勇者パーティー結成の流れ ①
勇者の魔王討伐パーティーのメンバーになること。
それは、この世界の最も誉れ高い栄光、人々の夢。
勇者の側近魔道士を何人も排出する名家シトラウル一族。
「魔法学園を首席で卒業されるとは、さすが、シトラウル家のご令嬢。」
「学園でも、何十年ぶりの大天才との噂。」
王宮の大広間で、颯爽とローブを翻して堂々と歩く赤毛の美少女に注がれる羨望の眼差し。
王座に座った王の前に立ち止まり、優雅に一礼をする。
「シトラウル家のユリアンでございます。」
「ユリアン嬢は、魔法学園を首席で卒業されております。」
王の側近が、王に説明をする。
「齢18歳にして、魔法量が1万を越えている診断をされました。」
「ほう!それはなんと!」
王は驚き、声をあげる。
「公子とさほど歳も変わらないこの少女が?!」
「百年に1人の逸材かと...」
側近が頷き返す。
「うむ...。
魔道士、ユリアン•シトラウルよ。」
王は赤毛の美少女に声をかける。
「我が公太子、勇者ライナスの側近として、勇者付け魔道士になってくれまいか?」
「私めが公太子殿下の、ですか...」
王の提案に魔道士の少女、ユリアンは一瞬驚くが、
「ありがたき光栄でございます!」
表情がパッと明るくなる。
そりゃそうよ。
この国、いいや、この世界で私以外に勇者パーティーの魔法担当が務まる魔法使いがどこにいるってーの!
5属性攻撃魔法も全部持ってるし!
魔法量1万越えよ、私。
思えばちっちゃい頃から勇者パーティーメンバー目指してスパルタ教育受けてきてたのよ。
どんだけ準備してきたんだってーの。
私、世界一の魔道士の名声を手にして、歴史に名を残すんだわ。
フフフフ....
「北の大陸に魔王が現れ、魔物を纏めているそうだ。いずれ後々、勇者ライナスが討伐に行かねばならんだろう。」
王が溜め息をつく。
「勇者ライナスはこの国の公太子、儂の一人息子でもある。魔王と戦わせるなど、危険きわまりない。すまぬが...」
王はユリアンに頭を下げる。
「うちのむす、いや、勇者ライナスを守ってほしいのじゃ!」
めっちゃ、頭下げられた。
この国の王様だよね。
え、勇者って、魔王倒せるヒトだし、べらぼうに強いんじゃないの?
「私の方こそ勇者様の足手まといにならぬよう、精進して参ります。」
そう言ってユリアンは頭を下げる。
「ユリアン嬢の他に、我が国最強の戦士、ガモウ将軍も勇者直属隊に組んだ。協力して勇者様を支えて欲しい。」
側近が述べる。
ガモウ将軍って、あの、『閃光の劍のガモウ』って呼ばれてる大将軍だよね。
1人で300人相手に勝ったって伝説の?!
「治療、補助魔法担当として、教皇様の推薦で聖女メディカ様も内定しております。」
魔法学園で教わったわ。治療や付属魔法のエキスパート、聖女隊のリーダーだっけ。別名『白薔薇の乙女』とか。
この四人がパーティーメンバーなの?!
もう最強じゃん!!
楽~!
「とりあえず、これらの面々に、他に優秀な人材を募って加え、勇者の魔王討伐隊を編成することになる。」
「それ程の顔触れでしたら、何の心配も要らないでしょう。」
ユリアンも王に余裕有り気に答えた。
「くれぐれも、くれぐれも、勇者を頼む!」
王は再度頭を下げた。
「はい、この、ユリアン•シトラウル、勇者様が魔王討伐を成し遂げられるよう、全力でサポートさせていただきます。ご心配なさいませぬよう、大公様。」
不安げな表情の王に、この国最強と呼ばれる魔道士ユリアンはハッキリと告げた。
「明後日、魔王討伐隊の顔合わせとして、この城で会食をしようと思っている。皆にうちのライナスを会わせないとな。ユリアン嬢も是非来られよ。」
「はい、お招きありがとうございます。」
ライナス公太子かぁ。
なんか、殆ど公には出てこない王子様だっけ。
この国のたった1人の時期王位継承者なのに、世間に全然出て来なくって、なんか、謎のベールに包まれた人物なんだよね。
歳は私より一つ二つ下だっけか。学校にも通わず、城の中で教育受けてるんだったか。
どんな子だろ。
楽しみ~~