82 プライスレス
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施設へと到着したフロレアール、バースニップ、クーヴァの三人はカテジナが事前に下した
命もあって何の問題も無く施設内へと案内された。
施設内の空気は故かピンク色ががっており、フロレアールを惚けて熱い視線を送る者、又はフロレアールを見つめた後にペアとなって身を寄せ合い軽いスキンシップから自分たちの世界に浸り始める者たちがではじめる。
フロレアールは“また変態が何かしたわね”と考えるが、自身と変態が目合う裸像をご開帳した挙句に百合薔薇の同志に託したとはつゆも思わず、住人蜂起の対応を優先させる。
施設内に居たサラシーンを初めとする教会関係者からイムテラ司祭とポティロン神官らの爆発事件首謀者(笑)やフロレアール襲撃計画に関する証言を得るに至り、その情報の活用については領主としてのバースニップに一任する。
その後は何故か興奮気味の教会関係者から詰め寄られ、自由恋愛の排斥やら襲撃計画の企てに加わった事への懺悔が始まった為、その場をカテジナに任せて自身は施設の正面奥に坐す大翼の御使い像を眺めて有る作業などを行うのであった。
こうして住人蜂起への対応に必要な証言を得たフロレアール達は教会へと飛翔を用いて向かったのである。
そして時はレンザの兄貴の演説が効果は抜群だ!との感じで士気が向上した真恋愛主義者たちが鬨のシュプレヒコールを再び声高々に唱え始めた場面へと移る。
フロレアールは眼下に広がる光景を確認した後に対処方法をバースニップへと提案する。
その為に、先ずは自分たちの周囲を覆う様に魔術障壁を展開し会話の妨げとなるシュプレヒコールを遮る。
「流石に煩かったから障壁で遮音したわ。さて、先ずは住人たちを鎮めないと話しが進まなさそうだから対処を試みるけど問題は無いかしら?」
「それは構わないのだのが…。念の為に確認するが物理的に静める訳じゃないよな?」
バースニップからの確認にフロレアールはジト目になって応える。
「物理的に沈めた方が手っ取り早そうだから領主様がお望みとあらば吝かでは無いですよ。何なら町ごと消し去りますが如何しましょうか?」
フロレアールからの冗談交じりの“なんなら喜んで物理的に対処する”との笑えない提案にバースニップは慌てて応える。
「いや、ホント勘弁してくれ。君を知った後だと冗談でも笑えない…。それに頼まれれば実行可能と考えてるのが真偽判定で分かるから心臓に悪すぎる…」
「それは変な確認をする方が悪いんですよ。で、どうしますか?」
「無事に鎮められるのなら頼む。それでどう動くんだ?」
「先ずは、カテジナ、バースニップ殿とクーヴァさんの飛翔を任せるわ。騒ぎが鎮まって合図をしたら私がいる所へ二人と一緒に降りてきて。それ迄はこの場で待機してて頂戴。私は一人で先の演説をしていた人物の方へ向かって、この騒ぎを鎮めてみるわ」
「承知しましたわ。フロレアール様、ご武運を」
そう言ってカテジナにバースニップたちを引渡し、フロレアールは真恋愛主義者たちの先頭で教会前にいるレンザの兄貴やボブ軍曹の上空へと移動するのであった。
フロレアールは、分割思考を意識して稼働させ、認識加速を全開にする。
次いで先の施設にて大翼の御使い像、その背に有する大翼をつぶさに観察しながら拵えた大翼を再現する為の羽根を自身の背に大翼を成す様に収納から一斉に出現させる。
そして自身と背にした大翼、身に付けているローブ等を含めて魔術によって光を帯びさせたのである。
かくしてチェーネの空に再び大翼を有する御使いが降臨したのである。
日が落ち帳に包まれ暗くなった空に突如として光が差す。
教会を包囲する真恋愛主義者たちが唱えていたシュプレヒコールはその光景に鳴り止む。
その者達を遠目に眺めていた群衆、そして衛兵までもが動きを止めて静まりかえる。
そしてフロレアールとの距離が比較的近く、その容姿を確かめた人々から“御使い様”との言葉が連呼され始め瞬く間に周囲へと伝播する。
だが、フロレアールから距離が離れている者たちは、白く光を帯びる人影とその背にある大翼は認識することは出来たが、残念ながらフロレアールの容姿を捉えるまでには至らない。
