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71 代理領主②

ご愛読ありがとうございます。


拙い文章ですが、面白いと思って頂けましたら“ブックマーク”や“いいね”、“感想”等にて応援頂けると幸いです。


これらの応援は執筆に際しての大変励みなりますので宜しくお願いします。

代理領主のバースニップが待つ部屋へ前に到着したフロレアール一行。

クーヴァがドアをノックすると室内から「どうぞ」との応えが返ってくる。

クーヴァは「失礼します」と言いながらドアを押し開け入口へと進むが、その場に留まり一礼した後に言葉を発する。


「悪い、遅くなった。だが、俺に後悔は無いと先に宣言しておく」


そう言い放ったクーヴァは己が主を真正面から見つめて返答を待つ。

すると室内から苦々しい声が返ってくる。


「…チッ、クーヴァ、貴様の発言には嘘は無いみたいだな…。一応は悪いとも思っている様だから、今回は許してやる。だが、遅くなった釈明くらいはするべきだろうが…」

「ふっ、聞きたいか?それはな…美女たちとの会話が弾んでしまったからに他ならない。だから仕方がなかったのだよ。大事な事だから二度言うが俺は後悔はしていない。何故ならば、俺の今後の人生において同じ様な機会に恵まれる事は二度とないと断言できる程だからだ。これは案内役を務めた者の役得なのだよ。だから、お前はこころよくく俺を許すべきだ」


貴族とその部下とは思えない言葉遣いと会話内容にフロレアール達は驚きを隠せないでいたのが、彼らの会話は続く。


「…クソが。嘘は無いが流石にムカついてきたぞ。貴様のその口調からして客人に俺のスキルなどについて説明を済ませたんだろ?それに客人を直ぐに室内に案内せずに会話を続ける理由は、どうせ貴様との会話を聞かせる事で場の雰囲気と俺の口調に慣れされているってところか?茶番はいい加減にしろよ」


己が主の雰囲気から会話の引き伸ばしは限界が近いと察するクーヴァ。


「おや、ご明察です。意図が見透かされている上、口に出されてしまっては道化を演じるのバカらしいですね。それでは、ご要望通りに茶番はここ迄にしておきます」

「そうしろ。それに貴様、ワザと入口で立ち止まっているだろ?貴様の見飽きた顔なんて俺は頼まれても見たくもない。だから貴様がそれ程までに云う客人を早く紹介しろ。そもそも室内に案内せずに廊下で待たせるなんて客人に対して失礼だろうが」


(少しやりすぎましたか…。ここらが本当に限界のようですね)


クーヴァはそう思うと少し苦笑いを浮かべるが直ぐに真顔に戻すとフロレアール達へと振り返り謝罪を述べ一礼する。


「皆様、お見苦しいところをお見せしました。また、お待たせしていまい大変失礼致しました。どうぞ中へとお入りください」


そう言って、クーヴァはドアを押し開けながら室内へと進むのだった。

クーヴァが退けた事で代理領主であるバースニップの容姿があらわになる。

顔は中の上といった感じで髪は少しくせっ毛のある茶色。

背丈はカテジナより少し高いが平均的な成人男性としては少し低く、たくましさは感じられず逆に少し華奢きゃしゃに感じられる。

外見からは特筆する様な大した特徴もなく、身に着けている衣装が平凡な物であれば、彼を街中で見掛けても貴族であると思う者は居ないだろうと断言出来る程である。

だが、フロレアールはそんなバースニップに対して油断する事も無く、慎重に言葉を選んで対応する。

何故ならば、フロレアールの容姿を確実に認識したにも関わらず、バースニップの探知反応は中立を灰色から変化が無かっからである。


状態異常無効スキル。

れは多くの英雄譚にも登場する最上位に位置するスキルの一つ。

バースニップが有する精神的状態異常無効をはじめとして、肉体的状態異常無効、他にも各属性ダメージ無効、そして完全ダメージ無効などが知られている。

それらの効果無効のスキルは対象となるスキルをステータス差などを無視し、無慈悲に対象となる効果を無効化する。

それは人間ヒューマンの域を超越したフロレアールのステータス値&傾国の美貌の組み合わせも例に漏れず、ステータスによる効果判定を有するスキルでは状態異常無効を突破することは叶わないのであった。


閑話休題


(あわよくばステータス差で従属状態になるかもとちょぴっと期待したけど無理みたいね。こうなったら最低限の会話で要件を済ませるしかないわ)


