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流星

作者: N(えぬ)

彼女は、持てるだけの荷物を鞄に詰めて背負い、そして手にも持って、

「じゃあね。元気で」といって、少しだけ笑った。

「元気で。気をつけて行って」

私は、彼女の笑顔を久しぶりに見たと思った。

これでお別れだが、最後に手を握るわけでもなく、つまり言葉以外のふれあいは全くなかった。

私は、彼女が足場の悪い道をよろけながら、しかししっかりと自分の足で歩いて行く姿を頼もしく見た。

何でもかんでも、私の方が上だというような、気持ちが今やっと思い上がりだったのだと感じて、それがこういう別れに繋がったのだろうと思った。

しかし、別れの理由はそれだけでは無いだろう。私にはまだわかっていない様々なことが積もり積もった結果がこれなのだろう。


「この曇り空は、いつまでつづくのだろう」

私は空を見上げて、ほこりっぽい空気に少し咳き込んだ。そして、

「あいつ、どこまで歩いただろうか」そう思った。


地球に無数の流星が三日に渡って降り注ぎ、地球上の全てを破壊し、焼き尽くし、人間についていえば今のところ一人の男と女以外に確認できない。

そんな全ての価値が無になった中で奇跡的に生き延びた私たちという一組の男女であっても、

「あなたといるのは息苦しい」

そう言って、妥協して生き延びることより、きっぱり一人で生きていくことを選んで去った彼女の後ろ姿が私の目に焼き付いた。

こんな状況下であっても、私は一人の女性の信頼も勝ち得ないということに、自分が人類の少数の生き残りであるという使命感のようなものなどどうでもよい虚無感に襲われる。

またいつか、ほかの誰かと出会い、愛をやり直せる可能性の低さ。もはや、ただ生きるのみの世界。


曇った空をまだ時々ぼんやりと輝かせて流星が筋を描いて飛んでいく。

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