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84 旅路:至オーグヴァイネ

本編に魔物を屠る残虐な描写が含まれております。

該当の描写が苦手な方は該当箇所を読み飛ばすか本編の閲覧は御遠慮下さい。


ご愛読ありがとうございます。

拙い文章ですが、面白いと思って頂けましたら“ブックマーク”や“いいね”、“感想”等にて応援頂けると幸いです。

フロレアール達が王都オーグヴァイネを目指し、チェーネを旅立ってからの日々はカテジナ、カルチナ、キャローナの三名にとっては過酷なものであった。

当初は徒歩移動を行いながらの極超短波パッシブ方式の探知習得に励むこととなったのである。

三人は多少の時間差はあったが三日目には何とか習得に至る。

その方法は停止時間をフロレアールよりも長いものとすることで擬似的に再現したのであった。

そしてここからが真に過酷な日々が始まる。

それは以前の山篭りの修行においては魔獣や魔物モンスターとの遭遇や襲撃といった機会イベントが発生することは一切無かった。

だが、フロレアールに加えて三人が探知をパッシブ方式へと切り替え終えた、その日の夜に初体験となる魔物モンスターからの襲撃を受けたのである。


その日も王都を目指す為、街道に沿って徒歩で北上しており、チェーネとフォゲーラとの中間地点である大小の森が点在する草原地帯で一晩を過ごす事となった。

ちなみにフォゲーラとは以前にチェーネ救援?に駆け付けた騎士団が駐屯している地方中核都市である。

以前の山篭りの修行はフロレアール謹製の宿泊拠点も有った事から山での別荘生活との表現に近いモノであった為、王都への旅路は野営の経験が浅いフロレアールやカルチナ、キャローナが経験を積む意味も兼ねて宿泊拠点を使わないで過ごしていた。

本日の野営場所は基本に習って街道から少し離れた小さな森の中、今日もフロレアールが腕を振るった夕餉を満喫していた。

フィアースボアの肉を使ったグリルや野菜炒め、そしてトマトベースのモツ煮風スープに白飯を堪能し終えた後に襲撃は起きる。

フロレアールは迫りつつあった魔物モンスターの反応には気付いていたが、カテジナたち三人の反応を確認する為にあええて無視をしていた。

だが、三人は探知で魔獣もしくは魔物モンスターが迫りつつ事は観ているはずなのに、特に何の反応も示さなかったのである。

彼女たちは探知結果を視界の中に収めて眺めてはいたものの意識しておらず、実用としては全く活かせていなかったのである。

その残念さにフロレアールは落胆し、三人に経験を積ませる事を決意する。


「皆さん、私は今から少し此処ここを離れます。皆さんはこの場に留まって野営を続けて下さい。それと無闇に攻撃魔術を使って環境破壊はしないこと。いいですね?」


そう命じてと三人からの返事を待たずにフロレアールの姿は掻き消える。

カテジナたちフロレアールの口調が冷凍庫様チックだった事からご機嫌斜めと察するが、突然の事にその不機嫌の原因が判らず三人は互いに顔を見交わす。

とその瞬間に背後から魔物モンスターの不意打ちを受けたのだった。


“ガサッ”との音に併せて飛び掛って来たのは魔物モンスターの中でも狼人と称されるウェアウルフとその上位種たるライカンスロープその混成の群れであった。

因みに人狼と狼人は似て非なるもので、人狼は獣人族と称される亜人種の内の一種族であり、モフ耳とモフ尻尾を有する皆が大好きケモ耳っ娘が存在する種族である。

なお、亜人種たる獣人と人間ヒューマンは妊娠率こそ低いものの交配可能であるが、魔物モンスターたる狼人との交配は不可能である。

その魔物モンスターたる狼人は狼そのモノの頭部を有し、全身を体毛が覆う、二足歩行する獣の人型魔物であり、俊敏な動きと屈強なからだに宿るパワーから単独でもウェアウルフはランクD上位、ライカンスロープはランクC上位に分類される。

