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神のくさめ  作者: paradsh
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神社と孤高の鴉

 公園(どなり)には山があり、中腹程まで拓いて立派な神社が建てられている。名を冨路光ふろみつ神社という。歴史は悠久由緒正しく、俗に名高く本日も殷賑いんしん。絶壁とも思しき急勾配な斜面の剪除せんじょを否が応にも強制的に経て築造されたので、境内の一番高い位置にたたずむ本殿界隈の断崖だんがいでは、魔障ましょうの入る隙なく公園を一望できる。特にその場所は、神に拝むより先に雄大な眺望を拝むためにおいでなさる参拝客が多く、常日頃、本殿の中より人口密度が高い。奇怪なことに当神社、取り扱う御神徳が「志湯成仙」といわれる訳のわからないもの一辺倒いっぺんとうであり、これを扱う神社仏閣は日本中探しても冨路光に限るという、一風変わったところである。故に「志湯成仙」を十分に理解して参拝する者は皆無に等しく、展望目的の客ばかりがこうして本殿の周りに群がるのである。

 その様な人並み並みを尻目に、本殿の屋根の千木ちぎに一羽のからすが留まっている。彼は人並みよりちょっと高い目線で景色を眺め、人並みよりちょっと優越感に浸っていた。とはいえ鳥目であるから、この眺望を人間の様に味わうことさえ畢竟ひっきょうできないのであった。ところが彼は鳥目なりに絶景を楽しもうぢゃないかと踏んだのである。

 鳥頭は鳥頭でも、鳥頭なりによく考える鳥頭であった。

 その頭の内側には一方、件の雀もあった。彼こそ彼女をいじめた張本鴉ちょうほんがらすだからである。差し当たってもその眺望から子雀を見つけ出さんことの暁には、すかさず飛んで行って今度は左翼を咥えてやろうという魂胆こんたんなのである。

 彼には継承する姓名せいめいこそないが、鴉より黒い得体の知れない鴉として「亜鵺つぐね」の名が流布るふし、今や本名と化す。

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