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真・恋姫†無双 魏譚  作者: 灰善
5/7

意思の疎通は難しい

―――――――再び夢を見た



何かを思い出すような夢だった



名前を呼ぶ声が聞こえた



自分に思い出すモノがあるかどうかすら分からないのに



経験も記憶も、自分には心当たりが無い



なのに誰かが



「―――――思い出せ。物語を終わらせるつもりはないんだろう?」



そう呟いた










―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


『自室』




テン♪テテテテテテン♪テテテテテン♪




新しい携帯の着信音で目が覚める。


時刻は――――6時。



「誰だ…?こんな時間に電話なんて」



いつも目覚める時間よりもかなり早い。

正直まだ眠っていたい。温かいベッドと二度寝への誘惑が意識を深くへと誘って行く。


……着信相手は…及川。いいや、寝よう。

…前の携帯から電話番号を変えなかったのが仇になったか。しくじったなぁ…。

なんて薄れ行く意識の中で考えていたが




テン♪テテテテテテン♪テテテテテン♪




「…」



…そうか、そう来たか

だが何者も俺の眠りを妨げる事は出来ない。

電話を切り、掛け布団を頭から被る。




テン♪テテテテテテン♪テテテテテン♪




「…………(ピッ)」





テン♪テテテテテテン♪テテテテテン♪




「…………………………(ピッ)」




テン♪テテテテテテン♪テテテテテン♪




「…………………………………」



ピッ



「うるせええええええええええ!!!!!!!!!!」



『ホワァッ!?み、耳が!耳が!』




携帯からは物が落ちるような音と、及川の慌てる声が聞こえる。

朝っぱらから電話を寄越しやがった彼に、復讐の意を込めて怒鳴った声が効いた様だ。




『(ガタッ、ゴッ!……)か、かずピー…?』


「はいおはよう」


『あ、おはようさん―――――ちゃうわァ!!!!耳壊れるか思うたわ!!!!!」


「怒鳴るな怒鳴るな、寝起きにそれは響くから…」


『そりゃ申し訳な―――――でもないわァ!!!!先に叫んだのはかずピーやんけェ!』


「まあまあ、こんな朝早くからは近所迷惑になるだろうしボリューム落とそう。な」


『せやからかずピーの所為やって…!!!!―――――いや、それはその通りやなうん』


「理解が早くて助かるよ。それじゃ俺は二度寝するから…」


『おうおやすみ――――――ってこういう流れはええねん』




騙されなかったか、もう少し機を見て言うべきだったな。

ノリの良い奴だと思う。これはこれで話していて楽しいものだ。


まあ…及川のツッコミでなんだか頭も冴えてきてしまった所だし、ちょっと早いが起きることにしよう。




『こんな朝から電話したのはすまんと思ってるわ。でもな、ちょっと確認したいことあってん』




そりゃ何か用が無けりゃ電話なんてしないよな。用も無しに電話してきてたなら全部無視して今から風呂に入る覚悟がある。




『なあ、昨日気付いたら家におったんやけど傾国の美女はどうなったん?』


「あっ…あー……」


「え、なにその反応。なんか知っとるん?」


「えー…、お前気絶しててなあ」


『気絶!?気絶してたん?!』


「結論を言うと…えっとな?確かに国が傾きそうな人物ではあったぞ」


『ほほ~~~~~~!』




傾国の美女、ねえ…

自分で言っておいて何だが、国を傾かせるのは出来そうな人物ではあった。破壊神的な意味で。

しかも本人はもの凄く興味あり気で居る、無知なる幸せとはまさにこの事か?




「あ、そういや及川?今日の放課後ちょっと付き合ってほしいんだけど」


『ややわかずピー、いくら仲ええからって付き合うなんて』


「今そういうアレじゃないから…」


『ん、なんやシリアス的なアレかいな?えらい急やんけ。どしたん」


「調べたい事があってな。歴史資料館に付いてきて欲しい」




唐突なお願いだとはわかっているが、頼ると言ったらまず頭に及川が浮かんだ。

昨日及川自身が相談事なら言ってくれと述べたんだ、頼る事にするし、正直一人は寂しい。

あの筋肉達磨も誰にも手伝ってもらってはいけないなんて言ってないし問題はない筈だ。

………そういや、なんで最初から彼は手伝ってくれなかったんだろうか。




「詳しくは…あー、放課後話すよ」


『それまでお預けかいな。まあええけど』


「うし、また学校でな」


『ほーい』







(…あれ?そういえば及川が電話してきた理由ってこの一件についてだけだったのかな)



