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ご愛読ありがとうございます。

拙い文章ですが、面白いと思って頂けましたら“ブックマーク”や“いいね”、“感想”等にて応援頂けると幸いです。

これらの応援は執筆に際しての大変励みなりますので宜しくお願いします。

ヴィーチェが突如として口を開く


「陛下、王妃様、発言をお許し頂けますでしょうか?」


れを耳にした王妃エクアトーラは禿げズラーの二人から視線を外しヴィーチェに視線を移す。

そして溜息の後に口を開く。


「ふぅ、仕方がないわね。今ここにいる者だけなら構わないでしょう。ヴィルドゥチェンゲンとして発言することを許します。オードス、構いませんね!」

「ぃ、構わない。も、元から紹介する予定だったから構わん。自己紹介含めて発言を許可する」


許しを得たヴィーチェことヴィルドゥチェンゲンが先の第二王子らが佇んでいた場所へと移動すると一礼の後に一歩前へ出て口を開く。


「フロレアール様、改めてご挨拶申し上げます。第一王子のヴィルドゥチェンゲンと申します。騙す様な真似をしてしまい申し訳ありません。現在の自分は一兵士として身分と名を伏せて王城警護隊に属しております。この事は内密にお願いします」

「いえ、こちらこら王子様とは露知らず失礼しました」


ヴィーチェからの想定外の身分の暴露を受けてフロレアールはまたしても反射的に謝ってしまう。


「お許し頂けた様で安心しました。さて、母上、父上と宰相殿が企てていたのは病の治療ですよ。バースからの、いえ、バースニップ卿から父宛に届いた手紙にも記してありましたから間違いは無いと思いますよ。強いて言うならば、澄まし顔でやり過ごそうとしてるヴォーエフ卿も同じ様な宿願を抱えていると付け加えさせて頂きます」


突如としてキラーパスを食らった王直属騎士ヴォーエフが堪らず口を開く。


「ヴィル殿下そりゃあんまりですぜ。俺は治療の確約も得られて無いのに共犯にされちゃたまったもんじゃないですぜ」


その台詞せりふにエクアトーラはジト目を浮かべてヴォーエフに言い放つ。


「あらヴォーエフ、アナタもオードスらのはかりごとを知ってて私が二人を問い詰めた時に黙っていたのね。それだけで十分共犯だと思うのだけど違うかしら?」


エクアトーラの指摘にヴォーエフはタジタジになりながら応える。


「エクアのあねさん、勘弁してくれよ。ヴィル殿下もそこで笑ってないで助けてくだせえよ」


ボールを返されたヴィーチェこと第一王子のヴィルドゥチェンゲンが応える。


「ククク…、いや、済まない。王国最強とうたわれる卿がタジタジとなる姿を見れば常日頃稽古で辛酸を舐めてる身としては溜飲が下る思いでつい笑ってしまったんだ」

「坊ちゃ…いやヴィル殿下はそう言うけど最近じゃ五本の内二本は殿下が取ってるじゃねえですか。れに王妃になったとは云えエクアの(あね)さんには昔の事もあって頭が上がらねえんですよ。そいつは殿下だって分かってるんじぁねぇですかい?」

「さて、なんの事だったか分からないな。この件に関しては母上と父上はどうお考えですか?」

「あら、ヴィル、私に話を振るなんて成長したわね。冒険者時代にオードスらを含めて色々と世話してあげただけよ。そうでしょ二人とも?」


そう言ってヅラ王と禿げの二人へとどう見ても爆弾付きのボールが手渡される。

ヅラ王が禿げ宰相に対してアイコンタクトで指示を出す。


(おい、ヴェート上手く切り抜けろ。お前宰相だろ。何とかしろ!)