既に傾国の美貌で従属状態の者はご尊顔を一目拝もうと、そしてフロレアール本人を直に見たことが無い新たな住人たちは噂の御使い様とやらを拝んでみたいとの思いに駆られて動き始める。
群衆が一斉に教会に向けて動き始めた瞬間、上空に巨大なフロレアールの見姿が現れ、併せてフロレアールの声が周囲へと響き渡る。
それは魔術による投影と音声の増幅であった。
それは奇しくも神聖教国イオプシオンにおける国宝の一つとされる魔道具の効果と似通っていた。
使用には膨大なマナを要する為、イオプシオンにおいては盟主たる大教皇のみがその権威と力を示す事が許され、己が意を首都に住まう信徒へと伝える為にのみ使用が許される物であった。
そんな事を知る由もないフロレアールは知らずに教会、否、神聖教国イオプシオンに対しての禁忌を犯したのであった。
閑話休題
暗闇にくっきりと映し出された御使いたるフロレアールの姿に教会へ向けて歩みを進め掛けていた者たちの動きが止まる。
その様を探知で確認していたフロレアールは口を開く。
「親愛なるチェーネに住まう皆さん、どうか静まってください。先に起きた不幸な事故には見舞われました幸い怪我も無く私達は無事でした。皆さんがこうして蜂起に至った理由は施設に残られてたアナタ方の同士から聞き及んでおります。理由の一つである私の身を案じ憂いて頂いた事には感謝しますが、どうか落ち着いてください。そして、もう一つの理由である皆さんの恋愛思想への不当な弾圧、本来コレは決して許されるものでは有りません。ですが、皆さんがその胸に包み隠してきた哀しみをこの様な実力行使のと形で加害者へとぶつける事は決して好ましいものとは言えません。皆さんが心から求め、願う、恋愛とは思想が異なる者を力によってねじ伏せて手に入れるものなのですか?私は違うと考えます。それでは皆さんを不当に弾圧し続けてきた輩と何ら変わりないではありませんか。皆さんが真に自由な恋愛を望み、女性同士、男性同士、そして男女での恋愛など、その全てを認め合う者だとしたら、決して異なる恋愛思想を掲げる者を虐げてはならないのです。例え相手が単一の恋愛思想しか認めない者だとしても、その思想すら容認する事が重要なのです。それが叶えば、世の中から恋愛に関して不毛な争いや哀しみを生み出さずに済む筈なのです」
フロレアールの説法を耳にした者たちから急速にイムテラ司祭とポティロン神官を私刑に処するのだとの決意が霧散する。
フロレアールの説法を聞き、真恋愛思想者たる同志たちが感化され、中には涙する者が現れ始める様を目にしたレンザが呟く。
「これが若さか・・・」
その次の瞬間、ドガッンとの鈍く低い音が生じるのに併せてレンザの後頭部で土埃が舞い上がると彼は掲げられていた漢騎馬から前のめりに弾かれたように落下する。
それはレンザが背にしていた教会からの野球ボール大の石と呼ぶには大きい弾による土魔術での狙撃であった。
ドサッとの音を立ててレンザが受身などの身を守る素振りを一切見せずに地面へと衝突する。
その後頭部からは流血が見られ地面に血溜まりが描かれ徐々にその面積を広けてゆく。
レンザはピクピクと痙攣しており辛うじて生きている事は伺わせるが重症である事には間違い無かった。
こうして事態は再び動き始める。
漢騎馬となっていた施設警備隊員たちが教会へと振り向き次なる凶行に備える。
そして凶行を目にし、事態を把握した真恋愛主義者たちから悲鳴や怒声が上がる。
漢騎馬から僅かに離れた場所居たボブ軍曹が横たわるレンザの元へと即座に駆け付ける。
彼の状態を一目見て中級の治癒魔術が必要と即断し叫びをあげる。
「メディーック!メディーック!中級の治癒魔術を扱える者は居ないか!」
だが、教会に詰め寄っていた群衆は密集状態あり、例えボブ軍曹の叫びが聴こえる範囲内に中級治癒魔術が行使可能な者がいたとしも人々を掻き分けレンザの元へと辿り着くのは困難であることは明白であった。
フロレアールからの説法で一旦は鎮まった真恋愛主義者たちだったがレンザ対する教会側からの凶行により一気に殺気立つ。
