下っ端モンスターの憧れ
どんな世界でも上の立場がいれば下の立場もいるもの
今日はそんな下っ端な2人がお客様。
ここは、人間の住む世界ともゲームの世界とも違う世界。
そこに一軒ひっそりと佇むバー「とまり樹」そこには世にも不思議なお客様が集まるのだった…
シックな内装。バーカウンターのみがある店内
そこに一人マスターがグラスを拭いている。
『カランコローン』
ドアが開くと2名のお客がやってきた。
「いらっしゃい…あぁスラさんとゴブリンさんかい。」
「ますたー、またきたよぉー」
「相変わらずここは客がいねぇなぁ」
「余計なお世話ですよ。注文は?」
スライムとゴブリンがイスに腰かけ「いつもの」と注文を
する。
2人のもとにお酒が入ったグラスが置かれる
「きょうもいっぱいたおされたねぇ」
「今日はやけに多かったな」
「しょうがないよぉ、なんか『てつのつるぎ』を
ほしかったみたいだよ?」
「そういう事が、どうりであいつ等同じ場所でクルクル
回ってたわけさ」
「ゆうしゃのみんな、がっかりしてたよ、
だんじょんのとちゅうのたからばこに、
てつのつるぎがはいってたから。」
「そりゃそうだろうなぁ、あいつ等1時間ぐらい
戦ってたからなぁ」
「お2人とも大変な1日でしたね」
マスターが労いの言葉をかける
「いやいや、俺らみたいな弱っちい奴がいないとこの世界成り立たねぇからなぁ、なっスラよ」
「いがいにしたっぱもたのしいよぉ。」
ふと黙って考え込むゴブリン
「どうしたの、ごぶちゃん?」
クイッと酒を一飲みして語りだすゴブリン
「ふと考えるんだ、もしもう少し力があったら…っていや、
親玉になりたいとか、そんなオオゴトは言わねぇ、ただな
どこかのダンジョンのボスになって、『あのゴブリン
強すぎる!』とか言って、操作してる奴らに思って
ほしいってな。スラはそうは思わねぇか?」
少し考えるスライム、そして口にする。
「ぼくは、いまのままでいいや。そりゃつよかったらうれしいよ?でもね、さいしょよわかったゆうしゃたちが
ぼくらとたたかってつよくなるところをみるのもいがいと
たのしいなっておもうんだ。」
「それにね、さっきごぶちゃんいったじゃん。『ぼくらみたいなよわいやつがいないとこのせかいなりたたない』って」
「スラ…」
「ぼくらはぼくらなりにがんばろう。そしたら
いいことあるよ。」
「そうだな、お前の言葉で目が覚めたわ、俺らがいるから
この世界、面白くなるんだよな。」
「そうだよ!だからまたがんばろ?ね?」
「あぁ悪かったなスラ、まさかお前に諭されるとはな。」
「えへへ、やめてよはずかしい。」
マスターが2人にグラスを差し出す。
「なんだい?俺らは何も頼んでないぞ?」
マスターがフッと笑いながら
「これはサービスです。お2人のこれからに幸あれ。」
「やったー!ごぶちゃんのも?」
「よっし、もう少し飲むか!」
「かんぱーい」
不思議なお客様が集まるバーやどり樹。
次はどんなお客様が来るのでしょうか…
最初この話を作るときにすぐにスライムとゴブリンが頭に浮かび、書いてみました。
色々ゲームやるけど、実は最初に出てくる敵ってそんな悪いやつじゃないんじゃない?ってふとおもってました。