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79 真恋愛主義者の鬨(かちどき)

ご愛読ありがとうございます。


拙い文章ですが、面白いと思って頂けましたら“ブックマーク”や“いいね”、“感想”等にて応援頂けると幸いです。


これらの応援は執筆に際しての大変励みなりますので宜しくお願いします。

時はさかのぼり役場で爆発の直後に町役場の受付嬢が叫んだ言葉は人々が口伝する事で瞬く間に町中へと広まる。

その内容を耳にしたこころざしを同じくする者達は声を掛け合いながらある場所を目指していた。

その者たちは通称、百合百合ゆりゆり教徒や薔薇薔薇ばらばら教徒と呼ばれる自由恋愛主義者たちであり、目指すは聖地や本部とも称される大翼の御使い像が坐する施設であった。


施設の中はまだ日中だというにも関わらず既に多くの人が集い、祈りを捧げており、中には涙するものも少なくなかった。

それは、爆発に巻き込まれたのが御使い様ことフロレアール、そして始祖、教祖、開祖、尊師と讃えられている祖カテジナが含まれていたためである。

大翼の御使い像を背に一人の薔薇漢ばらにきが演台に着く。

本名不詳の通称レンザの兄貴と呼ばれるこの施設敷地や隣接する憩いの広場、通称フロレ広場の緑を管理している草木や草花を愛でることを止まない細マッチョで鋭い眼光を有する美丈夫である。


「同志たちよ、我々は御使い様、そして祖カテジナを失ったかもしれない。しかし、これは自由恋愛主義の死を意味するのか?否!始まりなのだ!神聖国をはじめとした神殿や教会に比べ、我らが自由恋愛主義は比べる事が叶わぬほど脆弱である。にもかかわらず今日まで真の恋愛を掲げ戦い抜いてこられたのは何故か?同志諸君!我らの自由恋愛主義こそが性別に囚われない真の恋愛だからだ。これは同志諸君らが一番知っている。我々は異端と迫害され、恋愛難民にさせられた。そして、一握りの神聖教国をはしをめとした神殿や教会の自称:神の信徒らが恋愛にまで干渉するようになり異性恋愛を是として百有余年、性別に囚われない恋愛を望む我々が自由を要求して何度踏みにじられたか。自由恋愛を掲げる人間ヒューマン一人一人の真なる恋愛のための戦いを御使い様が見捨てるはずはない。我らの祖!同志諸君らが尊んでいた祖カテジナは逝去されたかもしれない。何故だ!」



その問いに多くのものが声を揃えて叫ぶ。


「「教会やつらりやがった!」」


応えを得たレンザの兄貴は再び語り始める。


「新しい時代の真なる恋愛を全ての人間ヒューマンが得るは、歴史の必然である。ならば、我らはえりを正し、この難局を打開しなければならぬ。我々は過酷な異性恋愛主義の中を生活の場としながらも共に苦悩し、錬磨れんまして今日こんにちの自由恋愛主義を築き上げてきた。かつて、祖カテジナは恋愛の革新は自由恋愛主義者たる我々から始まると言った。しかしながら自称:神の信徒のモグラ共は、自分たちが恋愛の支配権を有すると増長し我々を弾圧する。諸君の父も、子もその自称:神の信徒の無思慮な弾圧の前に悲恋を味わっていったのだ!!この悲しみも怒りも忘れてはならない!!それを、祖カテジナは!その身をもって我々に示してくれた!我々は今、この怒りを結集し、自称:神の信徒どもに叩きつけて、初めて真の恋愛を得ることができる。この勝利こそ、性別にとらわれない恋愛を望む全ての者への最大の慰めとなる。同志よ立て!悲しみを怒りに変えて、立てよ!同志よ!我ら自由恋愛主義者こそ真の恋愛を望む者であることを忘れないでほしいのだ。真恋愛主義者ニュータイプである我らこそ真の恋愛を救い得るのである。ジーク・恋愛リーベ!」

