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063 悪夢

ご愛読ありがとうございます。


拙い文章ですが、面白いと思って頂けましたら“ブックマーク”や“いいね”、“感想”等にて応援頂けると幸いです。


これらの応援は執筆に際しての大変励みなりますので宜しくお願いします。

総隊長のアランは冒険者ギルド支部長パルミーナが到着するのを静かに待っていた。

しばらくして彼女を呼びに向かった衛兵が戻ってくる。

彼からパルミーナが呼び出しに応じ、間もなくこの東門へとやって来るとの報告を受け、アランは少し冷静になりつつあった。

相手が、誠意を示して謝罪してきたのならば、本件を水に流すのまやぶさかでは無いと考えていた。

そんな時もアランには確かにあったのだった。


冒険者ギルドチェーネ支部長パルミーナは部下の見目麗しいギルド職員を引き連れ姿を現したのだった。

その後ろからは冒険者と見られる一団と町の住人とおぼしき者たちが続いていた。

パルミーナは東門に辿り着くと自身を名乗りあげた後に、救援に応じてくれた感謝と移動への労い、加えてスタンピード解決により徒労となった事への謝罪を行う。

そしてパルミーナが頭を下げると連れ従っていたギルド職員たちも合わせて一様に深々と頭を下げる。

加えて先のイビルボアの一件への謝意と謝罪も改めて伝えられる。

の誠意ある姿を見たアランは謝罪を受け入れ、頭を上げるように促し、逆に雨の中での出迎えに謝意を伝えたのであった。

入場門から中の様子を見聞きしていた各騎士隊の隊長たちは、はかられた思ったのは自分たちの勘違いか何かだったのかと考えていたが、自体が急変する。

れはアランがパルミーナに対してイビルボア討伐とスタンピード解決を尋ねた事が切っ掛けであった。

パルミーナは“信じられないかもしれないが”との前置きをした後に説明を始める。

イビルボアは突如として現れた新人冒険者が一撃でイビルボアの頭部を粉砕して仕留めたと。

の冒険者のはフロレアールとの名で先月に成人を迎えたばかりの15歳の少女であると。

彼女は、その一件でAランク冒険者となり、“紅華べにばな”との二つ名を冠している事を。


アランは前置きを受けていたが当然信じる事が出来ず、思わず確認の言葉を投げかけてしまう。

そんなアランに対して、困った表情を見せながらパルミーナは真実であると答える。


「パルミーナ殿、れは冗談では無く本当の、真実なのであろうか?」

「信じられないだろうが、これが真実なので納得してくれ。何なら正式な討伐記録が残っているから後で確認するといいさ。当の本人も町に滞在しているから頼めばイビルボアの遺骸も見せてくれるかもしれない。もっとも売り払ったり解体などしてなければの話だがね」


