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86 謀(はかりごと)

ご愛読ありがとうございます。

拙い文章ですが、面白いと思って頂けましたら“ブックマーク”や“いいね”、“感想”等にて応援頂けると幸いです。

これらの応援は執筆に際しての大変励みなりますので宜しくお願いします。

カテジナ達が禁断の腐百合などと化してく中、フロレアールは王城の中で一人ティータイムにも飽き始めていた。

出された茶や菓子は遠慮する事無く口に運んでおり、ティーポットは既に四回改められており、対応している侍女らは菓子を含めて小柄なフロレアールの体のどこに収められているのかと驚愕しているのであった。

一方のフロレアールは自身に浄化を一定の間隔で施している事から、お花を摘みに行く必要さえ無く、ましてや太ることすら無い為とから、その気になれば文字通り無限に食べ続ける事も不可能では無かった。

そして五回目のティーポットが空になった頃、ようやく拝謁の時がおとずれる。

ヴィーチェが再びエスコート役を務めるとのことで、拝謁場所となる王族用の応接室へと向かうのであった。


応接室の前まで辿り着いたフロレアールは探知で確かめると七人が在していることが観てとれた。

そして応接室に隣接する右隣の部屋に四名、左隣の部屋には七名が在している事から、万が一の有事に備えての近衛又は衛兵が待機してるものと考えられた。

そして気になる反応が一つ、応接室の右手奥に緑と赤が入り交じったこれ迄に見たことが無い反応があり、恐らくはフロレアールが実姉テルミドールとおぼしきモノが見て取れるのだった

部屋に入る前にフロレアールはヴィーチェへと尋ねる。


「ヴィーチェ殿、入室の直前で申し訳無いのです。確認なのですがマジックバックはお預けした方がよろしいでしょうか?」


フロレアールは前もって白メイスは収納を済ませていたが、国王との拝謁に際して世間一般の常識である収納用魔道具であるマジックバックの携行について尋ねる。


「武器は既にしまわれている様ですので、マジックバックはそのままま携行して頂いて構いませんよ。但し、収納から何か取り出す際には事前に申し出て下さい。申告無しにジックバックに触れ何かを取り出そうとする素振そぶりを見せた場合は近くの者が止めに動きますので、ご留意下さい。ご希望されるならお預かりするのもやぶさかではありませんのでお申し付けください」

「分かりました。それではマジックバックは携行した状態のままで入室させて貰います」

「承知しました。尤も(もっと)もマジックバックから武器を取り出して襲い掛かるよりも魔術攻撃の方が早いので魔術に対する警戒の方が高くなっております。呉々(くれぐれ)も腕を陛下に向けるなど魔術行使の兆候と受け取られ兼ねない行為はお控え下さい」

「ご忠告ありがとうございます。そちらにも気を付けさせてもらいます。れでは皆様をお待たせするのも失礼でしょうからお願いできますか?」


従属状態のヴィーチェから拝謁に関する注意点と警備方針の情報を得たフロレアールは入室を促す。


「了解しました。貴殿は呼ばれるまでこのままお待ちください」


ヴィーチェが扉をノックして唱える。


紅華べにばなのフロレアール殿をお連れ致しました」


すると僅かに遅れて室内側から扉が観音開きに開かれる。

フロレアールは警戒すると伴に気を引き締める。


「フロレアール殿、どうぞお進み下さい」


そう言ってヴィーチェが入室を促すに併せて右へ一歩ズレて前へと歩み出す。

それに従いフロレアールは応接室内へと移動したのだった。


応接室内には入口に鎧を身に纏った兵士が二人、そして同じ出で立ちの者が左奥にある扉の前に一名、正面奥に30代後半頃の精悍な騎士風の漢が一名、右奥の扉の近くに若い男女が各一人、その女のかたわらに既視感のある中性的な赤髪の騎士風の者が佇んでいる。

フロレアールは何事も無かった顔で実姉テルミドールを無視し、ヴィーチェに付き従い奥へと進み、ソファーとテーブルが配されてた所謂いわゆる応接セットのそばまで進む。


「そのままお待ちください」


ヴィーチェがそう言ってフロレアールの右後方へと下がる。

れに併せるかの様に左の部屋に続く扉が開くと、禿げたオッサンが入ってきた。

その予想外のビジュアルの登場にフロレアールは何とか耐える事に成功する。

の禿げたオッサンは、フロレアールが座るであろう席の対面のソファーの後ろ角に佇み、逆側の角には先の騎士風の男が控えていた。

禿げたオッサンは、艶やかに光る頭頂の影響で初見は年齢が高く感じられたが、その肌ツヤや身に纏う雰囲気などから騎士風の男と同じ程の年齢であると見受けられた事から認識を改める。