通話の終わった携帯を一瞥し、ふとそんな事を考える。




「一先ずシャワーでも浴びて目を覚ますかな」




そう呟いて踏み出す足は―――――何故か軽やかだった













―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――







「そんなわけでやって来ました史料館」

「誰に言うとんのそれ」

「言わなきゃいけない気がしたんだよ」




お約束(?)を交えながら踏み込んだのは歴史史料館。

彼の人には過去を知れと言われた為、手っ取り早いのはここかと思い足を運んだ。

ここなら古代中国に纏わる物だって置いてあるんじゃないかと踏んだのだ。



「お約束っちゅーやつやな?知っとるで。アレやろ、ジャンプしたら他の場面に切り替わるみたいな」

「それに近いものではある…のか?今さっき適当に言ったけど」

「でもそういうノリ嫌いやないわ」

「そりゃどーも」

「うわ、投げやりやなぁ…って先行かんといてや。取り残されたら寂しくて死んでまうよ」

「しっかりついて来いよ」

「ちょ、待ってーな!」


馬鹿話も楽しいが、今回は目的がある。まぁ俺の調べ物が全部なんだが、馬鹿話で時間を潰して調べきれませんでしたー…なんてモヤモヤするだろうしさっさと済ませるに尽きる。



「ほわーー………。こんなとこに入ったの初めてやわ。なんか緊張すんなあ」

「俺も初めてだし、緊張もなんか分かる気がする」


史料館内のガラスケースに飾ってある物はどれも現代には似つかわしくない物ばかりだし、初めてこの目で見るようなものばかりだが…1つ1つに自分たちが重ねてきた年月とはかけ離れた歴史があると考えるとロマンがあり、何故か敬意というかそういった感情を抱いてしまう。

飾ってある物の大半はレプリカだったりするのだろうが、結局は大元が存在し実在したわけで。



「お、かずピー見てみぃ。飛鳥時代の服装めっちゃダッサイで」

「やめなさいそういうこと言うの」

「ええやん着てた本人がおるわけちゃうんやしー」

「だからってお前…」



酷い事を言うものだ。いくら本人が居やしないからってそこまで直球で言うか普通?

というかそりゃ1500年ぐらい前の事なんだからダサ………俺らの感性に合うわけが無い。

ダサイと思いかけた頭がついさっきロマンだの敬意だの考えていたことを思い出し言葉を繕う。

もしその時代に居て口走ろうものなら異端児として扱われるのだろうか?



「うわー、この銅剣とか絶対斬れへんやろ。鈍器ちゃうんかこれ」

「そういうのって武器としてはあまり使われなかったって聞くけど」

「ほえー、昔の人の考えることはよー分からんなぁ」



そりゃ今の俺らには分からんだろうなあ。そういった物って祭具として使われてたらしいし、今銅剣だのなんだの祭具として使う文化って無いんじゃないのか?

