はーどるたかいっすね
冬休みが終わり、新学期が始まった。
ヒロインとは上手く距離を置くこともできないまま、日々が過ぎていく。メールは続いているが、話をすることは少なくなったからもうこれでいいかと思っている。
ついでに大会に向けて部活が本気で忙しくなり、生徒会の仕事を減らしてもらった。
今さら気がついたが、生徒会に所属しつつテニス部長をやってしかも実力は全国区って…無茶だろ、普通!高校生にして過労死するわ!
全国の乙女ゲームファン、ハードル上げすぎじゃないか!?
今までよくヒロインと短時間でもデートしてたよな、としみじみ思う。姿見たさに生徒会の仕事を増やしたことさえあったし。
どんだけ会いたかったのか、あの頃の自分。
今はやりくりしたお陰で時間に余裕ができ、テニスの腕も絶好調だ。
というか正直、前世の運動が苦手な自分を覚えている分、運動神経抜群な今の体が楽しくてしょうがない。
鍛えたら鍛えただけ動きがよくなるし、苦しくても最後には上手くやれるからいくらでも努力できる。
なるほど、これだけ能力が高ければ「努力は裏切らない」とか言えるわけだな、と思う。ゲームでもよく出てきた俺の口癖で、前世では全く理解できなかった言葉だ。
ついでに勉強もしっかり頭に入ってくる。頭がいいやつは言われたことをすぐに理解できるもんなんだなと我ながら感心するくらいだ。さすが攻略対象。今まで成績が上がらなかったのは、暗記をさぼっていたかららしい。どんなに能力が高くてもさすがに時間がなかったからだな。部活で体力使うから眠いし。
部員からも「最近、調子いいよな。すげえ集中出来てるし、優勝狙えるんじゃね?」なんて言ってもらえてる。
運動が苦手な人の気持ちがしっかりわかるようになったため、部員の指導も上手く出来るようになってきた。周りも一緒に練習に打ち込んでくれてるし、テニス部全体のレベルが上がっている気がする。「総合優勝狙おうぜ!」とやる気満々だ。
正直、平凡な前世の意識に引っ張られていろいろ出来なくなるんじゃないかと心配していたが杞憂だったみたいだ。
むしろ人生経験が増した分、能力が上がった気がする。
そんなある日。
生徒会の仕事に召集されてたまった仕事を消化し、そろそろ終わりにするか、となった頃。
腹黒副会長に話があるから残るようにと言われた。