「「ジーク・リーベ!!」」

「「ジーク・リーベ!!」」


演説を終えたレンザの兄貴は繰り返されるシュプレヒコールを浴びながら演台から離れるのであった。


暫くして再び静寂が訪れ始める施設に駆け込んできた一人の百合乙女が歓喜の叫びを上げる。


「衛兵から続報が入りました!御使い様と祖カテジナはご無事とのことです!!」


その報を聞いた者たちは歓声を上げて喜び抱きしめ合い、共に涙を流す。

暫くすると自然とシュプレヒコールが起き施設内に居る者全てが一つとなって叫びを上げ続ける。


「「ジーク・リーベ!!」」

「「ジーク・リーベ!!」」


すると演台前に先のレンザとは違う新たな薔薇漢ばらにきが立つ。

本名不詳の通称ハードボブ、ボブ軍曹と呼ばれるこの施設敷地や隣接する憩いの広場における警備統括責任者である。

冒険者時代に失った右目を眼帯で覆っており、鍛え抜かれた肉体、その至る所に大小様々な傷跡が見え隠れしている。

そんな彼からは、歴戦の勇士を思わせる張り詰めた雰囲気オーラを纏っている様に感じられる。

彼が演台の前に立つと自然とシュプレヒコールは鳴り止み静寂が訪れる。


「いま、御使い様と祖カテジナの無事の報せに沸き立つことは構わん。だが、楽観することは許されない。何故ならば爆発の原因は不明である為だ。コレは御使い様と祖カテジナを狙ったテロに他ならないからである」


ボブ軍曹の発言により施設内は騒然とする。


「静まれ!!先のテロ行為に関して重要な証言が届いている!!皆も存じているだろう、御使い様による町の発展前から町の教会でシスターとして勤めているサラシーン女史だ。彼女は自称:神の信徒のクソどもとは違って自由恋愛にも寛容な聡明な女性だ。教会の関係者その全てが我々を虐げるクソどもでは無いことを諸君らは肝に銘じなければならん!!彼女は以前にも教会内の不正などの重要な情報を我ら提供して下さっている我らが同志である。今回も自らの危険を顧みず重要な情報を持って馳せ参じてくれている!!」


そう言ってボブ軍曹は壇上の隅に控えてきたサラスーンへと目配せした後に身振りで自身の元へと招く。

サラシーンが近付くとボブ軍曹は彼女の方へと向きを変える。


貴女あなたの勇気ある行動に敬意と感謝を」


そう言ってボブ軍曹が頭を下げる。

頭を上げた軍曹は再び正面を向き言い放つ。


「コレよりサラシーン女史から、本日、教会内で見聞きしたテロに関連する内容について直接報告頂く。私と違って声が通り難い為、静寂を保ち聴くように!!」


そう言ってボブ軍曹はサラシーン女史へと視線を向けて頷き発言をうながす。


「これは主にイムテラ司祭とポティロン神官の会話となります。その場には町の発展に伴って彼らと同時期に赴任してきたシスターや牧師ら全四十名も同席しており、本件に加担しているものと思われます。本件に加担していないのは私と先任のトラソル司祭だけになります。トラソル司祭は私と同じで皆さんの同志ですのでお間違いのなきようにお願いします。話が逸れました、すみません。それでは、見聞きした内容ですが、爆発が発生する前の午前中と衛兵により続報が届けられた先程の二回に別れています。皆さんもご存知の通り午前には御使い様がチェーネにお戻りになられているとの噂が教会にも届いておりました。それを耳にしたイムテラ司祭とポティロン神官らが“魔女が町に戻ってきた”、“先の一件の怨みを晴らす時が来た”、“魔女は殺しても構わない”、“町から去る前にカタをつけろ”と発言しておりました!!」


