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第四話 交戦 ①

―ズガァァアアンッ!!


「あがぐへぇ!?」


「ばぐわぁあ!?」


 近づいてきていた賊たちにとって、それはまさに青天の霹靂へきれき


 突然の閃光。轟音。


 賊魔導士の盾になるようにして歩いていた前衛の重装戦士数人が、突然の爆発とともに派手に吹き飛ぶ。


 彼らはさながらストライク時のボウリングピンのごとくなぎ倒され、ある者は壁に叩きつけられ、ある者は背中から床に激突し、またある者は別の仲間の身体へと突っ込んで、そのことごとくが失神してしまった。


 そして、ここは狭い通路内。


 後衛だった魔導士たちもその爆音と閃光の衝撃からは逃れられず、大混乱に陥る。


 無理もない。


 『奇襲するはずだった者たちが、逆に奇襲を受ける』…戦いにおいて、これほどに壊乱かいらんを招く出来事はないのだから。


 さて、この爆発は先程アルが放った魔力の塊―滞留型のアタッチメントによるものだ。


 滞留型はその名の通り、放った魔力の塊を任意の場所に滞留させ、敵が触れた際に爆発させる…いわゆる、地雷である。


 無論、アルはこの好機を見逃してやるほど優しい男ではない。


 爆発のタイミングに合わせて身を屈め、その衝撃を受け流していた彼は素早く曲がり角から飛び出ると、未だ混乱する賊たちに容赦なく襲い掛かった。


 優先して狙うべきは、こちらにとって最大の脅威となりうる残存重装戦士だ。


 ……重装の前衛、残り1。


 呻き、よろめきながらもどうにか倒れずに立っている最後の重装戦士に肉薄。


―どぱん!


