さよなら
茎同士が貼り付き、まるで一本の幹のようだ。その先で数多の百合が咲く。花嫁の持つブーケにも似た、死者からの手向けの花。
男の死因は服毒だった。チューリップに由来する毒を飲んだらしかった。
百合と薔薇は旧くから、相反する花だった。百合は純粋さを示した。薔薇は艶美であることを表した。荘厳な百合と絢爛な薔薇は、同一であるようでその実は、表裏一体にもなれぬ存在。
現王家の花は薔薇である。その薔薇を、死者を冥府に送るための緩衝材に使うなど、王家に反乱の意を示していると言ってもよかった。
しかし、最後の死体を隠すのは、王家とは相容れぬ、百合の花。これこそ、王家に喧嘩を売っていると言うべきだ。
では、今までの死体はなんだったんだ。
暖炉の前で煙草をふかしながら、男は考えた。ハンスは王家に恨みがあったわけではないのか。
死者には口がない。生者には死者の考えを知る術などない。いや、魔法使いになら可能なのかもしれない。あるいは神殿の者達、それに準ずる者達になら可能なのかもしれない。
ただし、どちらにせよ、ハンスが神の御許にいればの話だ。
死者は神の御許へ行く。生まれた場所へ帰る。だが、その内の何人か、ほんの僅かは、神の御許へ行くことが許されず、この世を彷徨い続けるのだという。
俺はこの目で見たことがないがな、と男は独り言ちた。
果たして、彼は神の御許へ行けただろうか。
自分でも書きながら気持ち悪いなと思いました。狗山は餃子が食べたい。
帯化したユリを書きたかっただけなので、特に意味のある話ではありません。暗くて後味の悪い話が書きたかっただけです。雰囲気小説です。
前年度の文化祭号に載せた『焼きたての薔薇』と世界観は一緒、というか時間軸の違う同じ国の話です。『焼きたての薔薇』を読む必要はありません、こっそりひっそり宣伝です。いずれ警備隊の話や神の元に行けなかった人の話も書きたいと思っています。思っています。
それでは、また。