加えてパルミーナの傍に控えている冒険者も自身もその場に居合わせており、真実であると証言してきた事からアランは納得する事にしたのだった。


だが、次いで説明を受けたスタンピード解決とチェーネの城郭に関しては納得する事は出来なかった。

自分たちがスタンピードの救援要請受けた当日の夜半には早くも第一波が襲来、住人たち義勇兵の協力もあり辛くも乗り越える。

夜明けを迎えると休む暇無く第二波が襲来するが建屋内に退避して難を逃れる事に成功する。

その日の夜半に第三波が襲来、増員した義勇兵の活躍もあり町自体の防衛には成功するものの、ギガントビートの大軍により入場門や併設する衛兵の待機所や物見塔は大破。

大破した箇所からフィアースボアやギガントビートの侵入を許すも衛兵隊や冒険者、義勇兵が一丸となり押し返すもAランクモンスターのグリムリーパービートが襲来する。

加えて夜明けを迎えた事で前日同様に第四波までもが襲来しようとしていた最中にくだんのフロレアールが白き翼を広げ空に現れる。

その白き翼から舞落ちた羽根がスタンピードの魔獣やモンスターの大軍を一瞬の内に葬り去る。

その中で唯一残っていた、グリムリーパービートをイビルボア同様に一撃で葬り去ったのだと。

その者が町の復旧を請負い、僅か四日間で城郭や空堀を築いたのだと。

パルミーナはこれが概要で事実であると伝える。


「パルミーナ殿は、その様な絵空事を我らに信じろと申されるのか?」

「アラン殿が何と捉えようとコレが事実なのだ。申し訳ないが納得してもらう他にない。」

「パルミーナ殿はれが人の成せる技だと言うのか?そんなのは人では無くバケモノだ。貴女あなたは悪魔や魔人にでも魅入られているのではなかろうな?」


アランがフロレアールの事を“バケモノ”、“悪魔”、“魔人”と評するとチェーネの人々の表情と雰囲気が豹変する。

そしてその言葉に耐えかねたカテジナがアランの前へと歩み寄り口を開く。

するとチェーネの人々もそれに続いてアランに対して罵声を投げ掛け始める。


「御使い様たるフロレアール様のお力を目にしてないのにも拘わらず、こちらからの説明を一切信じようともしない。ましてや事もあろうか“バケモノ”などと卑下するとは、わたくし貴方あなたが何者かは存じませんが許すことは出来ません。今すぐに発言を撤回し謝罪する事を求めますわ」

「そうだ、御使い様を愚弄するのか、痴れ者が!!」

「今頃ノコノコとやってきた役立たずのクズが!貴様こそ何様のつもりだ!」

「御使い様に対して失礼だ!地べたに額を擦り付けて謝罪しろ!」

「不敬な役立たずは消えろ、さっさとこの町から出ていけ!」

「我らが英雄たる御使い様を愚弄し貶めたんだ、タダで帰れると思うなよ!」

「そうだ、粛清するべきだ、生かして帰すな!」


徐々にヒートアップし始めた人々を見て暴徒化を危惧したパルミーナ。

彼女はフロレアールへこの事態を伝えて事態を収拾させるべく助力を願う為、キャローナを使いとして走らせる。

其の一方で自身でも何とか場を収めようと可能な限りの努力を試みる。


「双方とも少し落ち着こう。アラン殿すまないが、迂闊に彼女を卑下したりする事は控えて欲しい。今の反応を見てもらっても分かる様に、彼女は間違いなくこの町の英雄で、他者から御使い様と言わしめさせる力を持っているのだ。そして、その力を振るって我々を救ったんだ。カテジナ君、それにチェーネの人々も冷静になろう。君たちが慕う御使い様たるフロレアール君は失言程度で激高し、人をあやめようとは考えない筈だよ」


カテジナ)チェーネの人々はフロレアールを引き合いに出された事で一旦落ち着きを取り戻すがアランは違っていた。


「い、今のでハッキリとした。貴様たちこそ狂っている。間違いなくフロレアールとやらのバケモノに魅入られている。そうか、分かったぞ、我ら騎士団をのバケモノの贄として捧げるつもりでたばかったのだな。先程使いを走らせたのは事が露見しかけた事に焦ったのだろう?違うか?この狂信者共め!」

「アラン殿、どうか落ち着いてくれ。フロレアール君に使いを送った事は否定しない。だが、彼女には事の収拾の為に、この場へと来て欲しいと頼んだだけだ」

「収拾とはバケモノ自ら出向いて我らを血祭りにあげるという意味かな?。すまんが貴殿の言葉は信ずるに値しない。各隊長は部下に臨戦態勢を指示!!」


アランは疑心暗鬼に囚われ、部下たちに指示を飛ばす。

各隊長がそれに応じて部下たちに臨戦態勢への移行を指示する。

その折にカテジナが凛とした声で言い放つ。


「本当に情けない男ですわ。再三に渡る御使い様への愚弄もることながら、恐慌に陥り守るべき民へと剣を振るうおつもりですか?。英雄譚などに出てくる騎士団とは違って現実の騎士たちは本当に情けないですわ。コレでは平民の娘でさえも見向きしないのは当然ですわね」

