


 分かっていたとはいえ、無事に眷属と化した旭が無事に実験を終えたのを知り、満夜は鼻歌の一つでも歌いたい、上機嫌な様子で背後を振り返る。

 そこに鎮座していたのは、通常のアイギスフレームと比べて一回りも二回りも巨大な、規格外のアイギスフレームであった。

 巨大化したことでより歪さを際立たせる長大な四肢、夜の闇を映したような装甲はどこまでも黒く、展開された胸部装甲は生贄を待つ怪物の顎のように見える。どこか禍々しささえ感じるアイギスフレームを前に、満夜はどこか浮足立った様子で笑う。


「旭ちゃんばかりを戦場に立たせていたら、私の立つ瀬がないってもんよね?」

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