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73 封書②

ご愛読ありがとうございます。


拙い文章ですが、面白いと思って頂けましたら“ブックマーク”や“いいね”、“感想”等にて応援頂けると幸いです。


これらの応援は執筆に際しての大変励みなりますので宜しくお願いします。

灼滅の騎士について記憶を頼りに話し始めるバースニップとクーヴァの両名。


「二つ名の由来は…確か第二王女のメローネ様が神国イオプシオンからの帰路での襲撃を助けたとか英雄譚みたいな逸話だったよな?確か二年くらい前かな」

「そうですね、実際には成人の儀を受けに神国に向かったその帰りにですね。大概の国の王族や上位貴族は神国で成人の儀を行うのが慣例なので、メローネ様も滞りなく儀式は終えたそうです。問題が起きたのはその後で、非公式ですが枢機卿の一家から婚約を申し入れられそうです。本来ならば国を介して正式に申し入れすべきものを当人同士が同意したとの既成事実を得て交渉を優位に進めようと目論もくろんでいたとの話しです。ですが、メローネ様はキッパリと拒絶した上で、見え透いた目論もくろみに加えて相手の子息の容姿などをボロクソにディスったらしく、の結果として恨みをかって刺客を差し向けられたとの情報が一番有力でしたね」

「あぁ、あの件かぁ…嫌なもん思い出したわ。両手足や片目が吹き飛んだ酷い火傷跡のケロイドだらけの達磨だるま野郎の尋問に立ち会いさせられたな…」

「その際はご苦労さまでした。この件の口止め含めて汚貴族&商人の審問の功績で叙爵されたのですよ。あっ、申し訳ありません。皆様、第二王女襲撃事件に関する事柄は内密にお願いしますね」


国家間での要人暗殺未遂とのどう考えても機密事項な内容を従属状態の影響で口を滑らせてしまうクーヴァ。


「…国家間の裏の揉め事なんて好き好んで知りたくはなかったです。この国の教会は個人的に真っ黒だと思ってましたが…総本山の神国は、より一層腐ってそうですね」

「相手側からすると公爵に相当する五家の枢機卿の一つを他国の姫とはいえ成人したばかりの小娘に馬鹿にされたとなればって所ですかね」

「クーヴァ、話が逸れてるぞ。機密を漏らすのも含めて貴様らしくないな」


クーヴァの状態が常日頃と異なるとのバースニップ指摘に肝を冷やすフロレアール。

だがクーヴァが空かさず反論する。


「それは主様が居るからですよ。嘘で誤魔化すと直ぐに嫌な顔になりますからね。主様が知らない事を含んでると嘘偽うそいつわり無く説明するしかないのではありませんか?違います?それともこの場だけは、それを容認なさいますか?」

「そう…だな。気遣いありがとな。フロレアール殿、カテジナ殿、カルチナ殿、キャローナ殿、申し訳無いが先の件は内密に頼む」


そう言ってバースニップは頭を下げ、フロレアール達が頷く事で意を返す。


「それでは話しに戻りますが、メローネ様の一行が国境を越えて王国領に入ってから間も無くして襲撃を受けます。護衛として同行していた近衛十名が全死亡したとされています。襲撃側は御丁寧に三倍の三十人。必ず相対した近衛の三倍の人数で取り囲んで嬲り殺しにされたと報告されています」

「尋問で確認して判明したのは神国に属しているが正規の部隊や軍には所属してない神官戦士。上からの命令で組織的に動いたが実働部隊は依頼人の情報は一切知らない。そして燃える様な赤髪の女戦士の急襲を受けて一撃でそいつらは壊滅した…だったかな?」

「正確には一撃の前に少しありまして、近衛を倒し終えた襲撃者達が付近を確認終えて場所へと近付こうとしたらメローナ様と世話係だけが残る馬車の屋根の上に気付いたら赤髪の女戦士が立っていたそうです。そして女戦士は名乗りを挙げると共に身の丈を超えるグレートソードを振り上げながら跳躍して馬車と襲撃者の間に降り立つに合わせて一撃を振り下ろしたと。その一撃は魔術を組み合わせた凄まじいものだった様で、襲撃者のほとんどが痕跡すら残さずに滅しています。かろうじて息があった襲撃者二名をメローネ様の指示で世話係が治療。何とか生き繋いだ一名への尋問によって裏付けが成されたとの流れです」