それに対して禿げもアイコンタクトで訴え返す。


(こんな無理難題押し付けるなよ。だからストレスで私の髪の毛が…。いやこれは、処理を誤れば爆死するから無理。お前の嫁なんだからお前自身が何とかしろよ)


ヅラと禿げが見つめ合いながらフルフルと顔を振り会う様子を見兼ねて第一王子のヴィルドゥチェンゲンが口を開く。


「思い出しました。御三方から

教えられた逸話で四人は昔に冒険者パーティーを組んでいたんでしたね。そして母上は実質的な影の支配者で“最凶”の二つ名持ちのヒーラー兼メリケンナーな殴り神官戦士のS級クラス冒険者だったんですよね。父上、ナヴェート卿、ヴォーエフ卿、これで合ってますか?」


の答えにヅラ禿げ騎士の三人は顔を青くし、一方の最凶は額に青筋を浮かべてニコニコとしながら拳の関節を“ボキボキ”と鳴らしながら死刑宣告をする。


「あらあら、ヴィル君よく思い出しましたね。そして三人には後で話があります。そうですね、昔話に血の華でも咲かせてたのしむ事に致しましょう」


その発言を聞き流してヴィルドゥチェンゲンは三人のはかりごとについて言及する。


「母上、話を戻しますが御三方のはかりごとたる病の治療ですが母上も御存知のモノをフロレアール様は癒す事が可能なのだそうです。慢性的な腰痛に加えてあのイボ痔すら綺麗に消して癒す事が出来るそうですよ。父上、ナヴェート卿は云うまでもないですが、ヴォーエフ卿も近年はその二つに加えて五十肩にも苦慮していらっしゃるのでそちらを加えて頼もうとしていたのだと思います」


ヒーラーだったエクアトーラは驚愕する。

彼女はヒーラーとしても優れた腕前で有しており、欠損部位の再生すら可能な中級上位治癒魔術グレーターヒールをも扱うことが可能な程であった。

そんな彼女でも外傷と違って病や慢性的な腰痛などは魔術で癒す事は叶わず、その事自体が不可能なものと考えていたのだった。

そして夫たるヅラ王の痔主様退治を今まで幾度となく行っていたのも彼女であった。

彼女は驚愕のあまり震える声で尋ねる。


「そ、れは本当の事ですの?」

「バースニップ卿からの手紙には自身の腰痛と痔が完全に消えた旨、加えて父上とナヴェート卿の治療の確約を得ていると記されてました。違いありませんか?」


そしてヴィルドゥチェンゲンはフロレアールにボールを預ける。

そしてフロレアールはそのボールを握り潰す潰す。


「治療の件は間違いないわ。それにしても人の魔術やスキルに関して、好き勝手に周知する事まで同意した覚えは無いのだけど?それともお偉い王族やその関係者には世間一般で禁忌タブーとされている他者の魔術やスキルを探る事や知り得た情報を勝手に流布するのを問題にして無いって事なのかしら?」


その一言と併せてフロレアールの周囲の空間が歪んだ様にえた。

王都オーグヴァイネ近郊にいた鳥たちが一斉に飛び立ち、獣たちは王城から一歩でも離れようと逃げ惑い、王都内に居たネズミたちに至っては水路へと身投げしてまでして懸命の逃走を図る程であった。

フロレアールの態度がそして纏う雰囲気があからさまに敵対的なものへと変わる。

この場にいる者全員が身動き一つすることが叶わなくなる。

その背中に冷たい汗が湧き、流れ落ちるのを感じる。

そしてこの場にいる者は思い知るのだった。

バースニップからの手紙に最初の警告として記されていた事、れは“フロレアールからの怒りを買えば国が滅ぶ”との警告であり取扱いには厳重注意しろとのモノは決して誇張では無かったことを…。