……というか、さっきから思った事口に出し過ぎな気がしないでもない。史料館とかこういう所ってもっと静かにしなきゃいけないのでは…


「そういやかずピーの用事ってなんなん?あ、なんなんって語感おもろいよな」

「そうだ、俺は用事があったんだ」



及川の後半の発言はめんどくさいから無視するとして、本来の目的を追う事にする。

気付いたら主旨から逸れていってるのが及川と話していて危惧しなければならない事の一つだ。

今回の主旨とは飛鳥時代だのなんだのあんまり関係無いし。



「今回ここに来たのは三国時代。えーと確か…そうだ、1800年前ぐらいの事について調べに来たんだ」

「三国志かあ、なんや?好きになった娘が三国志好きとかそういうやつ?もうなんで相談してくれへんのー」

「待て待て待て、先走るな。『今の俺』に好きな人は居ないから」

「ふーーーーん…今の俺、なあ」

「そうだよ」



好きな人は居ない、と言ったが……うん、居ないし少なくともしばらく出来る事もないだろう。

学校のお嬢様方を見てもなんというか、失礼かもしれないがあまり心を惹かれないのだ。

綺麗な人は確かに多いんだろうが、深く考えると余計な事を考えそうだから思考を打ち切る。



「ん?ちゅーことはここら辺見ててもしゃーないやんけ。今見てるとこより昔やし中国の事なら別のコーナーちゃうん?」

「主旨からズレなけりゃ真っ先に向かってたんだろうけどなあ…」

「…細かいこたええねん。はよ行こ」

「こっち見て言ってみ」

「さー行こかはよ行こか時間は待ってくれんで!」

「ちょ、おま」

「イヤータノシミヤナア!」



頑なに目を合わせようとしない及川に腕を引かれ軽く引き摺られる。え、力強っ。どこにそんな力が。

ちょっとでも後ろめたいと思ってるなら最初から変な対応するなよ…と思う。しかも腕痛いし。

幸いそんなに距離は無かったようで、引かれる腕の痛みからはすぐ解放されたが。


「ほらかずピー、ここいら一帯そうみたいやで」

「いてて…」

「………すまんて」

「謝るなら最初から普通に連れて行ってくれよ…」

「細かいなあかずピー。それじゃモテへんよ?」

「は?」

「ちょ、怖いわかずピーごめんてホンマ。そこまで殺気出さんといてや」


おお、殺気が伝わった。冗談のつもりでちょっと殺してやろうか貴様。ぐらいの気持ちを目線に込めてみたらこんなにも効果が出るとは。便利かもしれない。まあちょっとしたことで殺気飛ばすような人なんて俺だったら付き合いたくないような気がするけど。いや殺気飛ばしてんの俺じゃん。


気の籠め方について少し考えながらも目を配らせる。しかし、置いてあるものは銅鏡のレプリカやその時代に使われていた布など、『曹操』といった個人に纏わる物では無かった。


(まあ歴史について知る事には繋がるし問題は無い…かな?)


まずは銅鏡に目をやる。横の説明文には主に


『古代中国に起源を持つ』

『製作には鋳造したのち研磨、錫メッキ、研磨という手順で作られる』

『銅鏡には数種類あり、用途としては祭事、呪術の道具として用いられた』


等、記されていた。

正直製作方法などについてはさして興味はなかったが、こうして向き合ってみると主旨を抜きにしても中々に面白い様な気がしてくる。

他にも三国時代の食事のサンプルや調理法などについて語られているスペースもあり、炙る、炒める、煮る、蒸すといった火を通す際の方法についてや、干す、酢や醤油で味付けするなど調理する際の味に関する事についても明記されていた。これらは三国時代には確立されていた調理法らしく、なかなかに豪勢な料理が並んでいたであろうことが想像できる。

酒については粗悪なものが多かったらしく、あまり美味しいものではなかったそうだ。

そういえば老酒というお酒があった筈だ。何故か今頭に浮かんだが、気になる物が多く興味は直ぐ別の物へ移った。


コーナーの一角に当時の服装や下着を紹介している場所もあり、男性はフンドシのようなものがあるが、女性は今で言うパンツを穿いていなかったと紹介されていた。しかし、そこが妙に気にかかった。


「………」

(下着を付けていなかった……?)


普通ならば凄い時代だな、とかそういった感想を抱くものだろう。

しかし、どうしてもそれだけで流せそうにない。

女性の下着について公共の場で考える高校生など変態極まりないのかもしれないが、今はそんな事どうでも良いような気がしてくる。

そして何故か『そんな筈はない』と確信を持って言える。今自分に明確に述べられるような根拠は無いが、そう確信しているのだ。


焦りに似た物を感じながら、反対側のスペースに目をやると今度は武器のレプリカが並べてあった。

普段使われていただろう武器、有名な武将が使っていた武器のレプリカなどが飾ってあったが、目が離れない。

かの有名な関羽雲長武器であった大薙刀、その義弟である張飛の蛇矛などが特に意識を引き付ける。


おかしい。

三国時代での暮らしや生活品、服、食事、どれもこれも全部………



『こ の 目 で 見 た こ と が あ る』




「そんな、そんな…!っぐ…?」



自覚した瞬間、激しい頭痛に襲われた。

鈍器で頭を打たれたような衝撃。幸い意識はあるが、それが無くなるのも後数秒なのではないか。



「……?、かずピー!?どないしたん!!大丈夫か!」



及川……



「かずピー!返事せんかい!」



もう…話せもしない……



謝罪の言葉を口にする猶予もなく、意識は深くへと沈んで行く。



(あれ…?……前にもこんなこと、あった…ような………)