「そうた、その技は威力が凄すぎて殉職した近衛の亡骸も半数は消し飛んだって噂だったよな。あの一撃って自身の前方を焼き払うと同時に吹き飛ばすって本当なのか?」

「そうですね。実際に襲撃現場の検証と殉職者の移送の際には、焼かれた地面がガラス化しており、その先はかなりの範囲がえぐれて吹き飛んだ跡が残っていたそうです。やいて全てを滅した事からメローネ様が灼滅の二つ名を贈り自身の騎士として取り立てたそうです。それと緊急事態であったことから襲撃者の殺人と殉職者の遺体損壊は不問になったようです」


二つ名の由来からフロレアールの中では灼滅の騎士が誰なのかが確定してしまう。

二度と会うこともないだろうとタカをくくり記憶の隅に追いやっていた人物の一人であった。

フロレアールは腐った魚のような瞳で抑揚のないカタコトの言葉で最終確認をうながす。


「あぁぁ…ソウナノネ。ヨウシ トカ、ガイケン ノ トクチョウ モ オシエテ チョウダイ…」


その反応にフロレアール以外がいぶかしげに感じつつも答えが返ってくる。


「おや、心当たりが出てきたのか?えっと年齢は俺とクーヴァの間くらいの筈だ。先にも述べたが燃えるような赤髪で参考にならないかもしれないが俺が見た時だと髪は肩よりも長かった筈だ。顔付きは整っていいて綺麗だが野生の肉食獣を彷彿とさせる猛々(たけだけ)しさも感じさせる。背丈は俺より少し高い様な気がするな。これは女性軽視と捉えないで欲しいが女性にしては鍛えられていて、か細いとの印象は受けない。それに胸や腰にボリュームは無くスレンダーというか凹凸は少ない様に見受けられたかな」

「主様、あれは凹凸が少ないのではありません。無いのですよ。晩餐でもドレスでは無く軍服を身に着けていたので男装の麗人の様でしたが、アレは無い乳、無いクビレ、無いヒップの三点セットで間違いないですね。こんな時にだけオブラートに包むなんて実に情けない。因みにメローネ様と助ける男装の麗人たる灼滅の騎士も物語は新興劇として王都で特に女性陣に人気のだそうですよ。ですが男性陣からは真逆で彼女が新しい世界に目覚めてしまったとか訳の分からない苦情が多く寄せられてるとの噂です」


劇のくだりでカテジナたち三人は顔を見合せて王都に行ったら必ず見ましょうと小声で意気投合している。

一方のフロレアールは、赤髪、背丈、無い無い三点ボディ。

身体的特徴と灼滅の逸話からして間違い無くフロレアール自身が良く知る二度と会いたくなかった人物で確定したため、最悪の気分でであった。

やはり幸運値さんは正しかったのである。

この事実を知ること無く、また思い出すこと無く生きていく最後のチャンスを逃してしまったのだった。

フロレアールは両手で顔を覆いうつむいてしまう。

その様に気付いたカテジナは慌てて肩に手を添えて声を掛ける。


「フ、フロレアール様!?どうなされたのですか?灼滅の騎士とやらは、やはりお知り合いの方だったのですか?ですが…その反応は一体…」


今までに見せたことが無いフロレアールの反応にカテジナはオロオロとしているが何かに思い当たったのか驚きの表情を浮かべる。


「ハッ!まさかの昔の女!?それでフロレアール様を捨てたやからでまさかの再会なのですか!?」


勝手な妄想で暴走するカテジナの顔に俯いたままのフロレアールから左手が目にも止まらぬ速さで伸びるとガッシリと鷲掴わしづかみにする。

カルチナとキャローナはデジャブに襲われる光景が現れたが、不変性による魔術防御を習得したがことから楽観視していた。

するとミシ、メキとの嫌な低い音が不変性を施しているにも関わらずカテジナの顔面から響き始める。

バースニップとクーヴァは見た目は一番小さく華奢なフロレアールが人の顔面を鷲掴み(わしづか)にして骨をきしませていることに驚愕し、カルチナとキャローネは不変性の防御魔術を突破している事実に恐怖を覚え身を寄せ合う。

