Act 3-3 「ハルと告白」
告白回。
急な出来事が一気に起き過ぎて私の頭の中の情報だけでは理解できなくなっていた。
廃旅館で死体を見つけた、その犯人は羽田さんかも知れないと推測した、戻ってきた羽田さんに追いかけられた。
逃げる途中の非常階段はボロすぎてすぐに崩壊した。
転落寸前の私を助けたのは殺人鬼(と思われていた)羽田さんと行方が分からなくなっていたヒロだった。
助かった直後に下の階からけたたましい大爆発の音、廃旅館の3階から下が炎に包まれていた。
そしたらヒロは一緒に船に乗った時には持っていなかったリュックサックからロープを取り出す。
廃旅館の窓からロープを伝って地上へ無事に下り立つことに成功。
羽田さんの指示で非常階段の残骸の影に隠れていると、双葉さんが死体の放置されていた部屋にあった青いボストンバッグ(双葉さん曰く羽田さんが持っていたもの。)を肩に下げて現れた。
羽田さんはその姿を見るや、ゆっくりと双葉さんの背後に周り込み、パンチを見舞った。
「ねぇ、ヒロ…一体どうなってるの?」
背後で廃旅館が燃え盛り、オレンジ色に発光して私達を照らす、足元には真っ黒く背の高い自分のシルエットが揺れ動いている。雨はもうすっかりと小雨になって私達を湿らせる勢いは弱くなり、後方の炎より照射される熱の空気によって、べっとりと張り付いた服と冷え切った肌との間に生温かいスチームの層を感じた。
「ハル、ちょっと待って。」
ヒロはポケットから何やら直径1センチほどあるプラスチックのボタンを取り出し、だらしなく口を広げて気絶している双葉が着ているアロハシャツのボタンにあてがい見比べていた。
「やっぱり間違いない、同じボタンだよ。」
ヒロが羽田さんに向かって神妙な表情で語りかけると
「本当だ、それと、よく見てくれ、腕に引っ掻き傷もある。…となると、やはり彼女はコイツが…。」
と謎めいた言動をする。何か私だけが話に参加できずに疎外感と妙な嫉妬の感情が込み上げてきた。
「お願い!説明して!」
私はつい必要以上に叫んでしまった、気絶した双葉に夢中になっていたハルと羽田さんは、二人一緒に目を丸くして猫が物音に反応する時のように私の方を振り返った。
数秒気まずい間を作った後、申し訳なさそうな顔でヒロが口を開いた。
「ごめん、ハル…実はね…。」
「俺が説明しよう。」
ヒロの言葉に羽田の低い声が割り込む。その口調には何かに覚悟を決めたような鋭い気迫があった。
「黙っていてすまなかった、春美ちゃん、全部話すよ。」
羽田さんは真っ黒な空を数秒見上げ、大きくため息をつき、再び口を開く。
「まず…言っておこう。俺は…2億円事件の犯人なんだ。」
ロマンチックな方ではないです。