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悲惨国家の人のために

 アフリカ。中南米。中東。ソ連崩壊からは東欧や中央アジアもかなりの範囲。

 膨大な人が貧困で、暴力にさらされ、清潔な上水やトイレ、良質な燃料を得られず苦しんでいる。

 民主主義はもちろん……だが民主化は、民主主義があっても食えなければ何にもならない、と膨大な人が学んでしまう結果になった。それによって民主主義は支持を失い、貧困と圧政は続く。


 今回の話では、未来人は第二次世界大戦が終わった直後に転移した。

 そしてその知識で、とてつもない富と権力を手にした。


 未来人の目から見れば。

 まず餓死、拷問、虐殺、強姦をなくすこと。それが最優先だ。

 その前では、独立や国家主権すら大したことではない。



『現実』では、先進国が搾取し続けているという。

 債務。

 差別的な言葉……『もともと原住民に統治能力などない』。

 それに対して、人工的な国家や部族など、先進国の暴虐を訴える。植民地の文化やら何から何まで。

 ひたすら議論が続く。ひたすら会議が続く。

 ひたすら援助が流し込まれる。ひたすら、先進国の駅などに悲惨な写真が貼られ、寄付を求める。

 ひたすら内戦と腐敗が続く。

 ひたすら、人は拷問され、虐殺され、強姦され、餓死する。


 債務。あれ?貧乏人から借金を取るのは本当に儲かるのか?豊かにしてから取る方が取れるのでは?

 貧乏なほうが従順だからいい?借金を取ることではなく、支配すること自体が目的?損得ではなくサディズム?

 大英帝国にとって、インドは損得勘定ではなく「宝石」だったように?食えなくても威信だから、ということ?


 資源だけ欲しいんだったら、単に鉱山と港と、鉱山と港の道を先進国の金持ちが買い取り、昔のアテネが、港もアテネも、港とアテネを結ぶ道も両側に壁を作って籠城したように道も壁を作り、現地人は一切入れず先進国の優良労働者だけで運営すればいい。

 そのほうが、現地人の子供に重労働させるよりマシだろう。自分の私有の土地なら環境も少しは配慮するだろう。


 もっと根本的に、わかりきっている……あの直線国境が悪い。



『史実』とは違い、未来人に主導された勢力はいくつかの方針を主張した。

 非共産主義・非経済的自由主義。衣食住・治安・拷問されないことを最優先する。

 宗教・民族などとも無縁……強制はしないが、暴力で強制したり、宗教や民族を理由に虐殺することも許さない。


 まず、ある程度以上生活が苦しい、また独立しても機能する政府を作る可能性が低い地域の人々を、大量に脱出させた。

 洋上に、膨大な船を作って。

 当時の最貧困層よりは高い、最低限の栄養は与えるが、真水で体を洗えるのも数日に一度という水準。

 その状態に多くの人を引き上げ、治安がある安全な生活、家族・一族で守り合い復讐するのではなく警察に守られ法を守る生活を学ぶ。

 エスペラントの読み書きと数学。


 植民地を支配する宗主国にとっては、労働力を奪われるので反対の声もあった。だが、それは機械化の促進、別の利益などで黙らせた。

 それらを除けば、残るのは「威信」とサディズムだけであり、それを無視するよう利益で本国の民を誘導するのは難しくなかった。


 債務を持つ人たちには、単純な説得……『貧乏人から絞るより豊かな人に払わせる方が儲かる』。


 船に大量に収容された大人口も、ただ徒食するだけではない。

 労働力が必要なところに運ばれ、そしてある程度まともな労働条件を、未来人主体の組織が監視する中で働く。

 使う側は、必要な時だけ確保でき必要なくなれば解雇できる労働力を得ることができる。

 ただし、労働が残虐にならないように、未来人が組織した、船の治安維持も担当する傭兵部隊が監視する。だからあまりにも濡れ手に粟な奴隷労働はできない。

 といっても、奴隷労働は安いが技術水準が低いという問題があり、ある程度以上熟練する好条件の労働も、特に機械化と組み合わせるとより儲かることもあるのだ。



 結果的には、アフリカや東南アジアの国々は白人比率が上がってしまう。独立は遠ざかる。だがその分、農業も含めて効率的で治安水準が高い。

 先住民を奴隷にし、そのかわり治安を維持し高い技術で。種をまく日を計算する方法を教えず、種をまく日を教える。そのほうが無知な先住民が、伝統とは切り離された外来作物を栽培するより収穫は多い……ならば、自分の手で耕す、さらに本国の親戚に借金して機械で耕してもうまくいくわけだ。

 まして戦後は、戦車や自動車の技術がそのままトラクターやコンバインになっているのだから。

 文句があるとすれば、

(われわれ白人は高貴な人種なのだから自分で働いたりするのは間違っている、働くのは劣った原住民どもが奴隷として苦しみながらすべきことだ……)

 という根性だろう。かなり世界中の古代社会で共通の。

 だがそれは、結局誰も得をしない。


 ただ独立にこだわるだけの人たちにとっては災難となった。だが、少なくとも拷問される人と餓死する人の数は、史実より大幅に少ない。


 根本的には、土地・資源・国境・宗教・民族・独立などにこだわったらろくなことがない。

 ただ、食えて拷問されない暮らしを覚える。まずそれを最優先する。

 それを根本原則とした。


 人口増も、食えて清潔になり教育を受けることもできれば、どんな政策よりも急速に少子化になる。これも未来人はよくわかっていた。



 次の段階として、未来人は直線国境から自然国境への変更も列強に強いた。ある程度の侵略さえ容認して。

 それによって、人口が減り、迫害される民族がいなくなった地域が、より国家らしくなった。

 また援助だよりでもないので、無能な独裁者が居座ることもなくなった。

 本質的には、日本の戦国時代と同様。無能な領主は下克上され、あるいは隣国に滅ぼされる。『史実』でいつまでも貧困と圧政が続くのは、無能な独裁者を排除する仕組みがなかったからだ。国家という枠組が保たれていれば、援助とPKOによって強引に富と治安がある程度与えられていた。以前からアメリカに、あるいはソ連に従いさえすれば、どれほど国民を虐げようと無能であろうと、アメリカやソ連は無尽蔵に支えた。むしろ無能残虐に報酬を与え、国民国家のためにという指導者は排除された。

 そのあげくには、小さい子供をさらい、子にその親を殺させたり老婆を強姦させたりして帰る場所を失わせ、薬物で洗脳して戦わせる邪悪極まりない組織が勝者として長期間存続するようになったのだから、最悪としか言いようがない。


 また、共産主義の崩壊を早め、かつ旧共産国には最低限生存保障を徹底させた。共産主義が否定され、まず膨大な投資と新自由主義絶対、それで極端な格差と膨大な人の生活崩壊。それでは民主主義自体の支持が失われる。それを未来人は経験したからだ。

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