フロレアールの左手が淡い光を帯びていることから治癒魔術を施しながらカテジナの顔面を握り圧迫しているのが伺える。


「ら、らめ。不変性が突破しゃれてりゅのォォ。い、痛い、頭蓋骨から鳴っちゃいけない音が出てりゅぅぅぅ。死んじゃう、と、とみゃとみゅたいに顔が潰れて死んじゃいましゅ。た、たしゅけて…」

「おい、ザンネンさんよ。誰が誰の女で捨てられたって?変な事口走るなって言ったよな?何度言っても学ばないおバカさんは身体に教えないと学ばないのですか?しつけますか?」


そう言い放って顔を上げたフロレアールには青筋笑顔が浮かんでいた。

それを見た四名から「ヒッ!!」との短い悲鳴が上がるがフロレアールは気に停めずにカテジナを追い詰める。


「あぁ、心配しなくても大丈夫ですよ。このまま握り潰したとしても今の手の位置と私の手の大きさならザンネンさんの脳は無傷で済みますから。試しに一度潰れてみますか?大丈夫ですよ、綺麗に元通りに癒して差し上げますから。どうぞ遠慮なさらずに」


そう言い放つとフロレアールの手に込められている力がより一層強くなったように感じをられる。


「ご、ごめんなしゃい。許してください。堪忍してくだしゃい」

「あらあら、仕方がないですね。今日の所はこれくらいで勘弁てあげましょうか。ですが気を付けてくれないと近々お顔が一度無くなっちゃいますよ」


そう言い放つと同時に開放されるカテジナ。

すぐさまカルチナとキャローナの方を向き「わたくしの顔は、顔は残ってますのぉぉぉぉ?」と涙ながらに確認を取るのであった。

そんなカテジナを無視してフロレアールはバースニップへと軽く頭を下げる。


「失礼しました。お二人のおかげで灼滅の騎士は間違い無く見知った人物であると確信が持てました」

「そ、それは良かったのかな?反応からすると余り好ましい関係性とは思えないのだが…」


バースニップは恐る恐ると言った感じで会話する。


「そうですね。正直言って思い出したくも無かったですし、二度と会いたくなかった人物の一人ですね」

「そんな相手が他にも居るのか…。いや、済まない。差しつかえ無ければ灼滅の騎士殿との関係を伺えないだろうか?」

「はぁ、別に構わないですよ。灼滅の騎士の名前はテルミドール。会いたくないもう一人の人物も同じく私の姉よ。この二人は私より五つ年上の双子だけど二卵性双生児で姿は特に似てないわ。思考や体型的な面から三人とも折り合いが良くなくてね。成人した少し後に村を去ってから音信不通だったから、二度と会うことも無いと思ってたのに…」


天然カルチナは悪気が無い為、他の者が踏み込みにくい話題も気にせずに話を振ってくる。


「黒百合様、どうしてそこまで折り合いがわるかったのですか?姉妹なんですよね?」

「二人とも価値観が違い過ぎたの。自分自身に限っては、“姉より優れた妹は居ない”って信条でね。これは私にも落ち度があって幼少期は姉たちにベッタリでね。事ある毎に“お姉ちゃん凄い”、“お姉ちゃんは偉い”って言って姉に言われる事に従って過ごしてたら固定概念化したみたいなの。でも私も成長して教会に通うようになり、自身も魔術を覚えて使えるようになり、村の大人たちとも次第に交流し始めたわ。そうなれば視野も広がり視点も変化していったの。でも、その頃には姉二人は手遅れだったの。その頃には二人は成人に近ったから基礎人格や理念の形成を終えてたのね。それに加えて私も胸とか次第に大きくなってクビレも出来始めてお尻も目立ち始めたの。でも、テルミ姉は身長が伸びるだけで他は一切成長しないと言うよりも一切の変化が無かった…絶望的なまでにね。もう一人の姉は私とテルミ姉の身長とか体型を足して二で割った標準って所かしらね。それなのでスタイルでも特にテルミ姉は拗らせていたと思うわ」