その言葉に施設内に怒号が響く。

それに対してボブ軍曹が檄を飛ばす。


「黙れ貴様ら!!話はまだ終わっておらん!!警備隊全隊員起立!!」

「「サー、イエッサーッ!!」」


ボブ軍曹の指示により、施設内に等間隔に配置され座っていた屈強な薔薇漢ばらにき達が一斉に立ち上がり敬礼と伴に応える。


「許可する前に騒ぐ者は妨害行為とみなして容赦ようしゃ無く施設外へとつまみ出せ!」

「「サー、イエッサーッ!!」」


ボブ軍曹からの警備隊への指示により施設内は瞬く間に静寂へと戻る。

呆気あっけに取られるサラシーンへとボブ軍曹が穏やかに告げる。


「サラシーン殿、続きをお願いします」


その緩急かんきゅうにサラシーンは驚きつつも証言を再開する。


「あ、はい、ありがとうございます。えっと…、それでついさっきの事ですが、教会にも衛兵から続報がもたらされました。その内容を耳にしたイムテラ司祭とポティロン神官らが“いい気分が台無しだ”、“魔女は何故くたばっていない”、“無傷とはどういうことだ奴は肉体までバケモノなのか”、“我々で直接手を下してでも目にもの見せてやる”と発言していました。私はこの事を伝えにトラソル司祭の命を受けたとの体で外出許可を得てこちらへと駆け付けました」

「サラシーン殿 、ありがとうございました。ご協力に感謝します」


大役を終えたサラシーンにボブ軍曹から謝意が伝えられ、彼女は舞台袖へと下がる。

そしてボブ軍曹は込み上げる怒りを込めて声を張り上げて叫ぶ。


「以上が教会のクソどもの発言だ!!そもそもこの町には御使い様や祖カテジナに牙を向こうなんて不届き者は居なかった。違うか!?」

「「サー、イエッサーッ!!」」

「俺たちの宿命さだめはなんだ!?御使い様や祖カテジナを初めとした自由恋愛主義に関わる人や物を守る事だ!!違うか!?」

「「サー、イエッサーッ!!」」

「今回の御使い様や祖カテジナを狙ったテロ行為は断じて容認することは出来ない!!我々は自らに運命さだめられた責務を全うする!!我々はこれより教会へ突撃し容疑者を確保する。その後に独自の審問を執り行い真実をつまびらかにする!!野郎ども覚悟はいいか!?」

「「サー、イエッサーッ!!」」

「貴様らの覚悟は聞き届けた!!この場にいる同志諸君よ!!よくぞ沸き起こる怒りに耐え沈黙を保った。これより発言を許可する!!」


発言の許可ぎおりた途端に一人の青年が立ち上がり叫びを上げる。


「ふざけんな!アンタらだけをクソ教会に向かわせると本気で思ってんのか!?俺たちはスタンピードを生きて乗り越えた、この町の、チェーネの住人なんだぞ!!御使い様には恩義があるだ!!俺も戦うぞ!!止める権利はボブ軍曹あんたにだってありゃあしない!!」


