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異世界艦隊日誌 外伝  作者: アシッド・レイン(酸性雨)


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アランパラ・ドラウザス少尉の選択  その4

駐在官達がいる家に向かう。

その家は、村の中心近くにある結構大きな頑丈そうな造りの家で、周りをコンクリートの壁で囲まれている。

どう考えても他の木でできた村の建物の中では違和感がありすぎて浮いていたが、何かあった時の避難所としても機能しているのだろう。

そう考えると納得できる。

門には警戒する兵士がおり、駐在官に大切な話があると伝えるとすぐに執務室に通された。

執務室では、ナパナ・ラバウト駐在官とアカツキ・タチバナの二人が村周辺の地図を見て話し合っていた様子が伺える。

恐らく、今回の件についての村の警備に関する事だろう。

一応、村人の何人かは、猟や害獣駆除という事で猟銃を持っている者が数名いるが、それで村が守れるはずもないから、通常の村の警備の見直しもしていると思われる。

そんな事を思考していると二人がこっちをじっと見ている事に気が付いた。

い、いかん。何か話さないと……。そう思って口を開こうとしたがも先にラバウト駐在官が口を開いた。

「それで緊急の用事とは何かな?」

そう言いつつ、ラバウト駐在官の目が鋭くなった。

まるでこっちの心の中を覗き込むかのような窮屈さを感じる。

しかし、そんな駐在官とは対照的にアカツキ・タチバナの方は飄々としていて掴みどころがない。

それは、私の予想していた反応とは全く逆であった。

だが、そう思ったのも一瞬で、すぐに気持ちをくりかえるとふーと息を吐き出した後、この村がサネホーンの残党に襲われる可能性がとても高いことを話した。

その言葉に、ラバウト駐在官の顔は益々険しくなり、アカツキ・タチバナも思考する表情になる。

そして、全てを話し終えると、ラバウト駐在官が聞いてくる。

「なぜそう思ったのかね?」

その問いは予想出来ていたから、全てを話していく。

村外れの森で、偵察らしき者達の足跡を見つけた事。そして、その近くには、サネホーンの兵士達に支給されている銘柄の煙草の吸殻があった事などだ。

話しつつも、話さなかった方が良かったかもしれないと一瞬だけ思う。

この村の生活、ジュエンとの生活を失いたくないという思いが沸き起こったから。

だが、それを打ち消す。

村の人たちが、ジュエンに何かあったらどうすると言い聞かせて。

私の言葉をふたりは黙って聞いている。

時折、視線が地図に向かうのは、位置確認の為だろうか。

そしてすべてを話し終わった後、沈黙がしばし場を支配する。

恐らく今話したことで自分がサネホーンの関係者だと二人はわかっただろう。

投獄されるだろうな。

そんな事を思っていたら、ラバウト駐在官が声をかける。

「で、君が襲う側ならどういう風にやるかね?」

予想外の言葉に、思わず変な声が出た。

「へ?」

その反応に二人は笑い出す。

「君の言う通りだったな、アカツキ」

ラバウト駐在官が、アカツキ・タチバナに向かって笑いつつ言う。

「だから言っただろう。彼はサネホーンの人間かもしれないが、問題はないって」

アカツキ・タチバナは笑い返してそう言う。

どういうことだ?

そう思って聞き返す。

「えっと、私がサネホーンの関係者とわかっていたのですか?」

その問いに、アカツキ・タチバナは笑いつつ答える。

「ああ。わかっていたよ。敬礼の掛け声でわずかとはいえ反応してしまっていたのは大きかったな。あれで確信に変わったよ」

「では、なぜ何もしなかったんですか?」

その問いに、アカツキ・タチバナは言う。

「私の勘かな」

よくわからないといった表情を浮かべていた為だろうか。

ラバウト駐在官が捕捉するように言う。

「彼はね、その人の本質を色として見ることが出来るんだ」

「本質を色で、ですか?」

「ああ。魔術の一種らしいが、それだけでなく、それに人相や仕草なんかを見て判断しているらしい。なお、9割程度の正解率だ」

その言葉に驚く。

「9割……ですか……」

「ああ。でも完全ではないからね。こっちで色々調べた結果、君は今回の件とは無関係で、本気でこの村の一員になりたいと思っていると判ったからね。それに、君を信じている人達も大勢いたしね。だから、恐らくサネホーンのやり方に嫌気がさした脱走兵あたりかと想像していたんだよ」

その言葉に驚く。

脱走兵ではないが、似たようなものだ。今言われた事の大体あってる。

「それに、今も自分の立場を危うくすると判っていながらも知らせてきてくれているしね」

その言葉に嬉しさを感じたものの、思わず言ってしまう。

「ですが、そう見せかけて裏をかくつもりの動きとは思わなかったのですか?」

その言葉に、二人は益々楽し気に笑った。

「普通、それを狙っているならそんな事は言わないぞ」

「どうやら、君は実に善良で正直者らしいな。ジュエンが惚れ込むわけだ」

その言葉に、顔が熱くなる。

それを見て、ラバウト駐在官ニタリと笑った。

「そして、君も彼女の事を思っていると」

「ですが、結婚はまだのようです」

「何?一緒に住んでいて、まだだと?。なら、結婚式をしなくてはな」

そんな感じで、私を置いて二人は、私とジュエンの事で盛り上がっている。

どういうことだ?

「あ、あのう……」

思わず声が出た。

それで二人はこっちを見る。

「ああ、すまん。勝手に盛り上がってしまった。この村において、結婚式は村の祭りみたいなものだからな」

そういった後、ラバウト駐在官は表情を引き締めて聞く。

「君は彼女と結婚したいかな?」

その問いに、私は即答する。

「勿論です。彼女がそれを許していただけるなら」

その答えに満足したのだろう。

ラバウト駐在官は笑みを浮かべた。

「そうか。それはいい事だ。彼女と話し合っていい返事をもらえたら、ぜひ報告してくれ。その時は、手伝わせてもらうぞ」

その表情は実に嬉しそうで、私と彼女を心から祝福するのが伺えた。

だが、ラバウト駐在官が表情を引き締めた。

それを見て、私の表情を引き締める。

「だが、その前にやってもらわねばならない事がある」

ラバウト駐在官のその表情と口調でその言葉の意味を理解する。

そして、それに答えた。

「もう未練はありませんし、恐らくもう向こうでは死んでいることになっているでしょう。だから、私は、この村の住人の一人として生きていきます。ですから、何でも言ってください」

その私の決意を聞き、二人は満足そうだった。

「では、君に今回の襲撃に対する防衛プランを考えてもらおうか。村の一員としてね」

ラバウト駐在官の言葉に、私は頷く。

「もちんです。私を受けいれてくれた彼女を、この村を絶対に守りたいですから」

こうして、私は村を守る一員となり、かっての同僚だった者達と戦う事を決意したのである。

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