そう、それによって姉二人には傾国の美貌が変な方向に傾いて効果を発揮している様なのであった。

私よりも偉いと意識が固定化された為、特に強くお願いと明言しない限りは要望にも応じる事は少くかった。

これは“姉より優れた妹は居ない”、“妹のモノは私のモノ”、“妹は下僕だから尽くすのは当然”との残念な深層心理が形成されたことからの副作用であった。


「そんな二人だったから私は次第に必要最低限の会話しかしなくなっていったの。だけど二人が成人の儀を終えた数日後に事件が起きたの」


フロレアールはそう言うと深い溜息を吐く。

周りの者たちはゴクリと唾を飲み込み話しの続きを待つ。


「自身のステータスとスキルを知った二人が決闘を挑んできたのよ。姉妹三人で誰が頂点なのかを賭けて戦えってね」

「へっ?姉妹喧嘩ってことですか?」

「いいえ、文字通りの決闘よ。そこで私は姉二人を半殺しにしたもの。アイツらは複数箇所の骨折に臓器の損傷までも負ってたわ…。二人が結託して開始早々に襲いかかってきたから手加減が難しかったのよ」

「それで仕方が無く黒百合様はメイスで応戦したんですね」

「いいえ、三人とも素手と魔術だっけだったわよ。バカ姉二人は知り得たスキルで魔術威力上がってたから危うかったわ。灼滅の逸話の技も威力は低かったけどその場で直撃を喰らって見知っていたからこそ、容姿含めてテルミ姉と確信できたのよ」

「い、威力低いからって攻撃魔術の直撃受けたのに勝てたんですか!?」

「初見だったし、もう片方の姉が水魔術で私の両足拘束して避けれなくてね。衣服とかはかなり焼けたりした上、私は吹き飛ばさたけど、幸いダメージは軽い火傷程度だったから直ぐに治療できたわよ。それにテルミ姉はマナの量が少ないのか先の攻撃を連発してこなかったのも幸いしたわ。私を沈めたの為に後に余力残したかったってところなのかな。それで自信の一発で殆ど無傷の私を見て驚いて棒立ちだったから、勢い付けて懐に飛び込んで右膝を蹴り砕いてからポディに全力で右の拳を捩じ込んだの。そしたら血反吐吐きながら吹き飛んで終わりだったわ」

「あのぉ、黒百合様ってさっきの話だと十歳少しくらいの話ですよね?」

「そうだけど?成人の儀を受ける前でもスキルの効果は発揮されてるから助かったと言えるわね。それでテルミ姉を殴り飛ばした後に残ったフリメ姉が背後から攻撃してきたの。だけど即座に私を無力化する魔術じゃなくてね。水で身体全体を覆われて水自体を固定化してた様だけど人が意識を失うまでは、それなりの時間を要するから黙って待つ訳もなくてね。私は風魔術で水の拘束を吹き飛ばしてから自身を砲弾のように飛ばしてフリメ姉の下腹部に矢の様飛んでって両足をぶち当てたの」

「そ、そちらのお姉さんは無事だったのですか?」

「結果的には後遺症も無く治ったけど内蔵に加えて背骨とか腰が逝っちゃったみたいで大変だったわね。それから首も少しおかしくなってたかしら?まぁ、二人とも私が治したから問題ないわよ。その後、しばらくしてから負け犬は村から出て行け、二度と村帰ってくるなと追い出したってところかな。だから二度と会うこともないと思っていたのに実に残念だわ」


灼滅の騎士との関係は判明して一安心したバースニップだったが姉妹揃って感覚はアレだなと今後の付き合いに関しては一歩引いて距離を保とうと心に誓うのであった。


因みにテルミ・フリメ・フロレ三姉妹決闘には後日談が存在する。

 それは長閑のどかな山の小さな村だった

穏やかな青空に突如として鳴り響く爆音や断末魔の叫び声。

ローゼ村の人々が決闘騒ぎの経緯とその顛末を知るのには然程さほどの時間は要さなかった。

テルミドールとフリメールの姉二人を村八分にして居場所を無くし、実質的に追放に処したのだった。

それは村の総意として帰郷すら許さない事を伝えられており、フロレアールの意向汲んだものであった。

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