異世界への対峙
家はログハウスなので、断熱材は入っていないし、窓もガラスではなく木でできたふたのようなものである。だから外気が入って来るからそれなりに寒い。でもこの村は、それなりの農村なのでご近所さんとは10メートルくらいは離れているからプライバシーは心配しなくてもよさそうだ。(もっともこの時代の人にとってはプライバシーより生きることで精一杯だと思うが...)恐らく木の無機質さを消そうとするために母が作った布で飾り付けられはしているが、それも限りはあり貧乏感はぬぐい去ることはできない。
成長して、2年が過ぎて1歳になると歩けるようになった。そりゃあ、歩いていた記憶があるから体のバランスさえつかめれば何のことはない。手もどうにか羽ペンを自由に字が書けるくらいの大きさと運動神経が完成したようだ。
あとは、ノートに1年間ベットで自堕落に過ごした時に練り上げた計画書を頭から紙へコピーすればよい。しかし、紙は貴重品だ。羊皮紙は書きやすいが、そんなものは農民の家になんかは置いていない。そのかわり麻で作ったボロ雑巾のような紙ならそれなりにある。そこで、まずは木質パルプの作り方とそれに適した、筆記具の考察を書くことにしよう。さすがに羽ペンは仕事の能率に影響が出る。最低でも万年筆くらいの筆記具は作らないといけない。都市部ではもしかしたらあるかもしれないが、その程度の目標ではいけない。やはり世界を改造するならどこにも置いてあるクラスではないと話にもならないだろう。いつかは、私が作った筆記具と紙でいやいや小学校で勉強している悪童たちを見るのが待ちどうしい。
字が書ける環境になるとブレインストーミングもしやすくなるから、思考の整理がしやすくなる。もっとも私の兄弟に当たるワルガキの二人にこれが見つかったら、せっかくのアイディアも台無しになってしまうので隠す場所もしっかりと考えなければならない。ベットの下にでも隠して
置こうか?見つからないようにしっかり隠しておかなければならぬ、
今はまだ、赤子だから農作業は免除されているが4歳にもなれば労働力として計算されそうなので、今のうちに筋トレもしておいた方が良さそうだ。何事もはじめが肝心だが、はじめはつまらないし、それなりにきつい。しかし、今考えていることが軌道に乗った時、その空虚感ときつさは何事にも代えがたい喜びへと変わるだろう。
時間が経てば義務や責任も増える、がしかしその分自由も増える。あと8年、10歳になるのを待てばようやく真の意味での、私の人生二週目が始まるであろう。異世界デベロッパーとしての新たな人生が。