フロレアールの怒りを示すかのようにその身体からあかいかずちほとばしる。

その雷紅らいこうは周囲の者たちを威嚇する様に“バチバチ”、“バリバリ”との音を立てフロレアールを体表を駆ける。

その姿にエクアトーラは神聖教会イオプシオンの成り立ちの逸話を思い出すながら呟く。


「フロレアール様、貴女あなた様は一体何者なのですか…」


彼女が思い出したもの、それは神聖教会イオプシオン、そして神殿や教会に属する者たちが自らを神の信徒と呼ぶ理由であった。

神聖教国の元となる国を起こした者は神の力を自在に操り自らを神に選ばれた神徒と称し、周りからはその様に称されていた。

そして神徒に付き従う者らは、自分らを神の信徒と称するようになったとのだとその逸話は伝えていた。

神徒が神より与えられた力、れは激しい咆哮ほうこうと伴に天空を蹂躙じゅうりんする様に駆け巡り、時に大地までをも撃ち砕き焼き焦がす、神の怒りの現れともされ、人々が恐れおののき“神鳴り”と称したモノ、そうれは雷であった。

魔術により神の力たる雷、所謂いわゆる雷撃を行使した者は神の怒りに触れ、術者自身が生み出した雷によりその身を焼かれ蹂躙される事となる。

この事から雷撃魔術は禁忌に近いものとされ、扱うことが叶うのは神に選ばれた者のみとされていた。


神鳴る力を身にまとい怒りを顕とする絶望的な状況の中、ヅラ王ことエヴィエオードスが国王として培った胆力を発揮し何とか口を開く。


「フロレアール殿…ご指摘の件に関しては完全な此方こちらの配慮不足であった…。申し訳ない…この通りだ許してくれ…」


そう言ってエヴィエオードスが頭を深く下げる。

その状態のま数秒が経過した時、唐突に“べちゃっ“との水気を含んだモノが落下した音が生じる。

れはヅラ王の頭頂部に被さっていたモノが在るべき所から離れ身投げした音であった。

ヅラ王エヴィエオードスは最凶嫁からのプレッシャー、そしてフロレアールの怒気に当てられたことで、頭皮にまでも冷や汗が湧き出ていた。

その汗を存分に、限界までに吸い込んだヅラは其の激増した質量に耐え切れず、深く下げ続けた頭頂より遂には滑り落ちたのだった。

その瞬間、フロレアールから放たれていた雷紅らいこうとプレッシャーは消え失せる。

その代わりとして室内には何とも言えない微妙な、いたたまれない空気が漂うのだった。


先とは違う静寂が室内を支配する。

永遠とも錯覚しそうな静寂を破ったのはフロレアールだった。


「そのぉ、何と言うか、謝罪は受け入れるので、どうか頭を上げてください」


だが意図せずハゲ王にクラスチェンジしたエヴィエオードスは頭を上げる素振りを見せず頭を下げ続ける。

フロレアールは王妃エクアトーラ、第一王子ヴィルドゥチェンゲン、宰相ナヴェート、王直属騎士ヴォーエフへと次々に視線を向けるが皆が気まずそうにハゲ王の反対方向の床へと視線を向けており、皆がフロレアールと視線が交わる事から逃れていた。

