069 依頼と注意と招聘と海の幸
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パルミーナと共に冒険者ギルドへと到着したフロレアールたちはギルド受付ホール横に併設されている食事処兼酒場の隅にあるテーブルへと通されていた。
一方のパルミーナはというと一旦ギルドの事務室内へ向かいフロレアールからのリクエストに応えるべくギルド職員へと海鮮料理の買い出しなどの指示を真っ先に済ませていた。
その後にフロレアールたちの元へと書類などを手にしたパルミーナがやってくる。
「改めて、久しぶりと挨拶をさせてもらおうかな。それとリクエストの海鮮料理は職員を使いに走らせたから届くまでの暫くの間はここで待ってもらえると助かる。それなりに満足してもらえる品数と量を指示したから調理には多少の時間を要するだろうから、その間に色々と話しをさせてもらうが構わないかな?」
「別に構わないわよ。それで門番に頼んでまでして私に伝えなければならない事って一体何なのか教えて貰えるかしら?」
「分かったよ。話としては大きく三つある。一つは衛兵から既に耳にした教会に関するもの、二つ目は町からの君への指名依頼、最後が君に対する招聘の言伝となる」
招聘との言葉にフロレアールは僅かにだが嫌な予感を感じる。
そこへパルミーナが手配した飲み物として果実水がテーブルへと届けられる。
「まぁ、飲み物でも口にして楽にしながら聞いて欲しい。それと希望があれば酒類も用意するから気兼ねなく言ってくれ」
「私はこのまま果実水でいいわ。皆も希望があれば遠慮せずに頼みなさい」
「私もこのままで構いませんわ」
「私も同じくです。キャロちゃんはお酒駄目だからね。酔うと大変なんだから飲むのは夜にしてね」
「分かったわよ。でも夜ならいいんだ。カルチナは欲張りさんね、今晩が愉しみね」
カルチナとキャロールの会話に呆れつつも念の為、釘をさす。
「あ、相変わらず仲が良さそうだが少ないとはいえ人目があるから常識ある行動を頼むよ」
「そうね、お痛が過ぎる様なお馬鹿さんには私が教育するから安心して頂戴」
フロレアールからの一言を耳にした面々が背筋を伸ばすのを見てパルミーナは本題へと進む。
「それでは順に説明するが、教会と指名依頼、そしてフロレアール君の招聘、一件関係が無さそうなこれら三件は微妙に繋がりがあってね。始めは既に衛兵から伝わっている教会絡みのから伝えるとしようか」
「私が聞いたのは新しく赴任した司祭ら神官絡みで何かあったって事くらいよ。衛兵さんからは貴女から説明されるだろうって言われたわ」
「なるほど、それでは教会については端的にはフロレアール君がその司祭と神官に恨みを買ってるからとの注意喚起やけいこくといった所かな」
「あのさぁ、何で見ず知らずの輩から町に居ない間に恨みを買ってる訳?」
探知反応が赤で示される程の恨まれている事に納得が出来ないフロレアールは説明を求める。
「君に直接的な落ち度は無いかね。憤りを感じるのは当然だろうね。これは新たに赴任してきた司祭とその腰巾着の神官たちから逆恨みを買ったとのものだからね」
「何よその理不尽な話は?それに直接じゃないってことは間接的に何か恨みを買うに至った事があったというの?」
話の理不尽さにフロレアールは納得出来ずにパルミーナに詳細を言うように疑問を投げ付ける。
「そうだね、恨みの原因は新設された教会に対する苦情から端を発したのさ。何で訳の分からない施設よりも神との繋がりを得る神聖な場である教会の方が小さいとの理由でね。そしてその施設ってのがご存知だとは思うがフロレアール君、この町の小さな英雄たる君を讃える為の施設なわけだよ」
「いや、私が頼んだ訳でも無いですし、元々居た住人たちの総意で建屋の大きさや土地の割り振りだって決めたんですから。それに建屋自体の大きさにそこまで顕著な差は無かった筈ですよね?」
「そうだね。建物の大きさの違い然程でないが、君を讃える施設には住人の憩いの場たる広場が一体で併設され、施設の敷地と明確に別れていないから敷地を遥に広く捉えたみたいだね」
「別に自分たちが資金を拠出した訳でも何かしら手伝った訳でもないのに随分と教会はお偉いのね」
「今回赴任してきた司祭がハズレって方が正解かもしれないね。何せ町の上役たちに抗議と該当施設などの教会への無償譲渡を臆面も無く要求してきたからね。因みに即座に否決されて役場への出禁が言い渡されたよ。この国では教会は政に関与することが許されておらず、貴族領では無いからとタカをくくったのだろうね。町の上役たちの住人個人に対して説法をしだけど言い張っていたよ」
