表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Dancer   作者: 緑青 海雫
2/2

瞳のない少年

随分とのんびり投稿ですみません;






 ―――  コポッ… ―――



 ふと、眼を開けようとしたが、思ったより瞼が重たかった。

 いや、重いというより気怠いと言った方が正しい。



 少年は、水の中で目を覚ました。

 コポ、コポッ、と空気の泡が頬を撫ぜた。


 しかし、視界は真っ暗で何も“見えない”…。

 すると、くぐもった音が聞こえてきた。

 どうやら近くに、複数の男性が居るようだ。


「あぁ~…コレも失敗作だ…。」


 ザワッ、と胸の辺りが嫌な感じにさざめいた。


「なんだ、顔は可愛いのに…、また失敗作か。」


 少しずつ遠ざかっていく男性達は、心底、がっかりとしたような雰囲気で喚き散らして行った。


「まぁ、コレは***の***が…で…**」


「あぁ、それなら…で***廃棄しょ***…」


 なんとも不愉快で物騒極まりない単語を発しながら、いつの間にか何も聞こえなくなった。

 心を乱されて心拍数が上がる。


 ――― ピピッピピッ! ―――


 突然、すぐ足元から甲高い電子音が鳴った。


『発生確認! 発生確認! 不適切感応能力と自我の発生を確認! 速やかに対処せよ!』


 ドクッと、恐怖に近い動悸が胸を締め付けた。

 ゴボゴボッと口から空気が漏れた。


『 ウ―――ッ! ウ―――ッ! 繰り返す! 速やかに対処せよ! 』



 明らかに、穏やかじゃないサイレンと電子音が発する言葉に少年は慄いた。。

 遠くから、バタバタと走り寄ってくる複数の足音。

 少年は、必死に水の中で手足をバタつかせた。

 手を伸ばすと、ガラスのようなツルリとした壁に触れる。

 壁は緩やかにカーブを描いていて、自分はどうやら円柱型の水槽の内側に居るようだった。

 脚をバタつかせると、なにやら糸や管に絡まったり、太くて硬い金属の塊に当たったりした。

 自分の力が及ばない状況を理解すると、恐怖に震えた。

 叫びたいのに、声を上げようとすれば、ただ空気の泡がゴボゴボと零れるばかり。

 喉に違和感を感じて意識すると、なにやら管のようなものが、鼻から入って喉から食道の奥まで通されていた。

 瞬間、餌付くが水の中ではそれもままならない。

 そうこうして居る内に、カチャカチャ、バタバタと周りが騒がしい。


「感情の確認! 第一級失敗作へ降下! ***が止まりません!」

「***て、***しろ! ***の注入開始! 」

「しかしっ! それでは***が***ですっ! 」

「構わんっ! コレは、初期と同じだ! 完全な“ダンサー”ではないから***の注入に耐えれる。」

「あぁ、コレは大丈夫だ! 他の様な試験管での発生者ではないからな。 この強さの薬でも構わん。」

「だから、さっさとやれ! 」

「は、はいっ! ***の注入を開始します! 0分20mlの投与、続いて5分後に…」


 ――― キュイィィィン… ―――


 突然、ガンッと鈍器で首の後ろを殴り付けられたような痛みに襲われた。

 あまりの痛さに叫んでも、声の替わりに大量の泡が出るばかり。

 涙が滲んだ気がしたが、水の中では分からない。

 ぎゅうっと体を縮めて丸くなった。

 それが精一杯の防御だった。

 首の後ろに、硬い何かが取り付いているようで、液体が注ぎ込まれるのが分かる。

 激痛の痛みは、其処から来ていた。


 ――― キュゥイィィィィィン… カシュッ! ―――


 ゴボゴボゴボッと、悲鳴を上げたが、誰にも届かない。

 この拷問は、あと何回続くのか…。

 少年は、恐怖に震える。

 水槽の外で、騒がしく男たちが討論していた。

 声の種類からして、たぶん4人。


( 絶対、ぶん殴ってやる…っ! 覚えた…ぞっ、こい…つ、らの、こ、え… )



 徐々に薄れ行く意識の中で少年は誓った。









いつも読んで下さり、本当にありがとうございます!

のんびり投稿ですが、宜しくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