極超音速スカイフックなど
軌道エレベーターは、今ある繊維では強さが足りない。
なら今ある繊維で作れる程度にすればいい。
それでもかなりのことはできる。
軌道エレベーターは、要するに丈夫な練り消しゴムで作った静止衛星を縦に引き延ばしたものだ。伸ばしても重心の位置も速度も変わらないから、静止軌道のままだ。
静止衛星は、飛び去るのと落ちるのが釣り合って地球の周りを周回する速度が、ちょうど自転と一致したものだ。そのためあの高さであり、その速度だ。
だから軌道エレベーターは、地上の同じ場所にとどまっている。並走しているんだ。
それを捨てた極超音速スカイフック……地上から見ればかなり高いところに、地上から見ればすごい速度で飛んでいる紐の端。高速のジェット機で乗る。
それなら今防弾チョッキや靴素材として普通に売られているケブラーでできる。
なぜやっていない?
それがダメだとしても、考えを止めるな。
今の地球人が、火星にも行けない、世界一の金持ちが月旅行にも行けない……すべての卵を一つのバスケットに入れている、すべての生命を地球という一つのバスケットに入れたままなのは、今の化学ロケットという技術が弱すぎるからだ。
水素と酸素の燃焼でも、巨大なロケットの頂点のわずかなペイロードしか宇宙に持ち上げられない。そしてロケットのほぼ全体を捨てることになる。捨てないスペースシャトルは総合的に大失敗だ。
化学ロケット以上の宇宙に出る手段を、何としても考えなければならない。
地上からレーザーで空中にある宇宙船を照らしてエネルギーを送り、水を爆発的に蒸発させ、その勢いで噴射させて反動で加速する、というシステムも考えられている。
禁止されているが、核爆弾を用いるロケットも構想された。
何でも考えるべきだ。考えて考えて、あらゆるアイデアを出して試すべきだ。
不可能という言葉、予算という言葉を絶対に出すな。
エンリケ航海王子がヨーロッパの勝利をもたらしたように、宇宙に出るべきだ。
そして宇宙の無限の鉱物資源で、争いの必要をなくさせよう……子供兵が殺し合うことが、儲からないように。
宇宙に出て、別のバスケットに卵を入れよう。転んでも朝食に一つも卵がないことがないように……人類が滅びないように。
人類が滅びれば、まず間違いなく地球型の生命は終わりだ。複雑な動物は何億年も栄えたのに、文明は一度きりだ。
さて、タイムトラベラーのいくつかの能力で、極超音速スカイフックの実用化が進んだ。
どうなるだろう?
次はそうなった世界を描いてみよう。