「インフレ増税」により25年度は“無意味に”PB黒字化達成
筆者:
本日もご覧いただき誠に光栄です。
今回は僕としては非常に残念ではありますが25年度にはPB黒字化が8000億円の達成がなされようとしていることが試算として発表されていること。
そしてその背景にある「インフレ増税」が行われていることについて触れていこうと思います。
◇見えにくい「インフレ増税」
質問者:
あんまり聞き慣れない言葉ですが「インフレ増税」ってどういう事なんですか? そんな税目聞いたことが無いですけど……。
筆者:
まず身近で分かりやすい消費税(とは言っても法人が本当は支払っているけど)について考えてみたいのですが、1000円で税金91円だったものが、1100円になったとします。そうすると税金も100円と自然に9円増えるわけです。
つまり今現在は大体年3%ぐらいのインフレのために3%の消費税収増が自然に行われているといっていいのです。
しかし、消費税に関しては税率が変わらず一律であることからまだマシなわけです。
所得税に関しては1億円までは所得金額に比例して税率が上昇してしまいますし、
社会保険料に関しては「〇万円の壁」と言う言葉があるように主婦の方々が稼ぎたくても稼げないという現状があるのです。
仮にこの壁を越えつつ手取りを増やそうというのであれば元主婦の方は160万円ほど稼がなくてはいけない状況です。
※ただし、政府は一時的に「〇万円の壁」を超えた方に関しても会社に対してですが給付金を支払うという形での補助制度が存在します。企業に支払うために社員に還元されるとは限りませんが。
質問者:
本来であればインフレ下であればどのような税制が望ましいんですか?
筆者:
本来であればインフレになれば「課税最低値」と言うのを変動させなくてはフェアではありません。
所得税は、物価・賃金が上昇する時にはそれに合わせて課税最低限(各種控除など)や税率の段階が変わる基準となる所得額を引き上げないと実質的に増税になってしまいます。
これを経済学用語ではブラケット・クリープと呼びます。
長いのでブラクリとでも略しましょうか(笑)。
NEWSポストセブンの23年11月6日の
『【1人9万円のステルス負担増】岸田首相と財務省が気付かぬうちに進めていた“実質的な所得増税” 給料上がっても手取りが減るカラクリ』
と言う記事の図を引用させていただきますと
この図のように物価と給料が同時に10%上がった場合に課税最低額を引き上げなければなんと手取りはブラクリや「インフレ税」によって実質手取りは減ってしまうのです。
質問者:
なんと……しかも実質賃金がプラスマイナスゼロでこの有様ですからマイナスの状況ですと人々の暮らしは苦しくなる一方なんですね……。
ブラクリとか略されるとプリクラみたいで可愛いですけど実態は深刻ですね……。
筆者:
ブラクリを回避するために本来であれば、〇万円の壁というのは1980年代に出来たものなのでその壁を300万円ぐらいにすることや、社会保険や年金を所得に応じた段階制度(低所得者の減免)にするべきだと思うんですけどね。
それについては全く話題に上がらず、賃上げやら物価を上げたりすることは本当に国民を苦しめるだけだと思います。
◇政府は財務省のために強引にインフレにしたい
質問者:
しかしどうして、政府は頑なにブラクリの改善や消費税を下げようとしないんでしょうか?
以前のお話ですと食品だけでも0%にするだけでインフレを0%近くに出来るというお話だったのですが……。
消費税減税をすれば簡単に人々の暮らしが楽になるのに実行しないのが理解できません。
筆者:
それも財務省や「PB黒字化」と大きな関係性があります。
まず「PB黒字化」についてご存じない方や忘れてしまった方もいらっしゃると思うので改めて簡単にでも振り返っておきたいのですが、
税収でもってすべての政府支出を賄う事を言います。
基本的に一般の家計などにおいては当たり前であり、
国家財政に関しても金本位制度においては有効な考え方でした。
しかし、現代社会において貨幣は信用創造となっており極端な通貨価値の下落やハイパーインフレーションになっていない限りは全く問題ない状況です。
※現在の通貨価値の下落は日米金利差からのものであり、日本はコロナ対策で一般国民にお金をケチり過ぎたことから景気回復が遅れたことから起きていることなので国債の発行し過ぎから起きていることではありません。
質問者:
信用創造の状況でPB黒字化を目指すとむしろ国民の財産が吸い上げられてしまうんでしたね……。
筆者:
しかし頑なにその目標を取り下げようとしないために消費減税を行わないわけです。
しかも高齢化社会で社会保障が増大している中で黒字になろうという状況なのですから
生産年齢人口から見た場合は恐らくはもっと無意味に吸い上げられていますね。
今回の試算の「8000億円の黒字」と言う以上に国民にとって大きなマイナスの意味を持つと思います。
そしてもっと恐ろしいことはインフレの状況ですと黒字化以前の前に、
政府の目論見通り「財政健全化」が自動的に成し遂げられているのです。
質問者:
えっ……どういう事なんですか?
