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プロローグ 『真夜中に忍ぶ悪党』

 日が沈み人々が寝静まってきた頃、一つの影が動き出す


「今日のターゲットが住んでいる家はあそこだな、気を引き締めて行くか」


 そう物騒な言葉を口にしたのは、一見すると何の変哲のない普通の男。その辺を歩いていたとしても誰の記憶にも残らないようなものである。


「ま、だから向いているんだろうけどな」


 派手な装飾品などは一切身に着けず、機能性を重視した格好。体にピタッと張り付いてそのシルエットが浮かび上がる。衣擦れにも最大限の注意を払わなくてはいけない。なぜなら―――――


「その小さな音が命とりな場合があるからな、泥棒なんてやってると」


 真夜中の路地で独り言を続けるその男、向井斗真は今夜忍び込むターゲットの家の前で準備をしていた。

 ここでいう準備というのは主に心の事である。盗みを働いた当初はそれなりに緊張したものだが、回数をこなした今その緊張は消え失せている。それはそれとして気が緩まないように心の準備をしているというわけだ。


 「・・・ふぅ、よし準備完了――――行くか」


 目の前の家は割と大きめの一軒家。目的は金目のもので運びやすいものならなんでもという感じだ。最近は現金を家に置いてるなんてことは少ないから、腕時計やアクセサリーなどが盗む対象になりやすい。

 ピッキングで正面の玄関から堂々と入る。家の中には主人と奥さんの二人しかいないということは確認済みである。


 「侵入完了、この手順にも慣れたものだ。日に日に鍵開けるのが上手くなってる気がするぞ」


 家主を起こさないように細心の注意を払いながら探索を始める。まず初めにすることは物色などではなく逃走のイメージだ。仮に気づかれた場合でも落ち着いて対処することが出来る。

 当然その状況は最悪なものなので来ないに越したことはないと思っているが、用心は大切なのだ。


 一歩ずつ慎重に、物音を立てずに家の中を探索する。斗真は音を発生させないことが得意だった。無音で歩き、無音で扉を開け、無音で盗みを行う。これこそ斗真が泥棒としてやっていくにあたって神様から授かった才能なのだ。もっともその神もこういった活用法を望んでいたかは分からないが。


 「お、この家は当たりかもな。奥さんの趣味なのかアクセサリー系が割とあるみたいだ。保管場所も目立たないところにあるし今回はこれをもらって行こうか」


 斗真は泥棒だが、その家の全財産を奪おうなどとは考えていない。多少お金になりそうなものを数品盗んで立ち去ることがほとんどだ。

 自分のものが無くなったとき、それが泥棒の仕業であると即座に考える人はどの程度いるのだろうか。そこにあったものが全て無くなっていたなら明らかかもしれないが、沢山ある内の1つや2つ無くなった程度では自分が無くしてしまったと思うのが自然だろう。


 自分が生活できればよく、一攫千金を狙うタイプではない斗真は一つの家から多くは盗らない。泥棒の仕業と思われるのを少しでも遅らせるという打算が主な理由だが、それ以前に単に可哀そうで申し訳ないからなのだ。


 日中は仕事に励んでいるのにもかかわらず、自分のような何も成しえていない者に幸せを奪われる。そのことに斗真はほんの少し罪悪感を覚えているのだ。


 「でもこれ辞めちゃったらまた安月給の貧困時代に逆戻り、それはやはり勘弁したいところだ」


 あれこれ言ったが所詮は自分が一番かわいいのだ。だから盗む。それが向井斗真の生き方であり、簡単には変わらない性根なのである。


 「この家から取るのはこれくらいでいいか、もう脱出するとしよう」


 家に入った痕跡を一切消し、また物音ひとつ立てずに家から出ていく。外に出ると月明かりが斗真を照らす。まるでお前のことは全て見ていると言われているかのようだ。悪いことをするとお天道様の下を歩けないというが、悪事に手を染めているとそれを実感する。


 「それももう今更だ、早いところ家に帰ろう」


 こうして今日も泥棒は夜空の下で悪事を働く。今夜の彼の行いはだれの目にも映ってはいない。


 まだ朝は遠く――――――――――――


こういう文章を初めて書いています。不自然な表現や引っかかる箇所がありましたら、びしばし指摘してください。

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