「クソが!レンザの兄貴を殺り(や)やがった、許せねぇ!!」
「教会にいるヤツらを引きずり出して殺せ!」
「そうだ!!コレは恋愛思想の話じゃい!!単なる暴力、故意の殺人だ!!」
次々と上がる怒りの叫びに先とは異なるシュプレヒコールが唱えられる。
「殺せ!!殺せ!!殺せ!!」
その様を眺めていたフロレアールは音声を増幅させ言い放つ。
「御使いたる私が命じます。鎮まり落ち着きなさい」
フロレアールからの命令により、一瞬で起き掛けていた暴動が阻止される。
フロレアールは背にしていた大翼を収納し、投影で映し出されていた自身の巨大な身姿を消し去る。。
その次の瞬間には横たわるレンザの傍らに跪き、彼へと治癒魔術を施していた。
「これでもう大丈夫よ」
そう言い残すとフロレアールの姿は掻き消え、次の瞬間には教会の扉の前に現れる。
その扉は先のレンザ狙撃の際に犯人が僅かに開き、その隙間から土魔術を放った場所であった。
フロレアールには探知により扉を挟んだその正面奥に敵意を示す赤い人影を二つ捉えていた。
フロレアールはその赤い人影を見据えたまま、音声を増幅させてカテジナたちを呼び付ける。
「カテジナさん、バースニップ殿たちを連れて此方に来なさい」
フロレアールの命を受けて即座にカテジナはバースニップとクーヴァを連れてフロレアールの傍らへと降り立つ。
「フロレアール様、お待たせしました」
カテジナはそう言ってバースニップらを連れてきたことを報告する。
「さて、一応オーダーには応えたわよ。この奥にいる輩の馬鹿な行動のせいで予定外の負傷者は出たけど既に治療は終えたから命に別状はないわ。それで領主様は先の土魔術を踏まえて、どう処理するのか教えて貰えるかしら?」
フロレアールからの報告と問いを受けたバースニップは決断を下す。
「先の一件は明らかな殺人未遂だ。君が居なければ被害者は助からなかった可能性が高い。例え教会を包囲されていたとは云え、その凶行は君が群衆を鎮めた後の行為てあって、情状酌量の余地は無い。この後に投降を呼び掛け、応じなければ強制的に身柄を拘束する」
「了解したわ。それじゃ、私がバースニップ殿のサポートに入るから、カテジナはクーヴァさんのサポートをお願い」
「承知しましたわ」
「それじゃ、投降勧告はバースニップ殿に任せるわ。何なら音声を増幅しましょうか?」
「あぁ、それで頼む」
「了解よ。好きなタイミングで話し始めて構わないわよ」
フロレアールからのゴーサインを受けてバースニップは口を開く。
「この地チェーネ領主たるエヴィエオードス国王陛下の名代のバースニップである。イムテラ司祭及びポティロン神官の両名は大人しく投降することを求める。容疑は先の土魔術による傷害及び殺人未遂、加え別件の襲撃計画を企てた事に関する殺人未遂でも既に証言が寄せられている。これらのことから貴殿らの身柄を拘束するものとした。大人しく従うならば手荒な真似はしないと誓おう。だが、抵抗するのであれば容赦はしないとここに明言する。貴殿らの賢明な判断を期待する」
そう言って暫く待つがイムテラ司祭とポティロン神官らが投降してくる気配は伺えない。
フロレアールは二人が教会内を移動し正面の扉ではなく少し離れた通用口に向かっていることを察する。
「司祭と神官が通用口を目指して移動してるから念の為に警戒を。それと投降交渉なり罵りあいになる可能性もあるからアチラさんの声も増幅するけど問題ないかしら?」
「あぁ、それで頼む。ホント君は何でもありだな」
「なんでもではないわ、自身が出来ることだけよ。それじゃ増幅するから軽口は終いよ」
バースニップからやや呆れらるがフロレアールは飽くまでも出来ることが多いだけとの認識であった。
その返事に苦笑いを浮かべるバースニップは気を引き締めてイムテラ司祭たちの出方を伺うのであった。
通用口に移動してきたイムテラは再び魔術により不意打ちを仕掛けようと企んでいた。
だが、勝手口へと移動したことが代理領主たちに何故かバレていた事から渋々諦めるのだった。
その事からイムテラは考えを改めて交渉を試みる。
「私は司祭イムテラでって!?」
自分の声が外に響き渡った事に驚いたイムテラは話すのを止めてしまう。
