学校に起こった事1
「ねぇちゃん、起きて」
朝の冷たい空気が体を包み込む。
今日も自分で起きれず毛布をはぎとられた…
「もうちょっと」
そう言ってギリギリまで寝ようとしたとき
「もうちょっとでヴォージュン魔術師の番組が始まるよ」
その一声に雷のような速さで跳ね起き、準備を始める。
ヴォージュン魔術師…彼は世界でたった二人の最高魔術師なのだ。
「始まるよー」
そういう声に間に合わないと思った私は階段を飛び降りる。猫のように何の音もたてずに降りた私だが、日常的な事なので誰も反応しない。
すぐにテレビを見た私たちは笑顔だった。
ヴォージュン魔術師は、世界にたった二人の最高魔術師ということもあり、最初は堅い性格だと思われていた。でも、そんな風じゃなかった。子供好きで明るく、皆はそんな最高魔術師ヴォージュンを受け入れた。彼の見せる魔術は人を圧倒させた。そしてなにより、美しかった。
「そろそろ学校の時間だぞ」
そう言ったのはイケメンパパ。長身で羨ましい。そう、私は弟よりも小さいのだ。
「行くよー」
「うん」
私たちの通う学校は、登校から試験が始まったかのように監視されている。が、今日は…
「ねぇちゃん、居ないね」
「うん。いつもは居るのに」
監視機械が着いてきてなかった。おかしい。
「ジオ、急ごう」
「うん」
私たちは屋根を飛び、最短距離で学校へ行った。
「…え」
学校についた私たちは愕然とした。学校の先生が血を流して倒れていたんだ。
私は弟と目配せをして、順番に先生たちを回復させることにした。
しかし…先生たちにある傷は魔法ではないと思われるような傷が多かった。
ここはエリート校であって、先生方もそこまで弱いわけじゃない。ということは、魔法ではないが物理的なものでもない何らかのもので傷つけられたのである。そんなものは、私たちは知らない…
「ねぇちゃん。あそこ。」
弟が指さす先には…
「鈴!!」
私たちの義妹、鈴がいた。といっても道端で拾って兄弟のように育てた家の違うという点があるが。
「鈴!鈴!」
「大丈夫だよ、竜羅お姉ちゃん」
「良かった…」
「あれ、ジオまで…もうそんな時間たったんだ…」
そう言った鈴は驚愕の事実を口にしたのだ。
「かれこれ1時間たったんだね。もう、全員動けないかも」
弟は息をのみ、私は目を見開いた。1時間もの間放っとかれていたんだ。私は段々、怒りを感じてきた。先生を倒すほどの強さの人を倒せるわけがない。
でも…これはおかしい。
ふと、体が軽くなり、眼が冴え、遠くの音が聞こえるようになり、血の生臭い匂いを敏感に嗅ぎ取れるようになった。手を伸ばす人、呻く声、そして人でない匂い。後ろに、何かがいる。
「ぎぎゃぁ」
右手を後ろの壁に添えただけだった。
「ねぇちゃん!?」
その手は壁を砕き、向こうの何かを潰した。