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夢を探して虹を見る  作者: 浦坂茉空
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邂逅と廻廊

いや、参った。自分の憶測が甘すぎたのではなかろうか。

そう思わざる得ない程に、この場所は広い、広すぎるぐらいだ。

歩いても、歩いても全く次の道が見えない上に、さほど景色が変わらないので、今真っ直ぐに進んでいるのかすら怪しい。

これではまるで、砂漠地帯で蜃気楼を見ている遭難者のような状態だ。

この場所で、歩き続けて骨と化すことだけは御免被りたい。

その一心で歩き続けるが、やはり殆ど道は変わらない。

そんな状況に思わず天を仰いでしまう。

しかし天井が高いのか全く上の方向も何も見えはしない。

仕方ないので、また歩き続けようとしたその瞬間、少しふらついて躓いてしまった。

「ってて……」

痛いが余り怪我はしていないようなので、立ち上がろうとした時、地面を見て驚いた。

そこには、星が幾つも描かれており、そして一人の少女が記されてあったのだ。


その星の殆どは北北東に向いている。

だが、少女の向いている方向は南南西に向いている。

「これは一体……」

それだけではない、他にも幾つかの絵が描かれている。

そして虹は北北西に、猫は南南東に向いている。

何が何だか分からないが進むしか方法はない。

諦めて前を向いて歩くしかない。


そうやって歩くこと暫くして、ようやく別の場所につながっているであろう扉らしきものを見つけた。

そしてその扉の近くには、大きな鏡があった。


だがその壁には、先程の絵とは違い、雲が南南西に、雫が南南東に、犬が北北西に、少年は北北東へ向いている。

この場合は、先程の絵が対応していると考えた方がいいのだろうか?


試しに各方位と、絵を照らし合わせてみると、

北北西は虹と犬

北北東は、星と少年

南南西は、雲と少女

南南東は、猫と雫

………余り共通点があるようには思えない。

どちらかというと、少女と少年の方が対極関係になっているような気がする。

あれ……

少女の方角は南南西、少年の方角は北北東と対極関係になっている。

そうか……そう言うことだったのか!

方角と絵の内容が対極関係になっているということだ。

北北西と南南東は、犬と猫、虹と雫

南南西と南南東は、星と雲、少女と少年

対極関係が成立する。

だが結局それが何を意味するのかは皆目見当もつかない。

となるとやはり鏡に何かしら仕掛けがあるのだろうか?

その鏡の前に立ってみる。

だが特に変わったことはなく、自分の姿が正しく映ってい……ない!?

この世界に来たときの自分は、銀髪に左眼が青色、右眼が緑色という姿で、現在は〖変幻自在〗を使った別人の姿だが、鏡に映っているのは黒髪で両眼共に緑色の“過去”の自分なのだ。

その“過去”の自分が鏡の前の“現在”の自分に向かって歩いて来ている。

一歩、また一歩とじりじりと迫ってきている。

その迫ってくる恐怖感は“あの時”を彷彿とさせる。

その少女の顔がこちらを見て、口角が僅かに上がった。

その表情は、まるで無くし物を見つけた子供のような屈託な笑み……ではなく何かを企む悪い笑顔……でもなく、当たり障りのない微笑を浮かべていた。

その姿は、“過去”の自分を彷彿とさせるようなものだ。

その少女は鏡の前に来ると、こちら側へ手を伸ばしてくる。

その細い華奢な腕が鏡をすり抜けて、こちら側へとその姿を現した。

その少女は微笑を浮かべたまま、てを差し出してきて

「初めまして、貴方の“分身”です」

その言葉に、思わず背筋が凍りつく。

今……“分身”っていわなかった!?

「ふふふっ、冗談ですよ、冗談。私と貴方は“別人”ですからね」

「えっ……ええ、そう……ですよね……」

苦笑いに近いような微笑を浮かべたまま差し出されたてを握り握手を交わす。

今の“冗談”は洒落にならない程に焦った……。

そんな心中を察してか否か、彼女はこう言った。

「驚かしてしまってすみませんでした。何しろ久し振りに人にあったので、つい……」

つい……ではない。

つい、というノリであんなことをやられてはたまったものではないが、彼女は久し振りに人にあったというので、少し舞い上がっていただけなのだろう。


「えっと……それでは貴方は一体……」


「あっ、自己紹介がまだでしたね。これは失礼しました。私の名前は“リンネ”と申します。以後お見知り置きを」


えっ!?……

い、今聞き間違いがなければ“リンネ”って言ったよね……

「まだ貴方の名前を聞いていませんでしたね。貴方の名前をお聞かせ願えませんか?」


「私の名前は……“リンネ”……です。貴方と同じ読みの名前です」


「偶然ですね。鏡を越えてあった二人の名前が同じだなんて」


「いや、偶然も何も、鏡を越えて合うなんて普通はないことですからね!?」


「あれ、そうでしょうか?」


「普通そうですよ!」


「まあ、その点は置いていくとして、どうして此処へいらしたのですか?」


「いやいや、置いていい点ではないのですけど……。此処へ来た理由といわれても……ただ歩き回っていたら偶然たどり着いただけなので……何とも言えないです」


「あぁ、なるほど。この場所は少し広いですからね」


「少しじゃなくて、かなり広いですよ……」


「そうですかね?まぁ、それも置いて置くとして、ひとまずこの場所の奥へと進みませんか?」


「えっ……ええ、そうしましょうか」


そう言って彼女は壁にすり抜けるように消えていく。

私はその後をついて行くようにして歩いて行くと、壁をあっさりとすり抜けて通ることができた。


その場所には、何故か地面付近に水が張っており、その水面(みなも)には、水晶から発せられる光を反射してキラキラと耀いている。

上を見上げれば、星々や三日月が煌めいている。

それにどういった原理か泡が空中に浮いている。

イルミネーションの人工的な輝きとは違い、星々や月、水晶の輝き等の自然的な輝きは心にどこか安らぎを与えてくれる。

「ここは、世界と世界を“ツナグ”場所何ですよ。まぁ、でも私は世界と世界を“ツナグ”ということはしたことがないんですけどね。貴方はどうしますか?」

そう言って自分そっくりな少女は満面に笑みを浮かべた。


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