交易都市とギルド
馬車の中にて、冒険者達と話しながら少しずつ情報を集めていく。
「これから向かう街について色々と教えて頂けませんか」
「そんなに堅苦しくなくていいよ」
女性剣士のテトリアさんが笑顔でそう答える。
「そうだねぇ、これから向かう街は交易都市ハイドラジアだよ」
「交易都市ハイドラジアの治安はどれ位ですかね」
「まぁ、良くもなく悪くもなくといったところだよ」
治安はそこそこ、か。
少し警戒態勢を保ったまま移動するとしよう。
「ハイドラジアの規模はどれ位ですか」
「規模は大きくはないけれど、決して小さくはないよ」
なるほど、つまり治安も規模もそこそこという所らしい。
「そうそう、リアとリイルは冒険者ギルドに登録しているかい」
冒険者ギルド?
「いえ、まだしてませんが……」
「なら交易都市ハイドラジアの冒険者ギルドで登録したらいいよ」
「はい。そうしてみようとおもいます。所でどうして私達が冒険者ギルドに所属していないと分かったのですか」
素直に疑問をぶつけてみる。
「いやどことなく、雰囲気が傭兵でも冒険者でもなくて旅人みたいだったからもしかしたらって思って」
なるほど、つまり冒険者の勘ということだ。
動揺していないところをみると、嘘ではないらしい。
勿論テトリアさんが嘘をはき慣れていて、動揺しない人なら話は別だが、どうやらそうでもないようなのでテトリアさんは相手に対していきなり揺さぶりをかけるような人ではないらしい。
「冒険者ギルドに登録する利点とかありますか」
「色々とあるよ。通行税の減額もしくは免除とか、冒険者になっていなくても依頼は受けられるけど、あればない人よりも優先して仕事を斡旋してもらえるし」
通行税は各地を依頼で転々とする冒険者達に対して仕事を受けやすくするためのものだろう。
確かに素性が分からないことに変わりはないが冒険者として正規に登録されている人とされていない人では印象が違うということだろう。
さて、次の質問に入ろう。
「冒険者パーティーとは基本的に四人と決まっているのですか」
「いや特にそういった決まりはないけれど、冒険者達の間では四人一組として数えることが多いかな」
なるほど、四人一組の利点は二人組が二つ出来るからというところだろう。
二人一組だと方々だけが負傷した場合は、もう片方がカバーしたり、負傷した人を背負って逃走することが出来るが、互いに負傷した時にはお互い助けることが出来ないので、その二人組を二つ会わせることで二人が負傷してももう二人で救出できるような仕組みになっているのだろう。
「そうそう。冒険者達の中にはパーティーに名前をつけて、ギルドになるところもあるよ。ちなみに私達は〖赤き狩人〗のギルドメンバーだよ。そして私がギルドマスターってな訳」
「それは凄いですね!」
リイルにとって、その事実はとても輝かしく見えたようだ。
自分も相槌を打つ。
自分もいつかはギルドを持つことになるのだろうか?
そしたら……
「どうした?リア。少し遠い目をして。何か悩み事か」
「いえ、何でもないです」
「そういえばもうそろそろ、交易都市ハイドラジアだよ」
馬車から外を見てみると、活気のある街並みが見えてきた。
あの街が交易都市ハイドラジアなのか。
新しい街での活動に少しの不安を抱きながらも、何でもないように振る舞うリアだった。
その後冒険者ギルドにて、
「冒険者登録ですね。かしこまりました。ご説明は入り用ですか」
「よろしくお願いします」
「まず冒険者の登録についてですが、冒険者にはランクがあり、下からG・F・E・D・C・B・A・S・SS・SSSとなっています。そのランクにも+・++・+++・-・--・---というように分類されています。」
ランク分けが少し細かくなっているのだろう。
「まぁ冒険者ランクはほとんど+や-などの細かいランク付けはされないのですけれどね」
苦笑いでギルド職員が説明をする。
確かに技量を細かく判定するのは骨が折れるというものだ。
他にも沢山の説明を受けた。
冒険者カードの利点や、依頼、ギルドでの換金場所、etc.
様々なことを講座を受けるかの如く聞き続けた。
ギルド職員にとっては慣れっこのようで、これくらい何ともないと言わんばかりに話が続いた。
その後……
「冒険者登録完了いたしました。ギルド立ち上げはどうなされますか。」
ギルド立ち上げについては、冒険者達のパーティーをより判別しやすくするためにつけることも出来るらしい。
「リイルはどうする?」
「私はいいと思いますよ」
リイルの承諾を得ることが出来たので、ギルドを立ち上げることにしよう。
「ではお願いします。ギルド名は〖銀翼の星天陽月〗でお願いします」
「承りました。ではリアさん、リイルさん、ギルド職員一同、貴女方の今後の活躍に期待しています」
「銀翼の星天陽月ですか……何か由来が?」
「ええ、勿論あるに決まっているよ。教えないけどね」
「えっ、教えてくれないのですか!?」
「まだ内緒。さていつか分かるときが来るか、一生分からず終いかどちらかな」
いたずらが成功して喜んでいるような無邪気な笑み……ではなく隠し事をしている魅惑的な笑みを浮かべていたがリイルがその笑顔に気づくことはなかった。
「いつか分かるようになって見せますよ、これから……」
ふと、隣を見てみると考えこみながら歩いているリイルがいた。