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階段の前

【新宿 ― ハルト】

夕方は一段と冷え込み、ハルトは友人とレコード店を出た。手にはいくつかのレコードの袋、そして言いかけた冗談がまだ残っている。空は少しずつ暗くなり始めていた。


【秋葉原 ― ノゾミ】

一方その頃、ノゾミは小さな袋を手にしていた。中には買ったばかりのキーホルダーが入っている。彼女はレトロ風のカフェの前で立ち止まり、灯りに照らされた看板を写真に収めた。


【新宿 ― ハルト】

「もう少し寄ってく? それとも帰る?」と友人が言う。

ハルトは時計を見て、月曜までに終わらせなければならない宿題のことを思い出す。

「やっぱり、もう帰るよ。」


【秋葉原 ― ノゾミ】

偶然出会った友人が声をかける。

「もう遅くなってきたし、一緒に駅まで行く?」

「うん、そうだね。」ノゾミは答えた。


【新宿 ― ハルト】

帰りの電車の中で、ハルトは運よく座席を見つけた。窓に頭をもたせかけると、車両の揺れが心地よく、次第にまぶたが重くなっていく。


【秋葉原 ― ノゾミ】

西へ向かう電車の中で、ノゾミはドアのそばに立っていた。手にはスマートフォンを持ちながらも、視線は窓の外へと逸れ、街の灯りが流れる光の粒に変わっていくのを眺めていた。


【新宿 ― ハルト】

電車が途中の駅に停まったとき、ハルトは目を覚ました。ちょうど車内放送が流れる。


> 「次は、西川。」




【秋葉原 ― ノゾミ】

彼女の乗る電車でも同じ放送が流れた。


> 「次は、西川。」

ノゾミはその駅名を耳にして、はっと瞬きをした。




【同時刻】

二本の電車は同じ駅に到着した。ただしホームは向かい合っている。ハルトは片方から、ノゾミはもう一方から降り立った。


【駅構内】

互いに気づかぬまま、ふたりは別々の通路を歩いていた。だが行き先は同じ北口。人の流れに押されるように、それぞれの足取りは次第に交わろうとしていた。


エスカレーターで、ハルトがふと顔を上げる。――そこに彼女がいた。数段上で、人工の光に照らされた金色の髪が柔らかく輝いている。


ノゾミは視線を感じて顔を横に向けた。驚きが一瞬、瞳に浮かぶ。


「また、あなた?」と、彼女は小さく笑った。


ハルトはすぐに返事ができなかった。頭に浮かんだのはただひとつ――まるでこの街が、ふたりをからかって楽しんでいるかのようだ、ということだった。

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