「詭弁ね。その司祭とか神官を更迭するように王都の神殿とかには働きかけられないの?」
「教会側が政に関われない代わりに教会側に対しても逆に強く干渉できないのさ。事の事実を伝えてどう動くかは相手側次第になる」
「ほんと教会は黒いと思うわ」
フロレアールはゲンナリとして溜息混じりに独り言ちる。
「今回に関しては私も同意見かな。でも、司祭たちはこれで終わらなかったのさ。上役たちを懐柔できなかった彼らは施設に直接向かい、何らかしらの難癖をつけた上で日頃から施設を利用している町の住人たちを脅すなり、懐柔しようと考えた。住人の総意が協会側に方向けば町の上役たちも無視できなくなるとの魂胆だった。だが、これが最大の失敗だったんだよ」
今のチェーネは移住してきた者が八割をこえており、フロレアールの従属状態で無い者の方が多いので決して悪い手では無かった筈である。
そう考えたフロレアールはパルミーナに尋ねる。
「住人の相総意を得るのは悪い手ではないと思うのだけど何があったの?」
「施設に居た住人達によって結果として半殺しにされたんだ…」
「えっ!?一体何が起きたのよ」
「事前の通告も無く突如として司祭と神官が施設内に侵入したんだよ。この頃には既に町の住人たちには彼らが施設を欲しているのが知れ渡っていたからね。静止を無視して無理やりだったそうだ。そして施設内にあった君の像に難癖を付けたそうだ。君がこの町をスタンピードから救った際に人々が目の当たりにした、その大翼を背に有する身姿を象ったものだよ。中々の出来だから君たちも後で見るといいさ」
「それは素晴らしいですわ!!絶対に見に伺いますわ」
目を輝かせながら喜ぶカテジナに対してパルミーナが告げる。
「だがね、彼らはその像を魔人を象ったモノ、この場合はフロレアール君は女性だから魔女かな。即ち彼らはその場で君を魔女と断定したんだよ。知っての通り神様は神様あって名も姿も不要な尊き御方であるから教会にとしては偶像崇拝を是としていないからね」
この世界における教会の持ち得る強権の一つであり、使用される事は滅多にない異端審問権がある。
その対象である魔人は、魔男や魔女とも称される。
その者達は魔族が崇拝するという邪神に魅入られた者、もしくは邪神の眷属である悪魔に取り憑かれた者とされており、教会は異端審問と称して対象の者たちを捉えその事実を認めるまで拷問し、認めた際には魔神として処刑する。
無罪として認められるのは拷問の折に魔人と認めること無く死した者だけであった。
閑話休題
「何なんですのそれは!!そんな事は決して認めませんわ!!今すぐにでもその二人をぶっ殺してやりますわ!!」
激高するカテジナにフロレアールが落ち着いて話しかける。
「カテジナ、落ち着きなさい。施設も像も無事って事は、彼らの思い通りにはならなかったのよ。それに半殺しにされてるのだから続きがあるのよ」
フロレアールに諭されても怒りが収まらないカテジナ。
パルミーナはフロレアールに視線を向けると彼女は頷き返して話しを進めて問題無いと応える。
「その通りだ。彼らは神は唯一であり偶像崇拝は教会は許さない旨を告げた。そう言い放つと即座に魔女の像を崇めるものは異端審問の対象となり得ると言い放ち、魔女像は破壊すると言って像を破壊しようとしたそうだ。だが施設に居合わせた殆どの者が意に返さずに逆に司祭たちを不法侵入と器物損壊未遂の現行犯として嬲り殺し、いや半殺しにしたんだ」
「なんて素晴らしい方たち。私その方々に会って賞賛と感謝の言葉を送りたいですわ」
「カテジナくんは恐らく大半の人を知っていると思うよ。君の事を尊師とよんでいたからね。その…、この町で百合百合教とか薔薇薔薇教などと称される自由恋愛主義な人達なんだ。彼らが施設を自由恋愛の布教活動の拠点、そして生誕の聖地として日々施設の管理や清掃に従事している。因みに大翼の御使い像は、今では自由恋愛の象徴になっているよ」
百合百合教や薔薇薔薇教の信徒はチェーネ魔改造の期間に放置気味にされたカテジナが熱心に行った布教活動の成果によりその数を着実に増やしており、一人の信徒が新たな信徒を生み出す事でネズミ講的にその数を増やし、今ではヴァンデール王国全域にその勢力を広めつつあった。
閑話休題
「そんな彼らが司祭たちの暴挙を止め、衛兵に通報して事件が明るみになったんだ。スタンピードを生き延びた元々の住人は平民だとしても一味違うみたいで共に戦った衛兵とも懇意だからね。のことを知った司祭たちは傷を癒された後の取り調べでとても素直に犯行を認めたそうだよ。それと動機としては神殿や教会内での派閥争いでの点数稼ぎとして施設に目を付けた。神殿に近い規模の教会を新たに手に入れ、その功績を自身の手柄にする事を企んみ失敗したってのがこの話の結果かな」