双方共に強靭なあごと鋭い牙による噛み付き、手や足の指に備わる鋭爪えいそうにり斬撃を見舞ってくる。

その牙や爪は金属製防具でも薄手のものならば容易く貫き切断するほどの威力をほこる。

更にライカンスローに至っては、ウェアウルフを上回る身体能力と全身を覆う銀色みがかった強靭な体毛に守られており、その毛は通常武器の斬撃に対してアラミド繊維が如く高い耐性を備えていた。

そしてカテジナたちを襲った群れは手に棍棒や冒険者の遺品とおぼしき金属製のメイスや槌を手にしており、上位種のライカンスロープに至っては鉄製盾までをも手にしていたのだった。

魔物モンスターの群れはウェアウルフが八体、ライカンスロープが一体との構成で一般的な普通冒険者パーティーであれば絶望的な状況である。

奇襲に際して初撃の回避に成功したのはカテジナのみであり、カルチナとキャローナ両名は不意の一撃を無防備に受けてしまっていた。

カテジナが咄嗟とっさの回避に成功したのも第六感とも言える“キュルルリィン!!”とのフレクサトーンチックな幻聴により襲撃の数瞬前に危険を察知出来た為であった。

カルチナは背後よりウェアウルフからの噛み付きを首に受け、そのまま森の奥へと連れ去られてしまう。

そしてキャローナはその背に棍棒による強打を浴び派手に吹き飛ばされ地面を転がって停止したのだった。


カテジナは収納に収めていた紅砡こうぎょくのショートソードを取り出し構えつつ叫ぶ。


魔物モンスターの襲撃ですわ!キャローナ、無事なら直ぐに立っちなさい!」


カテジナの叫びを受けてキャローナはヨロヨロと立ち上がる。


「いつつ、危うく衝撃で晩御飯が口から吹リリースされるとこでした…」


背後からの一撃は喰らいはしたキャローナだが不変性により自身の身体も身に纏うメイド服も無傷ではあった。

しかし、直接的なダメージは無かったが吹き飛ばされる程の衝撃を受けた身体は、全身的に軽い痺れを覚えていた。


それの仕留めた筈の獲物が立ち上がる異様さに襲撃者らのボスでるライカンスロープは警戒を顕にして“グルルゥゥゥ”との低い唸り声を上げる。

それに反応して手下のウェアウルフらは距離を保ちつつカテジナとキャローナを包囲するのだった。


フロレアールから攻撃魔術の使用を禁じられたキャローナも収納から先端に赤珠を有する白杖を取り出して身構える。

そこでカルチナが付近にに見当たらないことに気付く。


「…カルチナは?」

「ウェアウルフにお持ち帰りされて森の奥ですわ…。わたくしもですが貴女あなたも探知を使うだけで認識が疎かでしたわね…」


カテジナからの指摘に探知反応からカルチナと思しき反応を確認してキャローナは安堵する。


「…確かに森の奥にカルチナらしき反応があるから無事みたいで…」

「グルルァァァーー!!」


キャローナの言葉は、ライカンスロープが激しい雄叫びにより途中で遮られる。

それに併せてキャローナにウェアウルフが四体、カテジナにはウェアウルフが三体とライカンスロープが襲いかかったのだった。



場面は変わり奇襲の初撃により送り狼ならぬ襲い狼にお持ち帰りされたカルチナは心の底から沸き立つ恐怖に完全にすくんでいた。