「き、貴様、騎士たる、貴族たる我々を侮辱するのか?今すぐ取り消せ。一度だけは許してやる」

「カテジナ君、今のはマズい。発言を取り消すんだ!早く!」


パルミーナがアランの雰囲気が変わった事と貴族との単語を持ち出した事からカテジナに発言を撤回する様に叫ぶ。

だが、カテジナ応じる事なくアランへと逆に要求を突き付ける。


「御使い様を散々おとしめた口で何を言うかと思えば。お断りしますわ。貴方が先にフロレアール様を卑下ひげした事を取り消して謝罪するべきですわ」

「そうか、残念だよ。貴族には私刑を行う権利があって、侮辱罪でも行使が可能なんだよ。本当に残念だよ」


アランはそう言い放つと同時に抜剣してカテジナを切り付けたのであった。

それを見ていた騎士団の各隊長が突入を指示、一方の衛兵や冒険者たちが応戦しようと動き出す。

東門の脇に設けられている入場門からは、騎士団員が次々と町中へと侵入し始める。

侵入を終えた者たちは、侵入を食い止めようとする衛兵や冒険者達と相対し、騎士団の一部の者が大門のかんぬきを取り外そうと群がり始める。

そんな中、カテジナは左腕をダラりと下げており、の上腕からは、かなりの量の血が流れ出ている。

冒険者として培っていた経験が咄嗟とっさの回避行動を取らせた為、辛うじて切り落とされずに済んだが、その傷は骨にまで達しており、カテジナは苦痛に顔を歪ませる。

カルチナや町の住人たちもカテジナを救おうと動き出そうとする。

だが、アランが先に動き声を発する。


「改めて問おう。娘、発言を取り消して謝罪すれば許そう。断れば次は殺す」

「お断りしますわ。フロレアール様を貶めた貴方に謝罪するなんて御免てますわ」


アランが無言で剣を振り上げ、カテジナを斬り殺そうと振り下ろした瞬間、アランの剣が折れ砕け、その音が甲高く響き渡る。

剣を振り下ろすその瞬間までは無かった筈の白き盾がカテジナを守る様に突如として現れていた。

その盾は今も宙に浮いており、間違い無くアランの凶刃からカテジナを守ったのであった。

アランは信じられなかった。

折れ砕かれた愛剣はマジックアイテムたる魔剣であり“強靭化”、”先鋭化“、”鋭利化“の三つが付与された魔剣としては最上級に近いと言っても過言では無い一振であった。

これ迄に幾度となく分厚い金属製の鎧や盾、肉厚の斧や両手剣ですら切断せしめてた自慢の魔剣が折れ砕けたのである。


「なん...だと!?そ、そんな、ば、馬鹿な、俺の魔剣が折れ砕けるだと...。有り得ない。強靭化が施されているんだぞ。それに、この盾は何処から現れた?何故宙に浮いている?それに傷一つ付いていないだと!?有り得ない、有り得る筈がない」


ふと、アランは辺りが静寂に包まれている事に気付き周囲を見廻すと入場門から突入した味方の騎士たちは各々が複数枚の白い盾に挟み込まれ身動きを封じられていた。

入場門自体も複数枚の盾で蓋をする様に塞がれており、後続の騎士たちの侵入は叶いそうも無かった。

アランは折れた剣が手から滑り降ちるのを呆然としながら感じつつ、チェーネの住人とおぼしき人々が宙を見上げ一様に「御使い様」と口にしていることに気付き、視線をの宙へと走らせる。

そこには白き盾を周囲に展開し漂わせた黒いネコ耳付き外套を羽織った小柄な女性と思われる人物が浮いていた。

アランは悪夢の様な現実に脳が耐え切れなくなり、遠のく意識の中で“そうか、これは悪い夢だったのだ”との願望を抱きつつ気を失うのであった。

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