「なるほどね。その結果として建屋に係わり、大翼の御使い像のモデルである私を逆恨みしていると言う訳ね」
「まぁ、そうなんだが司祭たちの悪巧みというか復讐はまだ終わってなくてね。事の真相が衛兵から領主である国王陛下へと伝われば王都の神殿に少なからず苦情は入るが確定てきだった。彼らはその前にチェーネの自由恋愛主義を偶像崇拝の邪教として報告し、自身の正当性を先に得ようとしたのだが、その事を知った教会内部の者から密告が寄せられ露見。司祭からの蝋封された密書は本件と共に国王陛下へと届けられて、施設の一件含めて王都の神殿に遺憾の意が伝えられた。その事から司祭も腰巾着の神官も派閥内で干され出世の道も絶たれ筈だから逆恨みから君や仲間への暴挙にでる恐れもあるから注意してくれ」
「了解したわ。まぁ、問題は無いと思うけど情報に感謝するわ。それで他の要件にはどう繋がるの?」
「この件を機にチェーネの町に代理領主が赴任してきたのさ。司祭やスタンピードで露見した問題点へと対処だそうだ。町の規模や住人の数からしても住民上役たちによる自治だけでは危うい面も露見した事で、上役たちによる意思決定に変わりは無いが可決内容に対して代理領主の監査が入るようになったよ。それと有事の際における迅速な対応体制の確立とその被害規模の抑制が目的だそうだ」
「悪い面は無さそうな話だけど、コチラの赴任してきた代理領主様はアタリなのかしら?」
「期間が短いから何ともだが悪くはない印象かな。それで要件の二つ目が領主館の建築についてで、コレは町から君への指名依頼となる。代理領主殿は今は空き住宅が仮住まい、役場に臨時執務室を設けている状態でね。可能な限り早く対処してもらえると助かる。既に図面も完成しており契約してもらえれば直ぐに渡す事が可能だ。用地は旧教会で建屋の撤去もお願いしたい」
「分かったわ。引き受けるけど完成までの期間や竣工後の修繕点さや改善点への対応期間についてはどうなるのかしら?私だって何時までもこの町に留まるつもりは無いわよ。」
「そこの点に関しては代理領主殿と直接交渉してくれ。結果を反映して契約書は直ぐに作成する」
「態々(わざわざ)直接会わないと駄目なのかしら?この程度なら期間の要望とか希望を予め提示すれば必要なさそうだけど?」
代理とは言えども先の話から貴族であることが確定しており、フロレアールは可能ならば直接会うことは避けたいと考えていた。
「済まないが最後となる三つ目の要件が関係しているから代理領主殿と会って欲しい。要件としては国王陛下からの招聘だそうだ。これはあくまでもこの町の領主としてだそうだ。因みに先の司祭絡みの件で、国王陛下は君の事を深く知るに至ったそうだよ。そして王都の神殿にも良くも悪くも君の名知られてしまった。ここからは私の想像だが、町を救った事への謝辞、城郭化協力への礼、そして君と面会し縁を築く事。恐らくは君の後ろ盾になろうって所だと思うよ。王国内なら神殿や教会に対する牽制にもなる。君も今後は冒険者として活躍し、他国へと渡る機会も生じるだろうから、その際の後ろ盾を得ておくのも悪くない筈さ」
パルミーナの言葉を受けてフロレアールは逡巡し、代理領主に会うことを決める。
「分かったわ。一先ずは代理領主には会うわ。招聘についてはその内容によってどうするか改めて判断するわ。代理領主へのアポ取りは任せて良いのかしら?」
「それは構わないが、君たちの予定はどうなのかな?」
「予定も何も町に来たばかりで此処に居ること自体が予定外だし、決まった予定も無いから代理領主の都合がつくのなら今日の午後からでも明日や明後日の好きな時間帯で構わないわよ」
「承知した。アポ取りはコチラで引き受けるよ。さて、リクエストを受けてた海鮮料理も届いたようだから君たちは食事を楽しんでいてくれ。その間に代理領主殿へのアポ取りは済ませておくよ」
そう言ってパルミーナは席を立つと、代わりに海鮮料理を買いに走ってたギルド職員が席へと近付いてくる。
テ収納からーブルの上へと次々と料理を取り出し始める。
魚介のグリル、海鮮と野菜の炒め物、エビや魚介のフライ、大海老と大蟹のボイル、シーフードパスタ、ビスクスープと山の小さな村育ちのフロレアールは目にしたことがないものばかりであった。
それらを食しながら腹黒ーナが顔を出して海鮮経験が皆無のフロレアールを小馬鹿にしたり、カテジナの謎知識で料理名やその食べ方、そして使用食材の大半は分かるが調理方法は知らないとの約立たずぶりが顕になるのであった。
こうして念願の海鮮料理に舌鼓を打っていると代理領主とのアポが本日の午後に取れたとの知らせが届くのであった。




