さすがはらぐろ
ヒロインを会長に送らせ、部屋に二人きりになった後。
テニス部の様子をいろいろと聞かれて、何気なく答えていく。
やっぱり部活のことで仕事を減らしてもらったから気になるのか?
そう考えていると、急に言われた。
「緑羽。やっぱりあなたも彼女の裏に気が付いたんですね?」
「え?」
何を言われたか、とっさに理解できなかった。
「いつ気がつくのかと思っていましたが…やっぱりあなたが最後でしたね」
バカにしたようにため息をはかれて動揺する。
「最後って、皆知ってたのか!?なのになんで皆して逆ハー狙いのヒロインなんかを取り囲んで楽しそうに笑っていられるんだ!?」
思わず叫んでしまってから、副会長のニヤリとした表情を見て青ざめる。
いつも、かまをかけられて俺が失言したときにする顔だ。
「彼女の、何について知ってその発言になったのか、私の方も知りたいですね」
試すような言葉に、先に手の内を明かせと暗に言われて息をつく。
と言っても前世だのゲームだのは話せないから、簡単な話だけだ。
「クリスマスに、デートをハシゴされていることに気がついて。いろいろ思い返してみたら心当たりが多かった」
副会長は頷きながら尚も聞いてくる。
「逆ハー狙いのヒロインとは?」
やばい、さすがにゲームとか言い出したら異常者扱い確定だ!
「い、いや、まるで恋愛ゲームを楽しんでるみたいだなぁ、と」
「『恋祭り』のですか?」
「なんでそれを!!」
告げられたゲーム名に驚愕する。
いくらハイスペックな頭脳派副会長だからって、この世界にないゲームの名前まで知るはずがない。そしてこの世界にその名前のゲームがないことはクリスマスのあの日に確認してある。類似の乙女ゲームも存在していなかった。
「私も初めは半信半疑だったのですが。会長に入学前から相談されていたのですよ。そんな名前のゲームがある世界のことを」そうして話されたのは衝撃的な内容だった。
会長が幼い頃から前世の記憶に目覚めていたということ。
前世に比べてハイスペックな今世の自分に、調子に乗って俺様男になったこと。
会長の前世は女で、それを隠すために男らしさを出そうとしたのもあったらしいこと。
幼馴染みの副会長は、小学生のときにそれを知ったこと。
そして高校に入ったとき、この世界が前世で会長がやっていた「乙女ゲーム」だったと気付き、相談されたこと。
書記の双子はコンプレックスを利用されないよう早目に接触し、仲良くなっていたこと。
教師は遊びなれているから、遊んでいるヒロインとして割りきって相手をしていること。
正直、頭がパンクしそうだ。
初耳なことが多すぎる。
「それで、ヒロインに付き合って恋愛ゴッコをしていた理由ですが…大丈夫ですか?」
副会長からの情報がようやく止まった。
「待ってくれ。いろいろ衝撃すぎる。会長が元、女?生徒会の皆が知っていた?俺以外?」
なんだそれ。