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カバンを忘れた理由

 何か忘れている気がする。


 早い朝の、空いた席の方が多い電車の中で、僕は風邪の時のような身体の違和感を覚えた。


 席のソファがいつもより硬い気がした。


「なんだっけ」


 肺をついにいっぱいにした焦燥が、声となって口から漏れ、電車の音でかき消された。


 僕は忘れ物の正体のヒントが最近の行動のなかにあるような気がして、とりあえずここ一週間の行動を思い出すことにした。


「えっと確か…」



 七日前ーー授業の大半を寝て過ごす。


 六日前ーー上に同じ。


 五日前ーー体操着を持ってこずに、体育の授業をサボる。


 四日前ーー授業の大半を寝て過ごす。


 三日前ーー抜き打ちテストで満点をとる。



 一昨日と昨日は土日やすみ。


「カバンだ」


 なんの前フリもなく、僕は忘れ物の正体に気づいた。


 授業に使う教材全てを忘れてきてしまったのだ。


「びっくりしたびっくりした」


 僕は安心感から、鼻で息を吸い、口で息を吐いた。電車の暖房がやたら暑く感じられ、服で身体を仰いだ。


 ーーだったらよいのだ。


 教材程度だったらなんの問題もない。


 むしろ大切なものを忘れないでよかった。



 途端に眠気がしてくる。


 僕は柔らかいソファの上で、静かにまどろんだ。

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