そう逡巡したフロレアールは極上の笑顔を浮かべて、ローブの裾をスカートに見立てて両手で僅かにつまみ上げて挨拶する。


「初めまして、フロレアールと申します。後ろに控えているのは仲間のカテジナ、カルチナ、キャローナと申します」


フロレアールからの紹介に合わせて三人は自身の名が呼ばれた際に頭を下げる。

それを受けてバースニップが応える。


「バースニップだ。エヴィエオードス陛下からの欽命きんめいを受け代理領主を務めている。まぁ、クーヴァから聞いているだろうし、先の会話も聞かれた後だから楽にしてくれ。言葉遣いも気にしなくて構わん」


そう言い終えたバースニップの表情が僅かに気落ちした様をフロレアールたち女性陣は見逃さなかった。


「早速で申し訳ないが少し失礼する。おい、クーヴァ、貴様ちょっとこっちに来い」


そう言うや否や、フロレアール達からバースニップは少し距離を取り、部屋の入口でドアを押さえていたクーヴァを自身の元に呼び付ける。

バースニップはクーヴァが近付くや否や彼の首に腕を回し自身の体重を掛ける。

そうして彼の頭の位置が下がるに併せて首を締め上げたのである。


「おい、クーヴァ、貴様は美女・・と言ったよな?そうだよな?どう見てもアレは美少女・・・だろうが!!違うか!?どう言う事だ?」


首を締められながクーヴァは己が信念を曲げずに答える。


「そ、そもそも、俺はお前より四つ年下だ。俺にとっては年齢差は、ち、小さく、ストライクゾーンだ。そ、そもそも、好みなど主観的なものは、こ、個人差があるのは当然だろうが…」

「いや、年齢差が小さいとかてじゃなくて、物理的にチンマイ過ぎだろが!!」

「そ、そもそも冒険者ギルドからの事前情報で、よ、容姿や年齢はお前も知っていた筈だ。お、俺は嘘を言っていない!!お前だってそれは分かっている筈だ!!」

「くぅ」


クーヴァの断言を受けたバースニップの締め付けが思わず緩んでしまう。

クーヴァはその隙を逃さずに締め付け抜け出すと乱れた服装を整えながら己が主をさとす。


「これだから素人童貞は見る目がない。お前がチンマイとさげすんでしまったフロレアール嬢はタダのチンマイでは無い!!一目で気付けないとは実に情けない」


クーヴァから予想外のディスりを受けたバースニップは恥ずかしさから顔を赤くしてムキになりつつもキョドりながら言い返す。


「し、し、素人童貞じゃないわヴォケェ!!お前だって俺が幼なじみの近所のお姉さんが初体験の相手だって知ってるだろうが!!」

「あぁ…はいはい。そうでしたね。初めてを終えてから暫くの間は自慢げに事ある毎に口にしてましたね」

「そうだ、思い出したか、このボケが…」


クーヴァがバースニップを愚者を眺めるように蔑んだ瞳で眺めつつ言い聞かせる。


「そんな事はどうでもいいので、改めてフロレアール嬢をよくご覧になりなさい」


バースニップは「どうでもよくなくない」と叫びかけるがグッと堪えてフロレアールへと振り向き、改めて容姿を丹念に確認する。

バースニップの背後からクーヴァが諭すように説明を投げかける。


「彼女の背丈は確かに小さいです。です」

「そうだろ、俺は間違っていない」

「女性を一目見て背丈の感想しか述べれないやからは少し黙りなさい。彼女は確かにチンマイですがそのお胸様は桁が違うのです」

「なん…だと!?」


そう言うや否やバースニップの視線がフロレアールのタワワなお胸様を捉える。


「どうですか?気付きましたか?フロレアール嬢の背はチンマイですがタワワなお胸は他を圧倒するモノです。背丈の比率からすれば、S級、否それすらも凌駕すると言っても過言ではありません!!」


バースニップはフロレアールのお胸様をガン見しながらゴクリと喉を鳴らす。

その様を女性陣は当然の様に気付いており、先の会話内容も丸聞こえであった。

フロレアールは引きりそうになる笑顔を懸命に堪える。

その後ろに並ぶカテジナ、カルチナ、キャローナの三人は小声で呟く。


「キモイですわ」

「キモイですね」

「うわぁ、キモッ」


だが、かなしいかなバースニップはフロレアーのお胸様鑑賞に集中しており気付くことが叶わない。

そんな彼に対してクーヴァの指導は継続する。


「加えて幼さが残り可愛らしさも感じさせますが、顔も凄まじいまでにお綺麗です。高位の貴族令嬢に稀にいるお前が毛嫌いする彫刻や人形の様な能面な左右対称の整った面とは違う人間味を有している美しさです」