そこで記憶は途切れた







―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




「かずピー?!しっかりせえや!…どないしたんやて!!ックソ、救急車呼ばんと…!」


頭が上手く回らない。突然苦しみだしたかと思えば、瞬く間に意識を失った。

彼のこんな姿を見るのは初めてだし、こんな場面に居合わせたのも初めての事で。

こんな事になるなら最初から引き留めていればよかった、と痛感する。


「その必要は無いわ」



救急に電話を掛けようとしたその時、正面に現れた影と唐突に掛けられた声。

野太い声とそれに似つかわしくない語調に普通の人間ならば驚くだろうが、今はそれどころじゃない。


「なんやオッサン!!!邪魔やそこどかんかい!!!」


邪魔。緊急事態の今、道を塞いでいるこいつはなんなんだ。しかし何者だとかいつの間にそこにだとか問い詰める事も余裕も今は無い。


「彼は今、酷い頭痛に襲われているのだろうけれど、病だとか命にかかわるような物じゃないことは確かよ」

「ハア?!なんやねんいきなり現れて、邪魔や言うとるやんけ!!!!」

「落ち着いて、心配なのはわかるけど」

「うっさいねんボケ!!ごちゃごちゃ言う暇あったらどけ言うとるんや!!」


「落ち着きなさい!!!!!!!!!!」


館内が震える。このままじゃ埒があかないと考えた彼は一喝し、この場を収めることを選んだ。


「っ」


突然の大声に及川が驚き、口が詰まった一瞬に穏やかな声で及川に話かける。


「今から彼を自宅に連れていくわ。着いて来て頂戴」

「何言うとんねん?!病院が先やろ!」

「さっきも言ったけど命に別状はないわ。これはあたしの命を賭けてでも言える」

「…何やねんいきなり!ええ加減にせんと痛い目みんで!」

「――ふぅ、ご主人様をそのままってのもアレだから、移動しながら話すわねん(グッ)」

「なっ―――わ、うわっ!(グンッ)」



抱えられた。自分と一刀をそれぞれ両脇に。いくら普通体型といってもそれなりに重い筈なのに。

二人合わせて140kg近くはある筈、なのに今。それを抱えて走り出した…!?


「ちょっと揺れるけど我慢してねん…!」

「お、おおおお、ちょ、まっ!」

「喋ると舌噛んじゃうわよ!」


舌噛むとかそれ以前に死、死ぬ…!?

いつの間にか外に出て、飛び跳ねながら移動してる…!そこらの絶叫アトラクションなんかよりも恐ろしい……っ。というか、人間離れしているなんて次元じゃあない!


「はっ、跳ねて、とん、飛んで…!―――ふぅっ…」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「ごめんなさい、ちょっと手荒になっちゃったけど敵意はおろか悪意すら微塵もないのよ」


「…」


「ご主人様は倒れちゃったけど、本当に命に関わるような事じゃないの」


「…」


「見る限りご主人様とあなたはかなり仲が良い様だし、ご主人様もあなたを親友だと思ってたから今回付き合ってもらったと思うのよねん」


「…」


「今は混乱してると思うけど、後であなたに色々と話しておきたい事もあるの」


「…」


「一先ず、ご主人様の家に向かうからそれまで我慢してちょうだい」


「…」




「ちょっとォ、麗しの乙女がお話ししてるのに相槌すらうたない――――ってあら、気絶しちゃってる」





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

――――――――――――――

――――――――










―――『もう少し、あと少しで辿り着けるんだ。諦めないでくれよ』







―――声が聞こえる…


……誰だ?



『――――さあ、誰だろう?』



酷く頭がはっきりしない……


お前は……どこに……



『――――――――――さあ、どこだろう?』



何を……伝えたいんだ……



『頑張れ――――、そう激励しに来たんだ』



激励……?何の為に……



『お前の為、そして俺の為だ』



……?一体どういう……



『――――――ああ。もう時間か、まあ良いさ』



待てよ、お前は何がしたいんだ



『ごめんな、もっと伝えたい事はあったんだけど……」



時間?何の話なんだ



『このまま終わると悔いても悔やみきれない。お前が辿り着くのを信じてる』



待てって、返事を―――――――――――――――






『頼んだぞ』






―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――








「待てっ!……うっ」




自分の声が頭に響く。目を開けるとそこは見慣れた天井だった。

頭が重い……

――――――そうか、俺は史料館で倒れて、それから………


……それから?


「そうだ、及川っ!」


今俺が自分の部屋に居るって事は誰かが運んでくれたって事だ。

それが及川だったとしたらかなり申し訳ないし、苦労をかけた筈だ。


「やぁぁぁっっとお目覚めねん♪ご主人さまァン!」



礼と…詫びを…

礼と詫びを入れない……と………?