こうしてフロレアールに対処が丸投げされたハゲ王の対処について、彼女は認知加速と分割思考をフル稼働しての脳内会議が急ピッチに進行する。

その結果として導き出されたのはこれら五案であった。

①元からヅラだと判っていたから気にするなと明るく元気にフォローする。

②髪の毛なんぞタダの飾りですと言ってハゲ王を無理やり起こしヅラ王に再度ジョブチェンジさせる。

③テーブルに打ち上げられているヅラエモンを浄化で乾かし飛翔魔術でハゲ王の頭頂にパイルダーオンする事で何事も無かったことにする。

④この場に居る全ての者の記憶を改竄かいざんし元からハゲ王だった事にしてやり過ごす。

⑤根本的な原因であるハゲを撲滅する為に髪の毛を復活させヅラ王もハゲ王も無かったことにする。


これら五案について脳内シュミレーションを行った結果、⑤の髪の毛を復活させる事がもっとも平和的で他の問題が生じ難い事から傷心のハゲ王へと提案する。

もっとそれはこの場に居るもう一人の禿げの髪の毛を復活させる羽目になる事は必要経費として諦めることにしたのだった。


「あのぉ、ご提案なのですが宜しければ腰痛や痔の治療と併せて髪の毛も生やすことも不可能では無いのですがのですが…如何いかがですかね?」


其の提案にハゲと禿げが雄叫びが上がる。


「そ、れはまことかーー!!」


その雄叫びと伴にハゲ王は項垂れ続けていたハゲ頭を持ち上げるとテーブルに両手を着いて興奮した顔でフロレアールに顔を寄せてくる。

もう一人の禿げは控えていた場所を離れハゲの横に並ぶようにテーブルに両手を着いて同じ様に興奮した顔を寄せてくる。

ハゲと禿げの激しい喰い付きにフロレアールは引きながら応える。


「ちょっと、ハゲ禿げのツル頭が近い!ちょっと離れて!髪の毛を生やす事は出来るので落ち着いてください!それにコレには条件があります!」


フロレアールからの条件との発言に一同が固唾を飲んで続く言葉を待つ。

室内に“ゴクリ”との喉が鳴る音が響く。


「条件は四つあります」


そう言ってフロレアールは指を人差し指、中指、薬指、小指の四本を立てる。

その後、立てる指を人差し指のみにして言葉を続ける。


「一つ、私が施術した事は伏せてもらいます。これは他に望む者が居ても対処する考えは基本無いからです。皆さんの感じからして施術望む者は際限が無さそうですから確約してもらいます」


そう言ってフロレアールは中指を追加で立てる。


「二つ、施術後のクレームは受け付けません。施術後は望み通りに髪が生え揃い、腰痛は消え失せ、痔主様からも解放されます。ですが、これ迄と同じ生活を続ければいずれは同じ症状が現れます。治療はあくまでも施術時点における対処療法であり、恒久的なモノでは無いことを理解し同意して下さい」


そして、フロレアールは薬指を追加で立てる。


「三つ、の施術には対価を頂きます。招聘に応じると決めた時点でした約束は国王陛下と宰相殿の腰と痔の治療のみでした。ですが御二方の髪の再生、加えて騎士殿の諸々の治療まで望まれるのであれば、後ろ盾になって頂くのとはとは別にそれ相応の対価を求めます。正直申しますと後ろ盾になって頂けるのは有難い話なのですが、その気になれば神殿や教会程度なら滅ぼす事は然程さほど難しい事では無いと考えてます。ですが私は別に人類悪に成りたい訳でも無いので、ただ単に事を荒立てずに穏便に生きる為に後ろ盾の提案をお受けしようと考えた迄ですので悪しからず」


そして最後の小指を追加で立ててフロレアールは言い放つ。


「そして最後の条件です。この様な封書を送ってくる身内の恥たる愚姉テルミドールを始末する許可を下さい」


そう言ってフロレアールはローブのポケットから取り出すフリをしてテルミドールからの封書を取り出すとハゲ禿げの前へと差し出す。


「どうぞ皆さま、ご自由にご堪能して下さい。先の姫様が強引な手に出たのもテルミドールが働き掛けたのでしょう。本当に愚かな姉で恥ずかし限りです」


そう言ってフロレアールはハゲ王らがテルミドールが記した手紙を堪能し終えるのを待って口を開く。



「既に家族として縁は切ったと考えておりましたが、この通り相手が絡んでくるとなれば消えて頂くしかないとの結論に至りました。私、悟ったんですよ。教会だろうが神殿だろうが何人なんぴとであれ、私に楯突いて私の安寧を害するモノはこの世から消えてもらえばいいって事に…。そうです、我慢は心身にとって良い事は何一つ無いのです。それと髪にも良くないそうですから皆さんも気を付けて下さいね。話を戻しますがくだんの手紙の差出人は姫直属の騎士で王族近衛所属の騎士と記されていました。ですので一応申し入れます。愚かな騎士が一人消えた程度なら王国としては、そこ迄の痛手には成りませんよね?だから消しても構いませんよね?」


フロレアールはニコニコしながら、害するなら神殿や教会を消すと宣言した上で、髪の毛の再生を餌に実姉テルミドールを消す許可を寄越せとハゲ王らへと迫るのだった。

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