勇者パーティー結成の流れ④
私めが、公太子殿下の教育係兼 専属執事となって、はや16年。ライナス様は今年16歳になられる。
ライナス様は生まれながらにして、光の魔法を使うことが出きる、今世紀の勇者様。
ライナス様が、世の平和を乱す悪を倒す唯一の希望。
とはいえ、まだか弱い、少年なのだ。
「ライナスよ...」
大公殿下が、目の前のライナス様の肩を抱く。
「お前は儂の息子、この国の王になる男だ。」
大公殿下の横で、大公妃殿下は涙をこぼす。
「'だが、それよりも重大な使命がある。お前は勇者となり、この世界を魔族ども、魔王から守らねばならぬ!」
大公の声が響く。
「分かっています、父上。」
柔らかな栗色の髪、海のような青い眼は優しく微笑んで、ライナス様は頷く。
「それが、僕が天から与えられた使命なのですから!」
「おお...ライナス...」
大公妃が泣きながら声を上げる。
「公太子という身分よりも、勇者として、この国を、この世界を守ります!世界の平和を守ります!ですから、父上、母上、悲しまないでください。」
毅然とした態度で両親にそう告げるライナス様は、もう子供ではない。
「お母様は、あなたが心配です!ライナス、あなたが戦闘で傷付かないか、魔王領への道のりは辛くないか、お母様は、あなたが、あなたこそが何よりも大切なのです!」
そう言ってライナス様にすがりつく。
私は一歩、前に出た。
「大公殿下、妃殿下、私めも、ライナス様の執事として、ライナス様にはずっとお仕え致します。魔族領へでもどこへでも!」
「!、テンセル!お主かその齢で、ライナスと共に旅に出るというのか!」
「ダメだよ!テンセルは城にいて!」
大公とライナス様は目を丸くして、私の申し出を却下する。
「いいえ、ライナス様!私がいなければ、ライナス様のお世話を誰がするというのです!私は一緒に、何処へでもお供致します!」
「ダメだよ、テンセルを危険な目に合わせることになるなんて!僕はテンセルが心配だ!」
ライナス様は相変わらず、お優しい...
一介の使用人にも情けをお掛けなさる...
「大公殿下、妃殿下、是非とも、この私めに、ライナス様の同行執事としての御命をくださいませ!」
「テンセル...!」
大公殿下の声が詰まった。
しかし、私は覚悟を決めた意思を示す為にキリリと顔を上げ、
「ライナス様は我が主君!私めが命に代えても御守り通します!」
と、高らかに声を張り上げた。
「テンセル、すまぬ。ライナスを頼むぞ!」
大公殿下が私に頭を下げられた。
「はっ、!大公殿下!」
私も殿下にお辞儀をする。
「ライナス様の旅が快適であるよう、精一杯お仕え致します!」
この私、テンセル•ノーヴェルバーグがこの命に代えても、ライナス様を守り、ライナス様が魔王討伐を成されるのをこの目でしかと見届けよう。