「あらァん、おはようの挨拶を無視ィ?ご主人様って意外とS?」



―――――――嘘だ。聞こえる筈のない声が聞こえる。

ここは俺の部屋だ。この声が耳に入る筈が無いんだ。

そうか、意識が混濁してるから幻聴が聞こえるんだ。よし一度深呼吸しよう。


「放置プレイってよく話には聞くけどォ…意外とクるわねェェん♪」


おかしいな……深呼吸一回じゃ足りないか………

もっと念入りにするか……

幻聴だって分かってるけど、視線を動かしたら危ない気がする。

……気がするだけなんだけど用心に越した事はないよな。うん。

おし、もっかい深呼「これはご主人様もあたしで楽しんでくれてるって事ねェェェ?♪」きゅ、う……



待て、動くな視線。動くな首。待ってくれ、それ以上はいけない。俺の本能が危険だと叫んでいる。

心なしか鼻息まで聞こえてくるぐらい近いような気がするけど見てはいけない、気付いてはいけないんだ。気付いていないフリをするんだ。


うーん駄目だ、脳みそが仕事をしてないなこれ、止まんない。

あっ、視界の端になんかおさげらしき物が見えた。女の子かな???女の子だよな???


「フゥーッ!フゥーッ!」


うわ、鼻息荒っ。近っ。この女の子、女子力捨ててないか?心配だなあ!アハハ!


……………よし、いっそ目を閉じて完全に向いた後に開こう。ドキドキ感が楽しめるからね!時にはスリルも必要サ。


ほらほら、首が動いてるぞ。もう止まらないぞ。ハハ。


「ドゥフ、ドゥフフフフ」


女の子にしては野太い声とありえない笑い方?してるけど多分女の子さ。

なんだっけ、目を開けるまで分からないというか。シュレディンガーの猫?みたいな。

俺は女の子である可能性に賭けるよ。

というかそうじゃないとやってられない。まずここ俺の部屋だし。


っと。止まった。いよいよご対面だな!タノシミダ!ナ!





=============================================================================




【高校生・北郷一刀は後にこう語る】




「はは、あの時は凄かったですね。世界の終わりかと思いましたよ」


「顔の数cm前に……魔物?って言葉が似合いそうな妖怪が居ましてね」


「あの時は目が覚めたばかりだったっていうのもあって、最初は信じられませんでしたよ」


「……え?結局は人間だから大したことじゃないだろって?」


「わかってない。わかってないですよ。まあ対面した人にしかわからないと思うんですが」


「顔中にねっとりと……まるでおもちゃのスライムのように絡みつく鼻息」


「見たものをその場に張り付ける眼力」


「ヘルメットのようにツルツルとしていて、それでいて鋼にも勝りかねないような硬さを醸し出す頭皮」


「それでいて弾力にステータスを全部振ったようなプリプリの唇」


「いやー…...これが大げさじゃないんですよ。ハイ」


「これはフツーに思いましたね」


「あ、俺死んだ」


「って」


「…おそらく、今までもこれからも……史上最悪の目覚めだと思いますね」



「………思い出すだけで気分がちょっと……。申し訳ないですが、これで失礼させていただきます」




――――――――――――――――――――【魔人に魅入られた男・北郷一刀】インタビューより



=============================================================================






「 ご ・ 主 ・ 人 ・ 様 ・ ♡」




「アッ…………ァァアアアアアアアアアアア!!!!!!」




それは文字通り―――史上最悪の目覚めだった

2ヶ月ちょいぶりぐらいの更新ということで、お久振りです。

今回もまた寝不足でいろいろと無茶苦茶な気がしないでもないですが……大目に見ていただけると助かります。

誤字脱字は無いようにしていたつもりですが、もし発見された場合はご報告お願いいたします。


小ネタ

・最後の一刀の語りの部分ですが、刃牙ってやけにインタビューのシーンが頭に残るんですよね。

今回はオマージュさせていただきましたが、くどかったら申し訳ないです。

これも大目に見てください……()

・最初の着信音、iPhoneの着信音のつもりなんですが文字に起こすのって難しいですね。

確認するために何度か鳴らしましたが結局コレ!といった表現の仕方が見つかりませんでした。

...iPhoneの着信音ってなんかすごく心臓に悪いような気がしませんか?僕は聞くたびに上司からの電話や学生時代の先輩からの電話だったりと考えてしまって毎回聞くたびに心臓が跳ねます。はい、余談ですすいませんでした

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