プロローグ
プロローグ
アウグストラ世界には、相対する2人の絶対的存在がある。
人類を滅ぼし、世界を手中に入れようと暴威を振るう魔王。
その魔王を唯一倒すことの出来る、聖なる伝承者、勇者。
魔王が勇者に倒されると、暫くは平和が訪れるが、勇者が寿命等で亡くなると、やがてまた、魔王と勇者はその運命を引き継ぐ子孫の中から新しく誕生する。そして、また世界は魔王と勇者の戦いに巻き込まれる。
聖ゼネゲルディア公国は勇者を排出する民の国である。
大公ユンケルに、念願の第一子が誕生した。
公子ライナス•ユンケル•ゼネゲルディアは教皇シスルの魔法量限鑑定の儀によって、
『第27代 勇者』
の認証をされてしまう。
代々の勇者だけが持つことの出来る、『光の魔法』の素質が見られた為である。
元々、ユンケルの祖父が26代勇者として、同じく26代魔王ガバラを倒してこの地に平和がもたらされたのである。
その曾孫が勇者として生まれるのは当然のこと。
ユンケルと大公妃は我が息子が誉れたる勇者であることに喜び、ライナスを溺愛した。国民もライナス公子を祝福した。
だが、勇者の誕生はすなわち魔王の出現を意味する。
大公夫妻は、我が子ライナスと敵対するであろう魔王の存在を恐れ、万が一ライナスが魔王に害されることが起こったら...と強く不安が募っていった。
ライナスが三歳の時、国の行事でとある地方に大公一家が出向いた。そこで会場に魔物が現れ、大公妃とライナスが危機にされされるという出来事が起こった。すぐに騎士隊によって魔物は征伐されたが、大事な大事な勇者に何かあっては世界の一大事と世間は騒いだ。大公夫妻はそれからライナスに対して神経質に考えるようになり、ライナス公子は城から外に出ることは禁じられ、城の庭に出る時も複数の護衛をつけられ、常に安全第一の体制で、大事に大事に育てられることになってしまった。
そう、まるで箱入り息子である...
勇者ライナスが城で大切に大切に育てられている頃、
先代魔王の子孫である、バルーという少年もまた、自分が『闇の魔法』を使えることに気がつき始めていた。魔王だけが使うというその魔法。
バルーは険しい自然の中で生まれた。両親は他の魔物にやられて早くに亡くなり、自分一人で生きていくしかなかった。彼は多くの逆境を乗り越え、生き残る為に戦い、確実に力も精神も鍛え上げながら、大自然の中で成長していた。
アウグストラ27代目、勇者と魔王は戦わなければならない運命なのである。