筆者:
インフレ状況だと「借金の圧縮」が起きるんですね。
これは極端な例ではありますが1000万円の借り入れをした人がその後に100倍のインフレになったケースについて考えてみましょう。
その際には給料が100倍とはいかなくても年収300万円が2億円にでもなればあっという間に1000万円を返済できてしまいます。
このように極端な例ではありますが、インフレ状態になればなるほど借金をしている人は返済が楽になるのです。
現在はインフレ率は3%弱ではありますが、政府の金額の分母から考えると大きく節約されています。
実際のところ令和5年度末の時点の一般政府債務の名目GDP(国内総生産)比は総債務で241.3%と、前期の241.5%から低下しています。これは8000億円ほどの改善です。
また、純債務(総債務から通貨や預金、負債証券などの金融資産を差し引いたもの)も94.7%と、前期の102.8%から低下しています。これは40兆円ほどの改善と金額にすると莫大です。
※純債務の名目GDP比100%割れは、2010年第2四半期(4~6月)以来14年ぶり。
24年度については国債発行残高が増え、PB黒字化していないにもかかわらず財政健全化に関する指標においては改善しているので「財務省の狙い通り」と言ったところでしょうか。
恐らくは25年度はPB黒字化も伴ってさらにこれらの数値は改善するでしょう。
質問者:
インフレ――と言うかどちらかと言うと賃金が上がらず物価ばかりが上がるスタグフレーションの状況をむしろ指標改善のために狙っているだなんて……。
筆者:
この国で一番借金をしている人と言うのは国債引き受けが日銀50%以上とはいえ日本政府であることは紛れもない事実であるために、どういう事かは分かりませんが日銀(自分自身)に返済するのを楽にするためにインフレにしたいという事なのです。
前々から言っていますが政府と日銀は同一視していい状況ですので正直言って全く無意味なことなんですけどね。
更に国債利上げをすれば利払い費が増えるとか全く意味不明なことを言っている報道ばかりなので本当に辟易します。
(長期借り入れに影響が出るので利上げは厳禁ですが懸念している論点が全く違うという事です)
質問者:
全く無意味なことのために強引にインフレにしようだなんておかしいですよね……。
筆者:
仮に、債権者が日本国民だとするならそれはそれで問題ですよ。
それは、日本国民の資産がインフレによって目減りすることですからね。
ただ、割合は3割ほどではありますが銀行や生命保険会社が保有、個人所有も1割あるのでその分は一般国民の資産が目減りしていると言ってもいいわけです。
直接国債を保有していなくても銀行が国債評価額が低下することにより、貸し出しを渋ったり、保険会社の還元額が減少し始めますので、巡り巡れば日本国民にとってもマイナスになります。
とにかくPB黒字化やスタグフレーション気味のインフレなど異常なことを殊更推進して、達成しつつあることを喜んでいるという狂気な事態であることをご理解いただければと思います。
質問者:
それを報道してくれるところって無いですよね……。
筆者:
むしろ「財政健全化して良かった!」とか「もっと黒字にしろ!」みたいな報道ばかりですからね。
そう言う主張をされる方々は正しい現代の信用経済を基にした貨幣観を学ぶか、江戸時代の金本位制度の世界に早く帰っていただきたいですね。
インフレによる好循環は全く起きていないのでここは消費減税が妥当な一手と言えるんです。
政府やマスコミは勘違いしているのか意図的にかは分かりませんがどうしても「景気の好循環のインフレだ!」ととにかく主張したいわけなんですね。
現実は原材料高に基づいたコストプッシュインフレと利益を上げたいがための値上げ、人材流出防衛のための渋々の賃上げと良いことは何も起きていません。
しかも彼らの「増税」は所得が把握しやすいところから毟り取ることばかり考えており、消費税の還付の廃止、法人増税や高額所得者に対する所得税「1億円の壁」については絶対に言いません。
国民を「労働漬け」にして声を上げさせないようにする「戦術」と見ても良いでしょう。
とにかく彼らの嘘や欺瞞に気づくことが必要です。
質問者:
少なくとも搾り取ることで良くなる兆しは全く無いですからね……。
輸出するものは無く、インバウンドも限界に近いですし……。
筆者:
「新しい日本人」と言う名の移民を受け入れることを狙っているんでしょうね。
更に外国人誘致でお金を受け取れるスキームもすでに作っているんでしょう。
民族間の対立や治安の悪化のリスクや文化の破壊の可能性など、
本当に日本のことを考えていない「今だけ金だけ自分だけ」の政治家とそれを追求できないマスコミがいけないと思いますね。
僕は何とかこれを少しでも食い止めようと、より多くの方に知っていただく一助になればと思って活動をしているという事です。
という事でここまでご覧いただきありがとうございました。
25年度のPB黒字化の裏にはブラクリが起きて実質的な「インフレ増税」になっているということ。
インフレをすることによって税収増だけでなく国債債務の圧縮と言う現象が起きるためにスタグフレーションであっても無理やりやり続けているという事をお伝えさせていただきました。
いつも皆さんがご覧いただいていることで励みになっています。
今後もこのような時事ネタや政治・経済、マスコミの問題について個人的な解説をしていきますのでどうぞご覧ください。