そんな禿げの観察を終えた頃、禿げが登場した扉から荘厳な雰囲気を纏った男、それに続いて落ち着いた雰囲気と美しさを兼ね備えた妙齢の淑女が入ってくる。

騎士風の男や禿げと然程さほどの年齢差は感じない二人ではあった。

淑女に至ってはパッと見の年齢は三十歳前後とも取れるが、フロレアールの魔術により強化された識別能力が施された化粧越しに見え隠れする小さなシワや顕になってる手指や首や胸元の状態から正確な年齢を推察させる。

だが、それよりも国王とおぼしき荘厳な男を目にした瞬間、フロレアールは己の目を疑うのだった。

何故ならば男はズラを被っていたのである。

フロレアールの探知はレーダー的に位置座標を点として示すものに加え、視界内にある対象の輪郭に沿って反応色を映し出すものの二種類がある。

そして今、部屋に入ってきた男の頭頂部を示す輪郭が頭頂のかつらおぼしきモノの下側に描かれていたのであった。

フロレアールは主意識に最大の認知加速を施すと目線を騎士風の男の頭頂部へ向け探知輪郭を確認する。

騎士風の男は間違いなく地毛と思われ、の頭部にある髪の毛に沿って探知反応色が現れている。

そして先のハゲを確認してものツルっとした頭頂とその下から生えてる髪の毛の輪郭に沿って探知反応色が現れていた。

そしてフロレアールは認知加速を最大にしたまま、改めて国王とおぼしき男を眺めて、彼が間違いなくハゲズラ王である事を認識する。

それに対して動揺が表に現れぬ様、そして間違っても失笑せぬ為に、フロレアールは認知加速を最大に体感速度を極限まで引き伸ばし、のビジュアルに自身を慣れさせ、激減したSAN値の回復を図る。

謀略の禿げズラーへの過剰反応を乗り越えたフロレアールは主意識の認知加速を解除する。

そんなの彼女の精神はある種の悟りを開いた境地に達していたのだった。

そう、れは髪の毛なんぞタダの飾りという博愛の精神であった。


そんなフロレアールの内なる激戦は他者に知られることもなく、ズラ王とそのきさきおぼしき淑女が禿げと騎士風の男が後ろに控えるソファーの前へと移動し終える。

そしてズラ王が口を開く。


紅華べにばなのフロレアール殿、初めて御目に掛かる。余がエヴィエオードスである。この度は我が招きに応じて貰えたこと嬉しく思う。また、我が領地チェーネを救い、その発展にも寄与した事、重ねて礼を言わせてもらう。本日は王としての立場では無く私的な賓客として其方そなたを招いておる。完全な無礼講とまではいかんが気を楽にするが良い」


ヅラ王ことエヴィエオードスの口上を終えた事を受けてフロレアールが挨拶を返す。


「お初にお目にかかります。わたくし、紅華べにばなの二つ名を冠しておりますA級ランク冒険者のフロレアールと申します。エヴィエオードス陛下、この度はお招き頂き感謝申し上げます。また、登城が遅れた事、お詫び申し上げます」


フロレアールは簡単な自己紹介に併せて登城が遅れた事に関して謝罪を入れる。


「なぁに気にする必要は無い。逆に本日は無理言ってそなたをだいぶ待たせてしまった。さぁ、立ち話はなんだ、フロレアール殿も遠慮することは無い。腰を掛けてくれ」


そう言ってエヴィエオードスと隣に佇む淑女がソファーへと腰を掛ける。

フロレアールはズラ王らがソファーへと腰を掛け終えるのを確認してから、自らもズラ王の促しに従ってソファーへと腰掛ける。


れでは改めて紹介させてもらう。隣に居るのが我が最愛の人たる王妃エクアトーラだ」


そう紹介された王妃エクアトーラはフロレアールの顔や胸元を一目ひとめした後、ほんの一瞬“クワッ”と眼力が増すが直ぐ様元の温和な表情へと戻り挨拶をする。


「フロレアール様、初めまして。王妃のエクアトーラと申します。以後お見知り置きくださいませ。それと…後程、私的にお伺いしたい事が出来ましたので、その折には宜しくお願いしますね」

「しょ、承知しました」

「あら、それは良かったわ。断られたらどうしようかと心配しちゃったわ。それじゃあ後でお願いね」


ニコニコしながら王妃エクアトーラから謎のプレッシャーが放たれ、その口から断る事が許されない“後でツラ貸せや”との宣言が放たれる。

その謎のプレッシャーにフロレアールは思わず了解の返事をしてしまうのだった。


「フロレアール殿、エクアが無理を言ったみたいで申し訳ないな。後程話を聞いてやってくれ。れでは次いでワシの右後方に控えておるのが宰相のナヴェート、そしてエクアの左後方に控えるのが我が騎士ヴォーエフである」