それはスタンピードの折にフィアースボアによりもたらされ、否応無しに味わってしまった死への恐れである。

カルチナにはその瞬間の記憶は残ってはいなかった。

だが彼女の魂には深くその事実が刻み込まれていたのである。

カルチナを連れ去ったウェアウルフは獲物を森の奥へと引きずり込んだ事から移動を止める。

移動を止め空気の流れが無くなった事からカルチナはカウェアウルフから放たれる獣臭を嗅ぎ取ってしまう。

それはスタンピードの救助活動の最中に感じていた現場に充満していたフィアースボアの体臭に類似していた。

その獣臭が引き金となり、彼女の身体はガクガクと大きく震え、鼓動は激しく脈打ち、呼吸は激しく早くなり、意図せずに失禁してしまう。

ガチガチと鳴り響く歯音に誘発されるように激しい耳鳴りと吐き気に襲われるとカルチナの意識は遠のき始めてしまうのだった。


カルチナを連れ去ったウェアウルフは初めは困惑していた。

必殺とも言える後ろ首への噛み付き、そして獲物を連れ去る前には自身が直立するのに併せて自身の首を激しく振り回していた。

その事で本来ならば獲物は自身の首を支点として、自身の振り回される身体の重さに耐え切れずに頚椎損傷により虫の息へと至っている筈であった。

このウェアウルフも過去に人間ヒューマンを仕留めた経験を有しており、他の獲物も数多く仕留めてきた経験からもカルチナの異常さには気が付いていた。

だが、獲物が恐怖に振るえ無様に失禁した事を察した事から杞憂であったと思ったその瞬間、突如として自身の喉が潰されたのであった。

ウェアウルフの首は後頭部から肩へと直線的に伸びており人間ヒューマンの成年男子の大腿だいたいよりも太く逞しい筋肉で覆われている。

にも関わらず瞬時に喉を潰され、尚且つ首の一部をえぐり取られたのである。

その傷からウェアウルフは獲物を咥え続ける事が叶わず、その口から獲物を落としてしまう。

喉を抉られ気管を損傷した為にままならぬ呼吸の中でウェアウルフが目にしたモノは先まで獲物だと思い込んでいた人間ヒューマンめすだった。

そのめすは、頭から返り血を浴び真っ赤に濡れそぼっており、その左手には血にまみれた自身の体毛と同じ色をしたモノを大量に握りしめている。

その雌が目を見開き吠える。


「よくも獣クセェ臭いを嗅がせやがったな!?それに人の首筋をダラダラと汚ぇ唾液塗れにしやがったな?それが許されるのは嫁のキャローナだけなんだよ!テメェ楽に死ねると思うなよ!?」


そこに居たのは普段の天然さんなカルチナが鳴りを潜めたマッドなカルチナであった。

説明せねばならない。

普段は天然温厚でパーティーのマスコット的な存在に近い彼女ではあったが隠し持った一面を有していた。

強いて例えるならば、その生態はアライグマに近く、普段はその愛くるしい見た目や動作に隠されているが、その実かなり凶暴な一面を隠し持ち合わせている。

カルチナも普段は事ある毎に“ふぇふぇ”と情けない声を上げ、天然ドジっ子の残念さんではあるが、相反する性質として主に夜の営み時にキャローナ相手にのみ垣間見せるドS気質なカルチナ、そうエスカル(仮称)が存在していた。

