表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
H2Y  作者: 大塚めいと
18/22

Act 3-5 「ハルと一つの事柄」

お金っていいよね。





 勢いは弱まったものの、未だ燃え盛る廃旅館の炎が私達をオレンジ色に照らしていた。炎に照らされた羽田の表情は初めて会った時とは違い、とても小さな存在感を感じさせる、懺悔の表情を浮かべている。






 「嘘だと思うだろ、でも、本当だ。」






 羽田の衝撃的告白はヒロも私もにわかに信じがたい真実だった。羽田は足元の青いボストンバッグのジッパーを開く。ジッパーが徐々に作り上げる空間からは小金色を連想させる輝きの札束がぎっしりと詰まっている様子が見えた。






 私は2億円という大金なんて当然見たことなんてなかった、ボストンバッグに乱雑に押し込まれた札束を見ても、現実の物とは思えず、その札束だけがフィクションの世界を作りあげているように感じた。






 「…わからない。」






 ボストンバッグの札束を見つめながら、突然ヒロが鋭い口調で開口した。






 「なぜわざわざわたし達に2億円事件の犯人だって伝えたの?黙っていれば分からなかったのに…。」






 確かにそうだ、ヒロの言う通り。私達はその青いボストンバッグの中に札束が入っていることなんて知らなかった。どさくさに紛れてこの島のどこかに隠して、再度この島に上陸して回収するなり、いくらでも隠し通す方法はあったはず。だけど羽田は私達に自身の罪を打ち明けたのだ。






 羽田はヒロの問いに対し、数秒の間の後、うっすらと目に涙を浮かべながら口を動かす。






 「それはな…、もうこの2億円に他の人が巻き込まれてしまうことが我慢できなくなったから…霊安室の女もこの金のせいで双葉に殺されてしまった…。だからもう、いっそのこと罪を白状しよう、この金はもう諦めよう、そう思ったんだ…。」






 …………私は何かを忘れている。羽田の返答に対し、何とも言えない違和感があった。そういえば私は大事なことをみんなに伝えていないような気がする。






 「自首するの…?」






 「あぁ…時効も目前だけどな…このままじゃ俺は罪悪感で一生をフイにしてしまう。交通事故で見殺しにした運転手に対してしっかりと償うつもりだ。」







 …………そうだ!あのことだ!ヒロも羽田さんは知らないんだ!あの事を…!!






 「わたしはてっきり連続女児失踪事件の犯人がこの島にいるって推理したけどハズレたみたい、まさか2億円事件の犯人と巡りあうなんて夢にも思わなかったよ…。」






 「それよ!ヒロ!それなの!!」






 「え!どうしたのハル?」






 2億円の入ったボストンバッグと船の予備燃料のポリタンク。それらが隠されていた場所。それは6人の死体が隠されていた秘密の部屋。つまり答えは一つしかない。






 「その連続失踪事件の犯人が、その双葉なの!」






 その瞬間、背後から何かが動く気配を感じた。うかつだった。何故手足を拘束するなりしておかなかったのだろう。






 「当たり。」






 首に力強く腕を巻かれ、目の前に炎の光を鋭く反射させる金属の物体が現れた。






 私は一瞬で双葉洋介に拘束されてしまった。













2億円あったら何買おう?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