すると代理領主のバースニップからその原因を告げられる。
「交渉に備えて互いの声を増幅される様に事前に魔術を施しておいた。何か申開きする事があれば述べるがいい。但し、この私、バースニップには真偽判定スキルがある事を理解した上で発言するがよい」
代理領主は真偽判定スキル持ちだとは聞き及んでいたが改めて公言された事でイムテラは苦々しく思いながら口を開く。
「交渉の用意があるならば先に述べをるべきだ。騙し討ちのような真似をしおってけしからん奴だ。そもそも私には非は無いのだ。それに私は見たぞ、御使いとやらが我らが神聖教国に神より授かりし秘術を模して人々を誑かす瞬間をな!アレこそ魔女たる証拠だ!そして先程のは攻撃ではなく神罰である。奴は魔女に操られ群衆を先導していた背神者だ!我々には魔人を除する権利がある。貴様こそ魔女を傍らに控えさせ何を企んでいる?そうか、分かったぞ!貴様も魔女に魅入られた背神者なのだな!?そうか、全ての謎は解けた…。先の魔女像排除を妨げられ我々が襲われたのも全ては魔女の差し金だったのだな!!この町は魔女に支配された呪われし魔都であり、神の信徒たる我らを亡き者にしようと企てていたのだろ?全住人が背神者で魔人に与する者たちだったとは流石の私にも想定外だ。ふふふ、どうだ図星であろう?」
イムテラの自己中な妄言にバースニップは言葉が出てこない。
真偽判定スキルによりイムテラが本気で考えていることが判ってしまうが故の反応であった。
だが、イムテラは沈黙は肯定と解釈して暴走を続ける。
「真相が露見してしまい言葉も出ないか?貴様らの思い通りなどにはさせん。そうた、やられはせんぞ。やられはせんぞ、貴様ら如きに、やられはせん神の信徒の栄光、この私のプライド、やらせはせん、やらせはせん、やらせはせんぞー!!」
そう言うなりイムテラは次々と土魔術を撃ち放って始め、腰巾着たるポティロンも同調して魔術を放つのだった。
次々と飛んでくる石弾をフロレアールはメイスを手に軽々と全てを粉砕し、生じた土煙は風魔術で綺麗に除去していた。
投降する意思もなく交渉も不可能と判断したバースニップが最後の決断を下す。
「フロレアール殿、すまんが確保を頼む。可能なら無傷で」
「了解よ」
そう言ってフロレアールはイムテラたちが立て篭もり魔術を放ってくる通用口に向かって歩き始める。
距離が詰まり次々と先より短い時間で飛来する石弾を意に返さすことも無く、何事も起きていないかの様に真っ直ぐに通用口へと近付く。
そしてイムテラとポティロンの探知反応が緑に変わったのを確認し終えた瞬間に指向性の大光量閃光をイムテラとポティロンの顔面に向けて放ったのだった。
「目がぁ、目がぁぁぁ…」
「イ、イムテラ様…私も…目が…」
日が沈み薄暗闇に慣れていた目を強烈な閃光によって焼かれイムテラとポティロンが両目を両の手で抑えて転げ回る。
フロレアールは転げ回る二人を飛翔魔術を応用して拘束すると何時ぞやの騎士たちと同様に後ろ手に両手足を鎖で繋ぐ拘束具を造り出す。
更には目隠しと猿轡をも造り出して装着するのだった。
拘束を終えたフロレアールは念の為に二人に治癒魔術を施し、飛翔魔術でバースニップの元へと運搬するのだった。
この後にバースニップから群衆に向けてイムテラ司祭とポティロン神官の身柄の確保が改めて伝えられ、後に厳正な処罰を下すとのことが明言された。
そしてフロレアールが群衆に向けて解散する様に促すと蜘蛛の子を散らすように我先にと人々は去るのだった。
こうして天然娘が起こした爆発から連鎖した一連の騒動は収束を迎える。
失われたのは爆発にて消失した室内備品、そして愚かな教会の司祭と神官のみであった。
逆に得たものは、白百合の情交像、真恋愛主義、そして新たに従属状態へと堕ちた4204名分から簒奪したステータス値であった。
正にプライスレス、是非もないよね!である。
次話の後日談でチェーネ編は一区切りとなります。
以降は王都編でテルミ姉等が登場の予定です。
今後ともご愛読頂けると幸いです。
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