セカイを越えて
今回は九 リヒトさんに挿絵を書いて頂きました!
神秘的な場所にて、リンネが輝く!
「世界と世界を“ツナゲル”ことができる、ということですか?」
「そうですよ。その通りです。伝承によれば、“玉虫色”を天に掲げよ、さすれば道は開かれん”だそうです。天に掲げる玉虫色って何のことですかね?」
「天に掲げる玉虫色……」
玉虫色とはつまりは、七色・虹色のことだ。
だが、そんな虹色の宝石のようなものは全く持ち合わせていない。
「虹……あっ!もしかしてあの壁画の意味って……」
確かあの壁画の虹は北北西に向いていたはず。
ならば、謎を解く鍵はその北北西にあるかも知れない。
その北北西の方角を向いてみると、その方角には時計のような模様の魔法陣が記されていた。
だが、その針は絶えず狂ったように動いている。
どうにもこれでは当てにならないような気がしてならない。
取り敢えず、まわりを見渡すがこれといったものは……
ふと水晶の淡い光が目に入る。
その水晶は全てが輝いている訳ではなく、幾つか光を放っていない水晶も見受けられる。
水晶……。虹……。プリズム……。光の反射……。
「なるほど……そういうことか!」
この仕掛けは、光っていない水晶に光を当て、反射させて虹を生み出す、という科学を利用した謎解きだと思う。
そうでない場合は、また別の仕掛けを探るしかないので、自分としてはこれで合っていてほしい。
そう願いながら先程の魔道書に書かれていた光を生み出す魔法〖ライト〗を使って水晶に光を当ててみる。
すると、水晶が光に反応して、虹が架かる……訳ではなく、光が反射して自分に降り注ぐ。
幸いにも光度が高い訳ではないので、少し眩い位で済んだ。
まだ視界は眩んでいてはっきりとはしないので、視界が戻るまで待ってから何か変化がないか辺りを見渡すが、光を当てた水晶が少し小さな光を放ち始めたこと以外は何一つ変わっていない。
ならば、ステータスの方がが変わったのではないかとステータスを開いてみる。
……あった!
〖虹の架け橋〗
〖虹の架け橋〗を発動させてみる。
頭の中に、呪文のようなものが浮かび上がる。
「遍く光で、宇宙を“ツナグ” 輝け!〖虹の架け橋〗」
その呪文を読み上げると、自分の手の平から無限の色を持つ虹が誕生した。
見かけからでは、七色にしか見えないが、もっともっと沢山の光を虹は持っているのだろう。
まさに【無限の可能性】の象徴的存在だ。
そんな虹に見とれていると、月と太陽を模していると思われる図形の魔法陣が光り出した。
それに気づいた直後、太陽の図形の魔法陣から出た光は、もう一人のリンネへ、月の図形の魔法陣から出た光は自分へと、降り注いだ。
自分に降り注いだ光は、落ち着いた青色で、もう一人のリンネへ降り注いだ光は温かみのある橙色だった。
ステータスを確認してみる。
すると、二つのスキルが新たに増えていた。
その二つのスキルは、相対する効果を持つ〖雨乞い〗〖晴れ乞い〗だった。
だが、スキルをよく見ると、何故か〖雨乞い〗のほうが相性がいいのか効果が高いようだった。
ステータスを確認し終えたこちらを見て彼女はこう言った。
「どうですか?何か変化ありました?」
「はい。〖雨乞い〗と〖晴れ乞い〗というスキルが新たに増えていましたよ。貴方は?」
「私も同じですよ。でもどうしてか〖晴れ乞い〗のほうが効果が高いのですよ。不思議ですね。」
「私の方は〖雨乞い〗のほうが効果が高いので、得意分野は相対していますね。」
「そのようですね。実はその他にも〖豊穣の陽〗と〖恵みの雨〗というスキルも取得していました。でも同じ様に自分の場合は〖豊穣の陽〗の方が効果が高いです。もしかすると〖晴れ乞い〗と〖豊穣の陽〗、〖雨乞い〗と〖恵みの雨〗は対応しているのかもしれませんね。」
その言葉を聞いて自分のスキルについて再確認してみる。
〖変幻自在〗
〖極・鑑定〗
〖極・心眼ノ魂〗
〖極・天眼ノ魂〗
〖生命の眼〗
〖異世界言語翻訳〗
〖魂魄連鎖〗
〖雨乞い〗
〖晴れ乞い〗
〖恵みの雨〗
〖豊穣の陽〗
改めて確認してみると十一個とだいぶスキルが増えてきたように感じる。
それに確かに〖雨乞い〗と〖恵みの雨〗、〖晴れ乞い〗と〖豊穣の陽〗というようにスキルが対応しているように見える。
「確かにその可能性はかなり高いかもしれませんね」
「やはり貴女もそう思いますよね」
「ええ。まあこれといった確証は無いのですけれどね」
「どうにかして確認してみたいですね。うまくいけば新しいものも見つけられるかもしれません」
「確かにそのうち確認できるかもしれませんね。ところで話は変わりますけど、この先どうしますか?」
「一先ず、この場所から外に出てみて、街に行くことにしませんか?そうすればもっと多くの情報が得られると思うのです。それにここまで来たらもう引き返すことは難しそうですから……」
確かにそうだ。
行きは容易く、帰りは険しいという可能性もなくはない。
「なるほど……確かに一理ありますね。そうしたほうがいいかもしれません。」
「ではそれで決まりですね。そうと決まれば早速出発しましょう」
そう言って、二人は外を目指して再び歩き出した。
二人は知らなかったが、その日の群青色の空には、無限の光を持つ虹が空を越えるようにして伸びていた。
そして、翼の影が虹を目指すようにして消えていった。
九 リヒトさん、今回の挿絵ありがとうございます。
これからも頑張ります!