そして今宵、天然成分99%残りの1%がドSで出来ていた主人格が堕ちた事でエスカル(仮称)が表舞台へと登場したのだった。


既に致命の一撃により喉や首の一部までをも抉り取られたウェアウルフは呼吸もままならず地に膝を着いていた。


「チッ!もうくたばるとこかよ…おい、終いにするのはちと早すぎだろぅ?早いのは何かと嫌われるぜ?」


そう言ってエスカル(仮称)がウェアウルフの元へと不用心に歩み寄る。

そしてウェアウルフへと近付いた瞬間、最後の力を振り絞りウェアウルフが左腕の鋭爪を逆袈裟に振るう。

だが、エスカル(仮称)は右足でその一撃を受け止めると、そのまま逆方向へと蹴り込み、ウェアウルフの左肘をへし折るのだった。

そして戻した足でウェアウルフの股間を踏み抜き、所謂いわゆる男性機の竿と二つの玉を容赦なく潰すのであった。

だが、エスカル(仮称)の怒りは収まらない。

憐れなウェアウルフの惨劇の幕は開いたばかりであった。

エスカル(仮称)は失神した瀕死のウェアウルフを飛翔魔術で宙に浮かせ、その躰を拘束すると中級上位治療魔術グレーターヒールを施し欠損部位を復元し傷を癒す。

次いで水魔術で口と鼻腔を覆い強制的に意識の覚醒を促す。

ウェアウルフはその生涯に感じた事が無かった鼻腔のツンとした痛み水が肺へと侵入した事によるむせせ返りにより意識を取り戻す。

だが、身動き一つ取ることすら叶わぬまま魔術による水責めによって数分間にわたる苦痛を味合わされた後に、その意識は闇の底へと沈むのだった。

そしてエスカル(仮称)は最後の実験に移る。

以前にフロレアールから指摘されていた事の確認であった。

それはフロレアールの二つ名である紅華の元となった逸話、即ち打撃対象の粉砕である。

エスカル(仮称)は収納から先端に金珠を有する黒杖を取り出すと宙に浮くウェアウルフの胴体目掛けて野球のフルスイングが如く黒杖を叩きつける。

黒杖の先端にある金珠が当たる直前にウェアウルフを宙で拘束していた飛翔魔術を解き、その瞬間が訪れる。

“ドバァン!”との音と共に宙に真っ紅な華が咲いたのだった。


「チッ、きたねぇ花火だ…」


その華が霧散するのを眺めてエスカル(仮称)は捨て台詞を吐き、自身に浄化を施すとその場を後にする。

そして愛しのキャローナの元へと歩んでいると主人格である天然ドジっ子のカルチナの意識が浮上してくると口から“ふええぇぇぇ~”との情けない叫び声が放たれる。

カルチナは先のエスカル(仮称)のドS行為を鮮明に記憶しており自らの行いに今更戸惑い始めたのである。

だが、カルチナ自身は気付いていなかったが、自身の魂に刻まれていた魔獣や魔物モンスターに対する恐怖トラウマは綺麗に払拭されていたのであった。



エスカル(仮称)の活躍?もあってカルチナが“ふぇふぇ”一人叫んでいる頃、カテジナとキャローナは未だに一匹のウェアウルフすら倒せずにいた 。

彼女達はフロレアールとの訓練では圧倒的な実力差がある相手との1対1、しくはフロレアールに対して三人掛りで応戦するとの経験ばかりを積んでいた為、自身が複数を相手取っての戦闘に関しては初体験であった。

加えて魔物モンスターとは云え人型二足歩行の狼人を殺傷することに僅かながらの忌避感を抱いており、結果攻撃する事無く専守防衛を務めてしまっていた。

冒険者として数年のキャリアを積んでいたカテジナではあったが、以前はタンクとアタッカー、後衛の仲間が居たパーティーで自身はヒーラー兼後衛との立場であった為、直接的な戦闘の経験は皆無であった。

また、キャローナに関しては恋愛対象や性癖が特殊なだけの腹黒町娘であり、冒険者ギルド職員として培った魔獣や魔物モンスターとの接点は、討伐確認でそれらの遺骸を確認する程度であった。

そんな二人に対して突如として上空から檄が飛んでくる。


「お二人とも何時いつまで遊んでいるつもりですか?カルチナは一人で片付け終えたみたいですよ?これ以上無様な姿を晒し続けるのなら私自ら明日以降は特別じごくの訓練を施して差し上げます。いいですね?」


