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THE TEAM! (番外編)〜中二のバレンタインデー〜

作者: 緒俐
掲載日:2008/02/15

 これは篠原快が中学二年生のころの話である……


「おい、これは何事だ?」

 

 帰って早々、食堂に並べられていたチョコレートの芸術作品の数々。それは間違いなく友人達が作ったものだ。


「何って明日はバレンタインデーでしょ? だからみんなで作ってるのよ」


 長い髪を一つにまとめ、三角巾とエプロンをつけて調理する紫織はさも当たり前でしょという返答をした。


「作ってるのはいいけどよ、何で大地まで……」


 本来、バレンタインデーは女子のために与えられたものじゃなかったかと、いつからアメリカ式に目覚めたのかと快はいかにもそう言いたそうな顔をしたが、大地はあっさり答えた。


「そりゃ決まってるだろう? クラスの奴等に配るからだよ。コックとしての腕がなるってもんだ!」

「だよね〜! 大地ちゃんのお菓子おいしいもんね〜!」


 今年も大地のチョコレートを楽しみにしている翡翠が答えた。一緒に楽しそうに調理する快の思い人である翡翠は、やはり今年も自分のために作ってくれていると心の隅でホッとしているが、ここで爆弾が投下される。


「まっ、今年は三人分のチョコレートが減るから楽なもんだが」

「だよね! 快は毎年いっぱいもらってくるから今年はいいよね!」


 紫織の手がピタリと止まる。バレンタイン前日にとんでもない爆弾を投げ込むもんだ。 


「おい、一体どういうことだ?」


 思わずそう快は尋ねると、翡翠は快の心境など露知らず答えてくれた。


「だから、言葉通りだよ? 快って元々甘いもの嫌いなのに毎年いっぱい貰ってくるでしょ? それで今まで私達のお菓子パーティーのお菓子にしっちゃったんだけど、それって失礼なんじゃないかなって思ったの。それにね、今年は皆の賭けの平等性も考えたんだ!」

「賭けだと!?」


 食堂の脇でなにやらTEAMの社員達が騒ぎ始めた。そして、手には札と小銭が握られている。


「今年のバレンタインデーチョコ争奪戦! 勝つのは一体誰だ!」


 言い始めたのは自分の父親である義臣だ。


「そりゃ快ちゃんだろ! 快ちゃんに二千円!」

「いや、修ちゃんも今年は大増量になると見た! 修ちゃんに二千円!」

「あまい! 白ちゃんが今年は優勝だ! 白ちゃんに三千円!」


 TEAMの社員がほぼ全員集まってるんじゃないかという賑わいに快は青筋を立てた。


「おい、翡翠。こんなくだらない理由で俺の分はないだと……!」

「うん? あれ? 私のチョコレート欲しかったの?」


 無邪気な翡翠の爆弾に対し、紫織はいつ快がキレ出すんじゃないかと気が気でなくなったが、


「別にいらん! 大地、飯!」


 すっかり快の機嫌は悪くなってしまったのである。


「おいおい、さすがにキレたんじゃないのか?」


 小声で大地は紫織に尋ねると、


「かもね。快は私達があげた物だけは毎年食べてたからね」


 それだけに紫織は気の毒でならなかった……



 そんなこんなで翌日……


「快君! チョコレート受け取って!」


 やはり毎年のこと。小学生の時でさえ快はクラス全ての女子からチョコレートを受け取っていた。それが中学生になると先輩後輩まで加わったのである。


「はい!」

「ん?」


 無邪気な顔をして翡翠は大きな紙袋を差し出した。


「いるんでしょ? いってらっしゃい!」

「だな。心配するな、骨は拾ってやるからよ」


 翔がにっこり笑うと、翡翠とその場から瞬時に消えたのだった。おそらく翔がいる限り、翡翠の本命チョコレートは出るはずはないだろうが……

 

「篠原君! 受け取って!」

「篠原先輩!」


 次々と押し寄せてくる波にさすがの快も逃げることができなくなった。女子のパワーは恐るべきである……


 そして教室では……


「な……!! なんだと〜〜〜〜!!!」

「へっ?」


 翡翠の周りを取り囲む「カレカノいない同盟」のメンバーは恐るべき絶叫をあげていた。


「ちょっと、翡翠ちゃん! それ正気なの!?」

「おかしいだろっ! お前が篠原にチョコレートをやらないなんてよ!」

「お姉さん達にその経緯を話してごらん!」

「そうだぞ! 先生にも訳があるなら話せ!」


 なぜか担任までがこの同盟に入っている。しかし、それは別の話として……


「だって、快はそんなに甘いもの好きじゃないし……、たくさん貰ってるし……」

「そんなの関係あるかっ! お前はこの同盟の希望なんだぞ!」

「そうだ! もっと自信を持て! 翡翠!!」


 なぜここまで自分を励ましてくれるのだろうと翡翠は疑問に思ったが、


「だいたいね、篠原君はいつも翡翠のチョコレートだけは食べるって決まってるんでしょ? だったらいきなりなくなったら寂しくなるんじゃないの?」

「だよね、それでバスターの任務に失敗することもあるかもしれないし」


 それを聞いて翡翠はすっと立ち上がり、


「私!!」


 それを聞いて翡翠は急いで快の元へ走った!


「おや、翡翠ちゃんどうしたんだい?」


 売店のおばちゃんがニコニコ顔で訪ねるが、


「おばちゃん! 代金後から払うからこれ頂戴!」


 了承も得ずに翡翠はぱっと商品を取るとまた駆け出した!


「急がなくちゃ!」


 ただその思いだけで翡翠は走る。そして、ちょうど女子に囲まれながら教室に向かってくる快を発見した。


「快!!」


 フワフワなセミロングがくしゃくしゃになっていたが、女子の中を押し通るようにして快に近づく。その目は涙目だ。


「おい、どうしたんだ?」


 いつも冷静な快も少しだけうろたえる。


「快、ごめんね!!」


 そして差し出されたのは十円チョコレート。その贈り物としてはあまりの酷さに周りの女子からは笑い声も出てくるが、快は充分だと優しい笑顔を浮かべた。


「ああ、貰っとく」


 その表情を快は翡翠にしか向けたことがない。周りは誰しもが二人の世界に入り込んでいると思い始めたが、


「本当にごめんね!! 快が私達のチョコレートをそんなに楽しみにしてるなんて知らなかったの!! まさか任務に失敗することもあるなんて思わなかったから!!」


 「任務失敗だけはしてもらっては困る!」という空気が二人の世界を完全にぶち壊した。こんな入れ知恵をしたのはおそらくクラスの連中に違いない!!


「翡翠、任務がある」

「えっ? なに?」


 いつも以上の殺気を感じた翡翠は隊長の命令を待つ。一言一句聞き漏らさないように。


「ミッション、『カレカノいない同盟抹殺!!』死ぬ気でやれ!!」


 誰にも彼にもハッピーバレンタインデー??



なんとなく書きたくなった番外編です。

本編のほうもがんばりますんで、どうぞお付き合いくださいませ☆

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