勇者パーティー結成の流れ ②
俺は元々商店の末息子だったんだが、今では軍人、しかも将軍の位までも頂いている。
俺が9歳の子供の頃、学校の図書室で見つけた本を手にとって読んだのが、まあ、事の始まり。
先代の、26代目勇者の伝記冒険譚。
後にも先にも、勉強やら読書やら苦手な俺が、夢中で何度も何度も読み返したのはその本だけだ。
26代目勇者は、その本の中では物凄く強く、漢の中の漢だった。
読み終わった俺は主人公•アグナスに心酔して、1人で木刀を持って振り回していた。
勇者みたいになりたい!
強い、勇者アグナスみたいになりたい!
近所の幼なじみの兄貴が軍人になったと聞いて、俺は劍技の基礎を教えてもらうべく頼み込んだ。軽い気持ちで彼は俺に色々教えてくれたが、俺は真剣に精進していた。
俺は15になると親を説き伏せて軍人訓練学校に入った。
学生時代、俺は練習試合に全勝した。その成績で、国の正規軍人になって、さらに多くの経験を積んだ。
俺は二十歳を越える頃には異例の出世で士官級を得た。
戦場だけではない、増えすぎて人に害をなす魔物退治等も積極的にやった。
次第と俺は、剣豪呼ばわりされるようになった。
決定的だったのは、隣国のクーデター騒動で、我が国も援軍を派遣することとなり、俺が一師団を率いて隣国に遠征した。その時に随分と英雄扱いされるようになった。と、いうのも、
話に尾ひれが随分付いたか、1人で何百人相手にして負かしたとかなんとか。
その活躍を認められ自国に帰ると将軍の位を頂戴した。
この俺、ガモウ•ニーヴェルーグは、もう戦場に赴く一兵士ではなく、これからは若い兵士達を導き、指導していこう、と、思っていた時だった。
「公太子ライナスは実は勇者になるべく生まれたのだ。」
大公殿下は、何故かご子息ライナス様の警備をそれはそれは厳重に配されておられた。
普段から過剰すぎる公太子の近衛兵の数に、俺が殿下に進言した時の事だ。
「ライナス様が...勇者?!」
「ライナスは勇者になる運命である。いずれ魔王を倒さねばならぬ。その前に何かあれの身に起こってはならんのだ。まだまだ、ライナスは幼い...」
26代目勇者が死んで百年位経っている。新しい勇者が誕生していてもおかしくない。
で、も...
「確かなのですか?その、ライナス様が勇者というのは...」
俺は真顔で大公殿下に訊いた。
「光魔法を使えることが分かった。教皇の鑑定の結果な...」
この時代に、勇者が生まれた。俺の胸に熱い何かが込み上げる。
俺は勇者にはなれないが、勇者と共に冒険をしたい!
俺は心に決めた。
やがて、勇者ライナス様が魔王討伐に出る時が来れば、俺もお供しようと!
「では、私めが公太子様の劍の指導を!」
大公殿下に申し上げるも
「剣術?!なりません!そんな危険な事!ライナスが怪我をしたらどうするのです!!」
公妃様が反対される。
「ライナスはこの世にたった1人の尊い勇者!そのライナスが魔王討伐前に怪我でもしてしまったら、いざというときに魔王と戦えませんわ!」
公妃は主張する。大公殿下はうんうんと、頷いているようだ。
「勇者であるが、この国の時期盟主、ライナスに危険な目に合わせるわけにはいかんからな!ライナスが成人するまでは慎重に慎重を重ねて安全体制で保護するのだ!」
「ああ、私達の息子、ライナス!お父様とお母様があなたを必ず守って見せます!愛しい我が子!」
大公夫妻は幼い太子を抱き締めていた。
その頃から、公太子ライナス様は王宮の中でも奥のエリアで、それはそれは厳重な警備の中、大事に育てられた。
先代の勇者アグナスの血を継ぐ生まれのライナス様である。
きっと、大きくなれば、かの勇者アグナス同様、飛びっきりの強者になるに違いない。
アグナスは本によると、総ステータスが普通の人の20倍は高かったという。
楽しみだ!
ああ、あの、ワクワクした本の中の魔王討伐の冒険譚の様なことが、これから先起こるのだ!
ライナス様のお供をするだろう俺にも!