ヅラ王からの紹介を受けて禿げこと宰相のナヴェートが頭を下げる。


「紹介に預かりました宰相のナヴェートと申します。この度は我が苦しみを解消頂けるとの事、感謝申し上げます」


そう、禿げがズラ王との謁見に立ち会っているのは痔主様からの一刻も早く脱する為であった。


「さて、残すは我が息子達になる。お前たちこちらに来て挨拶なさい」

そう促され言われて部屋の右奥に佇んでいたフロレアールとさして変わらぬ年齢と思われる男女が近付き、王直属騎士ヴォーエフのかたわらまで来て立ち止まる。

そしてテルミドールと思しき中性的な騎士風の者がその後に控える。


ずはフロレアールよりも年下に見える男の子と呼べる少年が一歩前へ出る。

フロレアールを見つめる目はキラキラと輝いておりその頬は薄らと紅くなっている。


「フ、まだロレアール様、御目に掛かれて光栄です。第二王子のヴォイドヴランと申します。貴女あなたの逸話は伺っております。そ、そのイビルボアを一撃の元に屠り二つ名の元となった紅華べになさばなの話を伺いたいです。そしてスタンピートの折にお見せになったという白き大翼との羽根により数多の魔獣共を屠ったと云うのは本当の話ですか!?宜しければその時の話もお聞かせ下さい!!」


どうやらこの第二王子のヴォイドヴラン君はチェーネの小さい英雄に興味がある御様子で英雄とのモノに強い憧れを抱いている様である。

そんな彼をヅラ王がやんわりと戒める。


「これヴォイド、お客様に失礼であろう。余は挨拶をせよと申したのだ。個人的な頼み事は後に改めてするがよい」

「ち、父上、そ、その失礼しました…」


ヅラ王の注意に慌てて謝罪し、ヴォイド君は見るからにションボリして一歩後ろへと下がる。

どうやら彼の発言時間はもう残されてないようである。


「フロレアール殿、失礼した。第二王子のヴォイドヴランは未だ成人を迎えておらんのでな。勘弁してやってくれ」

「いえ、構いませんよ。機会があれば話を聞かせる程度の事であればやぶさかではありませんので」


フロレアールがヅラ王の言葉に社交辞令として応えると未だ幼さが残るヴォイド君は言葉を素直に受け取った様で再び目を輝かけてフロレアールに熱い眼差しを向けるのであった。

そんなヴォイド君を皆が生暖かい目で眺めているとフロレアールより僅かに年上と思しき女性が一歩前へ出てスカートの摘み上げながら挨拶してくる。


「フロレアール様、お初にお目にかかります。わたくし第二王女のメローネと申します。そしてわたくしの後ろに控えるのが我が騎士テル」

「メローネ、そこまでだ!」


メローネが自身の騎士であるフロレアールの実姉テルミドールを紹介しようとした矢先にヅラ王こと国王エヴィエオードスが厳しい表情を浮かべて止めに入り続けて叱責する。


「お前は既に成人して月日も経っているのに何を考えておるのだ。先のヴォイドへの話を聞いておらなんだか?お前個人の騎士なんぞの紹介は不要だ!全く…ワシの顔に泥を塗りおって…。もう良い二人とも下がれ。改めて声を掛けるまでは隣室に控えておるがよい」


自身の話を途中で遮られ、叱責の後に退室を命ぜられたメローネ王女は“キッ”と退一瞬フロレアールを睨むが直ぐに表情を戻し頭を下げる。


「フロレアール様、父上、大変失礼しました。お許しください。それでは命に従い退室致します。失礼しました」


そう言って一礼するとメローネは一歩後ろへ下がるとヴォイド君とテルミドールを連れてヅラ王たちが控えていた部屋へと移るのだった。

メローネらが退室したのを確かめてからヅラ王が改めて口を開く。


「フロレアール殿、申し訳ない。愚かな娘だ、許してやってくれ。貴殿とかの騎士テルミドールとの関係はバースニップからの手紙で知らされておったのだ。だからこそ何らかしらのはかりごとがあるかもと注意してはおったのだ…。こうも強引な手に出てくるとは正直言って想定外だった…」

「あっ…いえ、そのぉ…逆にお気遣い頂いてた様で却って申し訳ありません」


ヅラ王からの謝罪に却って身内の恥が申し訳なくなりフロレアールは返す言葉で謝罪する。

メローネとテルミドール企ての影響で重くなってしまった部屋の空気を無視するかの様に宰相の禿げことナヴェートが口を開く。


「陛下、フロレアール殿もこう仰られております。ここは残りの者の紹介を早く済ませて本題、いえ、我らが宿願の成就を!」


禿げ宰相のその言葉に王妃エクアトーラの目が鋭くなり口を開く。


「ヴェート、アナタが言う宿願成就とは何の事ですか?オードスと二人で一体何をコソコソとはかりごと

くわだてているのですか?今ここでハッキリと白状なさい!そもそも今日登城してきたフロレアール様を強引に王城へと引きいれ、尚且つ足止めまでして、急遽きゅうきょ謁見えっけんの場を設けるなんて変だと思っていたところです。二人ともさっさと白状しなさい!」


エクアトーラからの激しい問に禿げズラーの二人は目を泳がせ答えあぐねていると予想外の人物が口を開く。

れはフロレアールの後ろに佇んでいたヴィーチェであった。

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