改めてフロレアールの顔をまじまじと眺めるバースニップ。


「確かに貴様の言う通りだ。あの能面見たいな偶像性愛アガルマトフィリアじゃなければ抱けない様な奴らとは違うな。アレって魅力値が30台半ば過ぎると始まるって宰相の旦那に教えてもらったわ…」


そう言ってバースニップが少し遠い目を浮かべるが、未だに俺のターンとの感じでクーヴァの講義は終わらな。


「それに後ろに控えている御三方の容姿も素晴らしいモノです。彼女たちも間違いなく美女と断言できます。それにも気付けなかったですか?だから授爵しても縁談の一つもお呼びがかからないのですよ。実に情けない」

「うっさいわ、貴様は少し黙れ」



そう言ってバースニップの視線はカテジナ、カルチナ、キャローナの順にユックリと移る。

会話から何を考えているのか丸わかりの状態の相手から自身を舐めるかのように見られた事で三人は顔を青くし、さぶいぼが全身に走る。

少しするとバースニップの視線は再びカテジナへと戻り、先の指導を活かしてなのか更に丹念に顔、胸、腰周り、太ももを順に眺め、最終的に中身が見えそうで見えないスカートと太ももの辺りで固定される。

するとバースニップの頬がみるみるうちに紅く染まる。


「正直に言うとあの中なら後ろに控えてる金髪の…確かカテジナ嬢だったかな?彼女が一番のタイプだな。だが、彼女の装いを見ていると、その…ありがたいというか…見ているこっちが恥ずかしい気分になるな…」


そのトドメの一言でカテジナたち三人は激しい悪寒に耐えられず無胸を隠すように腕の前で腕を交差させて身震いする。

その様を見たクーヴァが苦言を呈する。


「主様、がっつきすぎです。女性陣を見るのに夢中で失念してる様なので言いますが、我々の会話は皆さんに筒抜けです。そもそも一目見て気付くべき点を教えてるのに相手の容姿を舐めるかのように見る阿呆が普通居ますか?これだから素人童貞は使えないんですよ」


その指摘を受けたバースニップは顔を青くして口をパクパクとさせたのちに何とか言葉を発する。


「お、おま、お前、何で直ぐにでも止めない!?そ、それに、また素人童貞呼ばわりしやがって、ゆ、許さんぞ」

「はぁ、変なプライドになってい様だからえて教えてやる。お前の初体験の相手のパメーラ嬢だが本職の人だ。地元で知らないのはガキ共とハブられてたお前くらいだ」

「そんな筈は無い!!あの時にパメーラ姉は、前から可愛いと思ってた、お姉ちゃんが教えてあげる、バースの初めて貰っちゃうねって…」

「そりゃ発言に嘘はついてなければガキのお前は直ぐに真に受けてチョロかっただろうからな。ちなみに地元での彼女の二つ名は童貞喰チェリーイーターらいだぞ。何でもスキルで童貞は見ただけで判る上、成人してる童貞は彼女見ると強制的に発情してしまうそうだ。噂だと童貞を喰った人数だけ幸運値が上がるって話も耳にしたな。因みに状態異常無効の効果で発情せずにウブな反応を見せたお前との行為は新鮮な体験だったそうだぞ」


それを聞いたバースニップは耐えきれず膝から床に崩れ落ちる。


「因みに仕事の依頼をしたのはお前の親父さんだ。嘘が嫌いで誤魔化すことが下手なお前のホノカな恋心を知っていた様だな。親父さんがつらい幼少期を過ごしたお前への成人祝いとして依頼していた。その後日談でパメーラ嬢だがお前との体験をたいそうお気に召したらしくてな。その礼として親父さんを格安の特別価格で相手していたらしく、結構な常連だったみたいだ。少し前になるがパメーラ嬢は太客だった富豪の商人の妾になって引退しているぞ。これはお前が授爵する 際しての身辺調査を命じられた結果知り得たものだ。宰相殿にも報告は上げているから陛下も御存知の筈だ。悪しからず」


初体験が本職相手との真実に加えて父親との穴兄弟が判明し、その事を国のトップにまで知られている事実に耐えられず、バースニップのSAN値はゴリゴリと音を立てて失われる。