先の青年に続いて次々と立ち上がり叫びを上げる者が続く。


「そうた!俺たちは戦うぞ!!やっと掴んだ自由なんだ。それを踏みにじるクソ共はぶっ殺してやる!!」

「そうだ!!自由を守れ!!教会のクソどもをぶっ殺せ!!」


それらの魂の叫びに呼応して施設内にいるものが全員立ち上がりシュプレヒコールをあげ始める。


「「ジーク・リーベ!!」」

「「ジーク・リーベ!!」」


幾度となく繰り返されるシュプレヒコールを受けてボブ軍曹が叫ぶ。


「いいだろう!この時をもって、貴様らは自由恋愛希望者オールドタイプを卒業する。貴様らは真恋愛主義者ニュータイプだ!」


ボブ軍曹の発言を受けて、警備隊員達が魂の叫びを上げた者たちへサムズアップを贈りながら頷く。

それを受けて青年たちは敬礼と伴に再び魂の叫びを上げる。


「「サー、イエッサーッ!!」」


「さて…貴様らはこれから、最大のかたきと戦う。もちろん逃げ場はない。全てを得るか、逆に失うかの瀬戸際だ。どうだ、楽しいか!?」


ボブ軍曹の問に施設内のいる全ての者が声高々に応える。


「「サー、イエッサーッ!!」」

「いい声だ。では…」

「同志諸君!!俺たちの特技は何だっ!?教会のクソどもをどうする!?」

「「殺せっ!! 殺せっ!! 殺せっ!!」」

「この戦いの目的は何だっ!?」

「「殺せっ!!殺せっ!!殺せっ!!」」

「俺たちは御使い様を敬愛しているか!?自由恋愛を渇望しているかっ!?クソ野郎ども!!」

「「リーベ!!リーベ!!リーベ!!」」


こうして自由恋愛主義を掲げる者たちが教会てきちへと向かう。

施設内に入りきれずに施設の周囲に集っていた同士を加え、その数を増やしつつシュプレヒコールを上げながら教会を目指すのであった。


レンザの兄貴からの指示にて真恋愛主義者たちは、その圧倒的な数を活かし、一部の者を遊撃隊として再編する。

遊撃隊には町に潜んでいるであろうイムテラ司祭とポティロン神官の手下であるシスターや牧師の徹底捜索サーチ捕縛殲滅デストロイを命じる。

こうして町へと繰り出してい教会関係者は瞬く間に狩り尽くされたのであった。


日が陰り始めた頃には、真恋愛主義者たちは教会を完全に包囲していた。

圧倒的にまで膨れ上がったその一団はシュプレヒコールを上げ続ける。


「「ジーク・リーベ!!」」


その状況が暫くの間続いて居たがレンザの兄貴の元へ遊撃隊により町に出ていた教会関係者が全員狩り終え自由恋愛主義の教育せんのうを終えた旨の報告が届く。

それをもってしてレンザの兄貴は更なる士気向上の策に打って出る。

レンザの兄貴からの要請を受けたボブ軍曹が檄を飛ばす。


「聞けクソ野郎ども!!レンザの兄貴から貴様らに講授がある。心して拝聴しろ!!」

「「サー、イエッサーッ!!」」


ボブ軍曹からの激により鳴り響き続けていたシュプレヒコールが止み、逆に耳が痛くなりそうな静寂が辺りを包み込む。

レンザの兄貴は屈強な薔薇漢ばらにき達で組まれた漢騎馬に掲げられ真恋愛主義者の群勢を見下ろしなが高らかに叫ぶ。


「我らが忠勇なる自由恋愛主義を求める者達よ、今や自称:神の信徒にくみする者の大半をが我らが説得せんのうによって真なる恋愛へと目覚めた。この真理こそ我等が恋愛リーベの正義の証しである。決定的な真理を知った教会に如何ほどの自称:神の信徒が残っていようと、それは既に形骸である。敢えて言おう、カスであると!!それら自称:神の信徒がこのチェーネ包囲網から逃げおおせることは出来ないと私は断言する。人間ヒューマンは我等真なる恋愛を望む真恋愛主義者ニュータイプたる我らが自由恋愛主義を教え導き、誤った恋愛観から解放されて、はじめて真の恋愛に心から堕ちることが出来る、これ以上戦い続けては自由恋愛そのものの存亡に関わるのだ。自称:神の信徒の無能なる者どもに思い知らせ、明日の未来の為に我らが自由恋愛主義は立たねばならんのである!」


レンザの兄貴が述べ終えるた瞬間に一際大きな歓声が上がり再びシュプレヒコールが起こる。

その上空では衛兵からの知らせを受けたフロレアール一行とバースニップがその様を眺めていたのであった。

タイトルの一部を変更しました。


変更内容はウォークライをかちどきへと置き換えました

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