そのフロレアールからの檄に真っ先に反応したのはライカンスロープであった。

宙に浮き自分らが取り囲んでいる獲物のメス共に何かを言い放つ白く小さな人間ヒューマンの雌ガキ。

そのモノを見た瞬間に本能が“アレは真のバケモノだ逃げろ!!”と悲鳴を上げる。

ウェアウルフから上位種たるライカンスロープへと進化を果たした彼は幾度となく修羅場を乗り越え、命を賭した戦いにも勝利し今日まで生き延びてきていた。

その中で培った本能が全力で逃走を訴えたのである。


「アオォーン」


ライカンスロープは迷うこと無く手下のウェアウルフらへ撤退の指示を出す。

取り囲んでも仕留めるどころか未だ手傷も負わせられない獲物は捨て置いて自身と手下の生存を優先させたのである。

それを受けて彼らは夫々(それぞれ)が別方向へと散開するように逃走を図るが、全員が見えない壁に阻まれて逃走に失敗してしまう。

すると森の奥からカルチナが何も無かったかの様に身奇麗な姿で現れる。

そこで彼らは理解する。

今宵、自分たちは狩猟者では無く、逆に罠へと誘い込まれた獲物であった事を。


カルチナの姿を直接の視界に収めたフロレアールが口を開く。


「カルチナさん、よくりました。残ってる獲物の内から好きに二匹片付けなさい。カテジナさん、キャローナさんの二人は各々三体です。おりなさい」


その命を受けて真っ先に動いたのはカルチナであった。

瞬時に黒杖を右手に、爆散ショートソードを左手に取り出すと最寄りにいたライカンスロープへと急襲し黒杖の一振でその頭を粉砕し、その光景を呆然と見つめるウェアウルフの一体へと爆散ショートソードを放ち爆殺したのである。


「あはは、もう終わっちゃった…。やっぱり汚い花火だよね…。あれ?何してるの?キャロちゃんも早くりなよ?」


そう言って瞬殺でノルマを達したカルチナが残りのウェアウルフを無視してキャローナの元へと歩み寄る。


「ヒッ!貴女あなた本当にカルチナなの?」


キャローナは自身が忌避を感じている人型二足歩行の魔物モンスターあやめる行為を何の躊躇ためらいもなく容易たやすくこなし、尚且つ微笑ほほえみさえも覗かせたカルチナに恐怖を覚えて思わず後ずさる。


