飛び出しすんなよ!?とか言ってみる
7限目の授業を終え、紫苑と刈安は2人で帰路につくことにした。3年生2人と時間が合わないときは2人だけで先に帰宅することになっている。もちろん、紫苑単体での帰宅は禁止されている。
「男を一人で下校させないなんて…過保護すぎだろ」
「紫苑が不注意で作った人だかりで渋滞起こしたからね…」
「…いつの話だよ」
「つい2年前の話だよ…」
紫苑支持者は男女比8対2で男受けが良い。(刈安統計)
事実、紫苑は男であるにも関わらず男性陣からの絶大な支持を集めているのだが、本人にとっては悩みの種でもある.。最近では芸能事務所からのスカウトも絶えず、紫苑のストレスはうなぎ登りといった状態だ。
紫苑達が暮らすのは、日本の『近未来技術研究特化区域』と呼ばれるエリアの第18地区である。
2024年、日本は経済政策の失敗による急激に弱体化を受けて壊滅寸前まで追い込まれる。
しかし2025年、政府は大規模かつ効率的なな技術革新を進めるべく、国内全ての研究機構を旧東京の周辺に集束させた。同様に全国に『食物生産特化区域』、『環境研究特化区域』、『国内防衛特化区域』等、全25もの特化区域を設置し、それを新たな地名として特化区域内をさらに細かく地区分けした。
現在は2067年。今ではこの無謀とも思える超変革を乗り越えて日本は世界No.1の技術力を得ている。
そのためか『近未来技術研究特化区域』は他国からのスパイや犯罪者の年間総数が国内最多と言われており、これに頭を悩ませた日本政府は、『鬼灯一族』に目をつけた。常人を越えた身体能力をもつ『鬼灯一族』の者を『近未来技術研究特化区域防衛特殊部隊』として様々な特権を与た上で起用することで現在のスパイ、犯罪者の総数と比較して被害件数は日本国内で最も少ない状況を維持している。余談だが、ここ3年の被害件数最多は環境研究特化区域の第4地区である。
「紫苑、親父は何が目的なんだろうな。急に4人分の最新のゲームソフトを準備するなんて」
「親父の考えなんて俺が知るわけないだろ」
「いや、そうなんだけどさ…なんか猪突過ぎて何かしらの意図があっての事なのかなって思っただけだよ」
「意外と鬼灯一族のアピールだったりしてな」
「あり得そうだね…」
「どちらにせよ楽しませて貰うけどな…―――!?」
そこまでいい終えてふと遠くを見た紫苑の目に飛び込んできたのは横断歩道に向かって走る小学2年生くらいの男の子とその子の死角になる建物の影から交差点へ向かって走るトラックだった。
それを見た瞬間、紫苑は全力で走り出した。
約50mの距離を約3秒で駆け抜け横断歩道に飛び出し、走ってくるトラックを見て立ち竦む小学生を抱え上げるとトラックをギリギリで躱し小学生が走ってきた側の歩道に飛び込んだ。勿論、自分をクッションにすることは忘れない。
起き上がって例の子供に怪我がないことを確認して安堵した紫苑が今後飛び出しをしないように微笑みながら注意を促すと小学生は「ありがとう。お姉ちゃん!」とお礼を言った。紫苑が微笑みを崩さずに拳骨を食らわせたように見えたのは恐らく気のせいだろう。
皆が忘れた頃に現れてみました!嘘です!