瞳のない少年
随分とのんびり投稿ですみません;
――― コポッ… ―――
ふと、眼を開けようとしたが、思ったより瞼が重たかった。
いや、重いというより気怠いと言った方が正しい。
少年は、水の中で目を覚ました。
コポ、コポッ、と空気の泡が頬を撫ぜた。
しかし、視界は真っ暗で何も“見えない”…。
すると、くぐもった音が聞こえてきた。
どうやら近くに、複数の男性が居るようだ。
「あぁ~…コレも失敗作だ…。」
ザワッ、と胸の辺りが嫌な感じにさざめいた。
「なんだ、顔は可愛いのに…、また失敗作か。」
少しずつ遠ざかっていく男性達は、心底、がっかりとしたような雰囲気で喚き散らして行った。
「まぁ、コレは***の***が…で…**」
「あぁ、それなら…で***廃棄しょ***…」
なんとも不愉快で物騒極まりない単語を発しながら、いつの間にか何も聞こえなくなった。
心を乱されて心拍数が上がる。
――― ピピッピピッ! ―――
突然、すぐ足元から甲高い電子音が鳴った。
『発生確認! 発生確認! 不適切感応能力と自我の発生を確認! 速やかに対処せよ!』
ドクッと、恐怖に近い動悸が胸を締め付けた。
ゴボゴボッと口から空気が漏れた。
『 ウ―――ッ! ウ―――ッ! 繰り返す! 速やかに対処せよ! 』
明らかに、穏やかじゃないサイレンと電子音が発する言葉に少年は慄いた。。
遠くから、バタバタと走り寄ってくる複数の足音。
少年は、必死に水の中で手足をバタつかせた。
手を伸ばすと、ガラスのようなツルリとした壁に触れる。
壁は緩やかにカーブを描いていて、自分はどうやら円柱型の水槽の内側に居るようだった。
脚をバタつかせると、なにやら糸や管に絡まったり、太くて硬い金属の塊に当たったりした。
自分の力が及ばない状況を理解すると、恐怖に震えた。
叫びたいのに、声を上げようとすれば、ただ空気の泡がゴボゴボと零れるばかり。
喉に違和感を感じて意識すると、なにやら管のようなものが、鼻から入って喉から食道の奥まで通されていた。
瞬間、餌付くが水の中ではそれもままならない。
そうこうして居る内に、カチャカチャ、バタバタと周りが騒がしい。
「感情の確認! 第一級失敗作へ降下! ***が止まりません!」
「***て、***しろ! ***の注入開始! 」
「しかしっ! それでは***が***ですっ! 」
「構わんっ! コレは、初期と同じだ! 完全な“ダンサー”ではないから***の注入に耐えれる。」
「あぁ、コレは大丈夫だ! 他の様な試験管での発生者ではないからな。 この強さの薬でも構わん。」
「だから、さっさとやれ! 」
「は、はいっ! ***の注入を開始します! 0分20mlの投与、続いて5分後に…」
――― キュイィィィン… ―――
突然、ガンッと鈍器で首の後ろを殴り付けられたような痛みに襲われた。
あまりの痛さに叫んでも、声の替わりに大量の泡が出るばかり。
涙が滲んだ気がしたが、水の中では分からない。
ぎゅうっと体を縮めて丸くなった。
それが精一杯の防御だった。
首の後ろに、硬い何かが取り付いているようで、液体が注ぎ込まれるのが分かる。
激痛の痛みは、其処から来ていた。
――― キュゥイィィィィィン… カシュッ! ―――
ゴボゴボゴボッと、悲鳴を上げたが、誰にも届かない。
この拷問は、あと何回続くのか…。
少年は、恐怖に震える。
水槽の外で、騒がしく男たちが討論していた。
声の種類からして、たぶん4人。
( 絶対、ぶん殴ってやる…っ! 覚えた…ぞっ、こい…つ、らの、こ、え… )
徐々に薄れ行く意識の中で少年は誓った。
いつも読んで下さり、本当にありがとうございます!
のんびり投稿ですが、宜しくお願いします!