「どうしたのキャロちゃん?何で遠ざかるの?…あっ、分かった!キャロちゃん魔物モンスターを自分でるの初めてだから怖いのね。仕方がないなぁ…」


自身に向けられた畏怖の念を自身の天然さんスキルで魔物モンスター討伐の初体験ロストバージンに恐れを抱いているとミスリードするカルチナ。


「キャロちゃん大丈夫だよ。何も怖い事なんてないから…。エッチの初体験と一緒だよ。一回済ませちゃえばその後は怖い事なんて何もないから」


そう言い終えると彼女はフロレアールへと申し出る。


「黒百合様、キャロちゃんが初体験怖がってるので最初のだけ手伝っても良いですか?その後はキャロちゃん一人でちゃんとらせますから…」

「分かったわ、最初だけよ。後はキャローナ一人にらせなさいよ」


了解を得たカルチナはキャローナの背後に廻るとキャローナの左右の腕に自身の両の腕を重ねる。

そして群れのボスたるライカンスロープや仲間のウェアウルフを容易く屠る様を目にして抗うことをめたウェアウルフの元へと歩み寄る。

カルチナは白杖を手にするキャローナの腕をゆっくりと頭上へと掲げさせる。


「いやぁ、カルチナ、待って。お願い、少し待ってよ…」

「ダァメ、こういうのはさっさと済ませちゃおうね」


キャローナは目に涙を浮かべて決意が付かぬままの初体験に猶予を求める。

だが、既に初体験を済ませ魂のトラウマをも乗り越えたカルチナは容赦なく、その頭上に掲げられた腕を振り下ろさせる。


“ゴシャッ”との音を立てて白杖の一撃により頭部諸共胸の中ほどまで潰されたウェアウルフの遺骸は、グラりと傾きユックリと地面へと倒れ伏す。


「アハ、また一つキャロちゃんの初めて奪っちゃったね。それと初めての共同作業もしちゃたね」

「待ってって言ったのに…酷いよ…。それにこんな共同作業が初めてなんて嫌すぎるよ…」


そう言ってメソメソし始めたキャローナをカルチナは掴んでいた彼女の腕を離して改めて抱きしめる。


「キャロちゃんメソメソしないの。まだ二つ残ってるよ。後は一人でも出来るよね?頑張って!」


そう言ってカルチナはキャローナかる離れて彼女を送り出す。

少しの間メソメソとしていたキャローナが独りごちた後に叫ぶ。


「いいわよ、るわよ。ってるわよ…。うわぁーん、こんちくしょーー!」


様々な想いが込められた涙を零しつつキャローナは叫びながら残るノルマを達するべくウェアウルフへと駆け出すのだった。


その様を横目にカテジナも覚悟を固める。

天然娘たるカルチナに遅れを取った事よりも己もカルチナから手取り足取りの手助けを受けるその局面を避けるべく心を奮い立たせる。

天然ドジっ子であるカルチナの天然スキルが炸裂すれば予想外のトラウマを負いかねない為であった。

その瞬間、“キュルルリィン!!”とのフレクサトーンチックな幻聴と共にテジナの脳裏に浮かんだ光景、それはキャローナの如くカルチナに後ろから腕を掴まれウェアウルフへと正面から近付きショートソードを振りあげようとする己の姿。

その瞬間、何故かカルチナがコケて自身が後ろから押されて倒されるというものであった。

倒れた際にウェアウルフは脳天をかち割られ絶命するも倒れた己の口のその先にはウェアウルフの股間にある汚らしいイキリ立った竿があるのだった。

その汚らし竿が無情にもお口にインしてしまったその瞬間に外傷により死したウェアウルフは脊髄反射にて口内へと大量の子種汁を放たれて否応無しにソレを味わう羽目になるとの内容であった。

そのビジョンを垣間見た次の瞬間、カルチナの視線が己へと向くのを感じ取る。


「ま、迷ってる暇はありませんわ!カテジナいきますわよ!」


口内射精の忌避感から込み上げてくるくる吐き気に耐えつつ、自身の第六感的現象を信じるとカテジナは決断する。

即座に擬似縮地をも使ってカルチナの視線から逃れるのに併せてターゲットへと接近する。

そして気合一閃、覚悟を決めたカテジナの袈裟斬りによりウェアウルフは殆ど手応えを感じること無く、容易く二つへと切断され、その直後に音速を超えた剣戟にて生じた衝撃波で二つに分かれた遺骸は吹き飛ばされる。

カルチナはビジョンで垣間見た光景を回避する為だけに残りのノルマを急ぎ達したのであった。


三人がノルマを終えるとフロレアールが舞い降りてくる。


「さて、皆さん反省すべき点は理解していますか?」


その問いに沈黙で返すことは愚策とカテジナが意を決して応える。


「三人とも探知反応の確認を疎かにしてましたわ。ただ探知を行使しているだけでは意味が無いのだと今回の件で痛感しましたの。それと魔獣と違って魔物モンスターを打ち倒す事への覚悟も足りていませんでしたわ」


その答えにキャローナは頷き肯定の意を表していたのだが、カルチナの反応は異なっていた。


「あっ!なるほど、言われてみれば探知は使ってるだけで意識して反応を確かめてなかったですね。今までは範囲内に魔獣も魔物モンスターの反応が全く無かったからすっかり忘れてました」


カルチナの一言にフロレアールは逡巡してから話し掛ける。


「それは貴女あなたたちの修行を終える前だったから私が近付けないようにしていました。今回は修行も終え新たな旅立ちを迎えたので、それを止めたのです。今後王都へと到着するまでの間にパッシブ式の探知の習熟、その反応の確認、そして魔物モンスター討伐にも慣れてもらいます」


こうしてカテジナ、カルチナ、キャローナは王都オーグヴァイネに到着するまでの間、幾度となく魔獣や魔物モンスターからの襲撃を受け経験を積むこととなる。

だが、その甲斐もあり王都オーグヴァイネに到着する頃には三人共に成長を遂げていたのであった。

今回は幕間の物語として魔物との戦闘とカルチナのトラウマ克服回となりました。

次話から新章たる王都編が始まります。

今後ともご愛読と応援をお願い致します。

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[良い点] エスカルゴ(仮称)さんが性癖に刺さる刺さる。 良いお嫁さんを持って幸せだね、キャローナさん。
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