 至近距離からの一撃。それは、銃口から放射状に放たれし強烈な魔力の奔流ほんりゅう


 分厚い鋼鉄製の胸当てをつけた男の体が軽々と跳ね飛ばされ、壁に背を打ち付けて力なくその場に崩れ落ちる。


 握られていたロングソードはその役目を果たすことなく手放され、からんと空しい音を立てて床に転がった。


 一発一発の魔力消費は大きく、射程距離も酷く短いものの、接射すれば絶大な威力を発揮するアタッチメント―…拡散型の面目躍如である。


「ひ、ひぃ…!?」


「紅い髪に紅い眼…!!」


 アルの風貌を見て、残された賊魔導士たちが狼狽うろたえる。


 紅い髪と紅い眼は、高魔力保持者の表れだ。そして魔導士の魔力保持量とは、個々の魔導士の力量に直結する。


 ざっくり数字にすれば、アルの最大魔力は5000、賊魔導士は100といったところだが…。


 例えば最大魔力が100の魔導士は、枯れ果てるほどの全力を出しても当然ながら魔力100以上のパワーは出せない。


 対して最大魔力5000の魔導士は、その二倍の出力の攻撃を何度も放つことができる上、魔力100の攻撃を受けたところでかなり余裕をもって防御することができる。


 もちろん実戦となれば互いの魔力操作能力の差なども力量として影響してくるが、最大魔力保持量に差があれば差があるほど、出せるパワーにも違いは出るもの。


 紅い眼と髪は常人に比べて圧倒的に高い魔力を持つ者の特徴であり、相対する魔導士が恐怖するのは当然と言えた。


「び、ビビるな!どうせ偽物…染物か何かだ!」


「やれ!やっちまえ!」


「例え本物だったとしても、魔導士三人の一斉射ならひとたまりもねぇ!」


 賊魔導士たちは恐慌しながらも、各々の得物…ある者は杖を、ある者は剣の切っ先をアルへと向け、次々と攻撃魔法を放った。


 いくつもの閃光とともに、攻撃用に練られた魔力の塊が飛び出し、高速でアルへと殺到する。


「…」


 だがアルは躱そうともせず、ただ無言で右の手のひらを賊たちへと向けた。


 同時に、その手のひらを中心に渦を巻くようにして、紅く透き通った魔導障壁が展開される。


 賊たちの攻撃魔法は狙い通りの軌道を描くが、障壁に触れた瞬間全てがじゅうッと溶けるように消えてしまった。


 さながら、アツアツに熱したフライパンに垂らされた水滴の如くだ。


「ひ、ひぃい!効いてねぇ、効いてねぇぞ!」


「とにかく撃て!撃ち続けろ!」


「ちくしょう、ちくしょう!」


 ……残り魔導士、3。


 手のひらを広げ障壁を展開したまま、アルは一言も発さずに賊たちへ向け一歩、また一歩と近づいていく。


 賊魔導士たちはその顔を恐怖に歪めながらも必死になって攻撃魔法を放ってくるが、そのどれもが障壁を貫通できず、有効打足りえない。


 そして、すぐに。


「やべぇ!俺、もう魔力が…!」


「俺もだ…!」


「く、くそ!くそぉ!」


 賊魔導士たちの攻撃が止んだ瞬間、アルは障壁を解除し銃口を彼らに向けた。


 ……1つ。


「うわ!やめ―…」


―どぱん!


 狙われた杖持ちの賊魔導士は残された魔力をふり絞って障壁を張り、防御を試みる。


 だがさながら散弾のように放たれた魔力の子弾は、そのすべてが容易に障壁を食い破り、賊魔導士に直撃した。


「ぐっへぇ!?」


 撃たれた賊魔導士の身体が、オーガにでも殴られたかの如く宙を舞う。彼はその身を「く」の字に曲げて後方へ飛び、そのまま床に衝突して動かなくなった。


 ……2つ。


―どぱん!


「あばっふ!?」


 続いて発砲。


 2人目の賊魔導士はアルから逃げようとしたのか背を向けており、背中から攻撃を受けて飛ぶ。妙な角度で攻撃が命中したのか、彼は空中でぐるぐるときりもみ回転をして地面に激突し、沈黙した。


 ……3つ。


 3人目に銃口を向けたその時。


「う、うわぁああああ!」


「!」


 彼は狂人のごとく雄たけびを上げ、手にしたショートソードを振りかぶりアルへと斬りかかってきた。


 この行動は正しい。古今東西、魔導士の障壁ぼうぎょとは物理攻撃に弱いものなれば。


 だが、それはもちろん―…


―ガキィン!


 当たればの話、であるが。


「な!?」


 賊魔導士の放った拙い一撃は虚空を切り裂いたのみで、勢い余った切っ先が床へとぶつかって小さな火花を上げていた。


 アルは僅かに身を引く最小限の動きで攻撃をかわすと、続いて一歩踏み出して反撃に移る。


 右手の親指を曲げ他四指を伸ばした手刀の構えを取り、手の甲から伸ばした四指の先へ向けて、紅い障壁を刃のようにして形成。


 その刃を敵魔導士の首元に突き付け、


「ひっ…!」


「…ふむ」


 動きを止めた。


「…へ?」


 死に恐怖し身を固めていた賊魔導士は間抜けな声を上げ、目前に迫った血に染まったような色の瞳を見る。


 対するアルは首を傾げて、誰にともなくぼそりと呟いた。


「”できるだけ殺すな”…という依頼だったか」


 直後、その場にどすりと重い音が響く。


「がっへ…」


 賊魔導士の鳩尾に魔導銃の銃床がめり込み、彼は膝から床に崩れ落ちて失神した。


「これで3つ…」


 足元で白目を向いてぴくぴくと痙攣している賊を冷たい目で見下ろしたのち、アルは周囲を見回して状況を確認する。


 周囲に動く者はおらず、先程までの喧騒がウソのように静かだ。


「あとは…」


 そんな中、賊たちが死屍累々《ししるいるい》と転がる通路の端に、ぽつんと奇妙な置物が立っている。


 色は茶色、背は低く、ぽっこり突き出た腹と珍妙な表情、可愛らしく丸みを帯びた尾が特徴的な、ここより遥か東方に生息するという魔獣を模した置物だ。


 アルはその置物に目を止めるや否や、つかつかとそいつに歩み寄り、 


「…お前で最後だ」


 何を思ったか、その置物に向けて銃口を突き付けた。

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