そんなバースニップをフロレアールを除く一同が蔑んだ目で眺める。

そしてフロレアールの瞳は哀れみを浮かべていた。

別にフロレアールは彼の境遇を哀れんでいた訳では無く、この惨状に至った事への哀れみであった。

この状況はクーヴァが誘導し作り出しており、その原因はバースニップの事を教えて欲しいと頼んだ事に加え、フロレアールの容姿を蔑んだ事で従属状態のクーヴァが過剰に反応したと推察したからである。

そのじつ、彼女はこの場をどの様に収めようかと焦っており、その背には汗が滲んでいた。


膝を着き呆然としてるバースニップにクーヴァは告げる。


「取り敢えず主様は女性陣に謝罪すべきかと具申します。それを受け入れてくれるかは皆様次第にはなりますがね」


クーヴァからの一言でバースニップはフロレアールやその後ろに控える面々へと恐る恐る視線を向ける。

フロレアールは哀れみを浮かべ、他の三人からは汚物を見るかの様な明らかな蔑みと嫌悪が見受けられる。

そしてバースニップの視線を感じとったカテジナたち三人からは容赦の無い言葉が放たれる。


「本当に穢らわしい。視姦されることに興奮を覚えないなんて初めての事ですわ。見ないで下さいまし」

「ほんと穢らわしいです。ちょっとキモイからこっち見ないでください」

「ほんとキモイです。素人童貞ってだけでキショいのに父親と穴兄弟ってお可哀想なことで。あぁ、でも先にやった兄貴分なだけマシなんですかねwww」


既にライフはとっくにゼロなバースニップは嘘偽りない是非もない言葉によりSAN値を失い、両の目に涙が滲む。

プルプルと震える体で両手を床に着き子犬のよ様に震えながら謝罪の言葉を何とか口にする。


「み、皆様、先程は大変失礼しましたした。申し訳ありません。許して頂ければ幸いです」


そう言い終えたバースニップの顔がグルリとクーヴァへと向き、血走った目で睨みつける。


「クーヴァ、貴様だけは許さない。俺は貴様を逃がさない…地獄の果てまで追いかけて貴様の顔面に必ずこぶしを振るう。絶対に貴様を許さない」


室内にバースニップの怨嗟えんさが響く。

その直後に沈黙を保っていたフロレアールが口を開く。


「三人とも言い過ぎよ。人をおとしめる行為は好ましくないわ。そもそも容姿について云われたのは私ですよ。バースニップ様、仲間たちが失礼しました。私の容姿に対する発言に関しては謝罪を受け入れたいと考えています。そこで提案なのですが、互いの非礼を相殺として手打ちにしませんか?宜しければ入室以降に起きた一連の発言などは無かった事としたいのですが…」


バースニップはフロレアールからの提案がこの場を収める最後の機会である事を即座に察する。

それは地獄へと天から降りてきた一本の蜘蛛の糸であり、一瞬でも機を逃せば助かる事が叶わぬものである。


「フロレアール殿、申し訳ない。提案に感謝する」


そう言ってバースニップは立ち上がると改めて頭を下げるのであった。

それを受けてフロレアールはこれ以上の混乱を招かぬように釘を刺す。


「それでは当事者同士が同意したとの事で入室以降は何も無かった。カテジナ、カルチナ、キャローナ、そしてクーヴァさんも宜しいですね。それと以降は余計な発言は控えて貰えると助かります」


名指しをした上でやんわりと“何も無かったんだ。以降は余計な発言はするな”との念押しをする。


「それでは、私から要件を伝えさせて頂きますが宜しいですが?それと言葉使いに関しても無作法をお許し下さい」

「あぁ、それで構わない」


バースニップから許し終えたフロレアールは早口にまくし立てるように要件を伝える。


「それでは失礼して…、ぶっちゃけ私たち今朝方に街へと到着したばっかりで半強制的に冒険者ギルドに立ち寄りました。領主館の件を聞いたりした後にコチラに伺ったので要件を早く済ませて貰えると幸いです。依頼の領主館は設計図を頂けるるそうですし用地の場所も分かりますからで明朝から作業を開始して遅くても昼前には造り終えます。午後からは竣工確認可能なので不具合や修正希望がないか確認ください。街には七日ほど滞在を考えてるので修正点や要望があれば三日後までに冒険者ギルドへと伝えてくだされば即対応します。それ以降のものは改めて立ち寄った折に要相談とさせて貰います」


自身の要件を矢継ぎ早に伝え終えたフロレアールはニコニコと極上の笑顔を浮かべバースニップからの返答を待つのであった。

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