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仮面を付けたまま大人になった君の終焉

作者: 天泣

 さて、君もとうとう大人という部類に振り分けられる年が来たね。

 でも君はまだ大人にはなりたくないという。

 なぜかと聞いたら、君はニコリと笑って。


「人と会いたくない。もう疲れたんだ。だって、この仮面が取れないんだ!いつまでも、この笑顔が取れなくて!苦しいのに人と合うと笑っちゃうんだ!休みたいよ・・・。だから、疲れたんだ。」


 と君はニコリと笑いながら、でも涙を流し叫んだ。

 あぁ、君はとうとう壊れてしまったんだね。僕にはどうすることもできないよ。

 でも君が助けを求めているのならば、僕は全力をかけて君を助けるよ。と伝えた。

 すると君はか細い声で


「助けて」


 と助けを求めた。僕は君のようにニコリと笑って承諾した。

 それから君と近くのカフェで話をした。

 君が得意なこと、苦手なこと、悩んでいること、その他諸々。


「やっぱり、この仮面は得意だよ。君を除いて破られたことはないかな。苦手なことは・・・人混みかな。あと人前で話すこと。年齢とか自分との関係性にもよるんだけど、人と話すのもだめなときあるなぁ。」


「で、最後は悩んでいることだっけ?そうだね。・・・この仮面かな。剥がれなくなっちゃった!」


 君はおちゃらけたように言ったが、僕が笑わないのを見てすぐに真顔になった。君の真顔は初めて見たかもしれない。

 もしかしたら笑っているところ以外見たことがないのかもしれない。


「本当はね、真顔が一番楽なの。疲れないし。でもね、人と合うとなんでだろうね、笑っちゃうし、笑わせちゃうんだよね。馬鹿なふりまでするしさ。対処法もないし、一度ね、一日真顔で過ごそうとしたんだけど友だちと会って3秒でだめだったね。アハハ・・・。」


 そっか、君は大変だったんだね。人が苦手なのに、苦手だからこそ人格矯正をしたり、仮面被ったりしてまで一生懸命関わろうとしていて、なのにどんどん辛くなっていっている。自分が辛いと自覚したときの話も教えてもらった。


 君は塾に通っていた。大手の塾とかではなく小学校の頃から通っていた個人経営の塾だった。やっぱり、小学生の頃から通っていて、先生との仲は良かった。君は普通より頭が良かったらしい。発展を主にやるクラスに振り分けられて、少人数で授業を受けていたときに、問題が本当にわからなかった。だから、わからない!と言ったら怒られたそう。ふざけるな真面目にやれ。と。しかし、君は至って真面目。言い方も悪かったかもしれない。でも流石の君もこれには耐えられなかった。君の心のかなで何かが破裂したようだった。君の

 心で、もうこの仮面を付けていられないと感じるようになった。長年一緒にいた先生も君じゃなくて仮面を見ていただけなんだ。きっと先生は仮面が本当の君だと思っているんだと思って絶望した。


 それで君は狂ってしまったのか


 苦手な人間相手に頑張りすぎたのが仇となったわけだ。こんなにも君は苦しんでいる訳だが、誰も助けてはくれない。いや、君が苦しんでいるとも分からなかった。その仮面のせいで。


 君はどうしたい?それでもこの仮面をつけるのかい?これから辛いことが何度かあるかもしれない。それを乗り越えられないと何も変わらないと思う。だから一度仮面を外してみない?一部分でもいいし、数秒でもいい。もしかしたら世界が、人間が少し変わって見えるかも。


 また、前みたいにすぐ笑ってしまうのではないかという不安が君の顔にあらわれた。しかし、僕を信用してくれたらしい。彼女は深呼吸を1回して、真顔になった。

 数十秒間真顔になった後、君は静かに泣いていた。


 その涙は確かに()の涙だった。


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 拝啓


 一年が年々早くなっていると感じるようになってしまいました。

 貴方様はどうでしょうか?

 あの時から数十年過ぎました。お元気でしょうか?

 あのあと僕が引っ越してしまい、また貴方も引っ越したそうで、手紙などが送れませんでした。

 ついこの間、貴方の友人と名乗る人と出会いまして、貴方の現住所と、職場を教えてもらい、筆を取った次第です。

 先日貴方の勤務先に行く機会がありまして、こっそり見に行かせてもらいました。

 貴方は以前(数十年前ですが)より自然な笑顔になっていました。

 無事仮面が外れたのですね。私はそれを見てとても嬉しくなりました。

 貴方があれほど他人が分からなくて、悩んで辛い思いをしたのにも関わらず、教師という職業に就いていたとは驚きです。

 さぞかし険しい道のりだったことでしょう。

 それでは、紙も少なくなってきたのでこの辺で筆を置きたいと思います。

 貴方がこれからも元気に、そして何不自由なく()()に暮らせることを心からお祈り致します。


 敬具


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