058 安寧
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五人の蘇生を無事終えたフロレアール。
彼女と蘇生を果たした者たちを取り囲むようにして、その光景を観ていたチェーネの人々。
その殆どが跪き、多くのものが手を組み涙を流しながら只々“御使い様”と口にしていた。
それはフロレアールからの命令により蘇生した五人と未だ言葉を理解せぬ乳飲み子以外は蘇生に関わる言葉をフロレアールに向けて口にする事が出来なかった為であった。
それは“奇跡”、“聖女”、“聖人”、“蘇生”、“生き返り”といった蘇生魔術を連想し兼ねない言葉。
蘇生を果たしたカルチナを含む五人は、親しき者が駆け寄り涙し、只々“良かった”とだけ声を掛けられ続けていた。
それでも最後に蘇生を受けた衛兵の男以外は、フロレアールが蘇生魔術を行使している様を見た事で、己が一度命を落とし、フロレアールの力で蘇生の奇跡を賜った事を察していた。
それでもカルチナ達は、“自身は死んで蘇生したのか”と近くにいる親しきものたちに尋ねても肯定も否定も得られない。
そのことで、未だ何の説明も無く、己が問に対する答えすら得られないことで混乱に拍車が掛かる。
そんな彼女らにフロレアールが事の経緯を改めて説明する。
チェーネを襲い周囲を取り囲んでいた魔獣やモンスターは自身が殲滅したこと。
同じ細長い台に乗せられて並んでいる五人は、それらとの防衛戦で命を落としたこと。
それを自身が蘇生魔術を行使して蘇らせたこと。
そして人々に自身の蘇生魔術に関して話す事などを禁止したこと。
それらの説明を終えたフロレアールは、カルチナたち蘇生者五人に対しても自身の蘇生魔術に関してチェーネの人々と同様の命令を伝えたのであった。
次いでフロレアールはパルミーナに声を掛ける。
そして床に伏せていたにも関わらず広場へと連れてこられた者たちを一箇所に集める様に指示しする。
その一人一人の症状を確認して癒してゆく。
それは広場に連れ出したことで容態が悪化する事をフロレアールが危惧した事と、その者たち数名が従属状態となっておらず、確実に魅了し従属状態にする為でもあった。
その後、改めて蘇生と人々を癒した事を口にする事など禁ずる命令を浮遊しながら音声を拡大して伝える。
それに併せて認識加速状態へと移行、探知にて非従属の者が残っていないかを念入りに確かめる。
数名の乳飲み子を除き全員が従属状態であることを確認し終えた事から、フロレアールはパルミーナの元へと向かう。
解散させて問題が無い事を確認し、その旨を音声を拡大して人々へと伝える。
こうしてチェーネのスタンピード防衛戦は終息を迎えたのであった。
広場から人々が一斉に去り始める。
ある者は自宅や職場へと歩を向け、またある者は防衛戦の後処理へと取り掛かる。
フロレアールはカテジナ、カルチナ、キャローナの三人の元へと向かう。
すると珍しくカテジナが気付く前にカルチナが声を掛けてくる。
「黒百合様、あの、その、ありがとうございました。えっと、その、...。ふぇ~ん、キャロちゃんお礼伝えたいのに、ありがとう以外言葉が出てこないよぉ~。」
「もぉ、何してるのよ、しっかりしなさいよね。フロレアール様、カルチナを、その、あれっ?、ありがとうございました。ど、どうしよう、カルチナのガッカリスキル移って私までおバカになっちゃったの!?。」
どうやら二人は“蘇生”とか“生き返らせて”等を口にして礼を伝えようとして言葉に詰まってしまい、謝意を伝えたくても言葉に出来ずオロオロとしている。
そんな二人を見てるカテジナの表情に青筋が見え始めたので助け舟を出す。
「二人とも落ち着いて。御礼は伝わってるから安心して。ゴメンね、悪いけど私のスキルで聖女や蘇生に関する言葉は口に出せない様に強制させてもらったの許して頂戴。だからカテジナも目くじらを立てないでね。」
「承知致しました。フロレアール様、挨拶が遅くなりましたが、お帰りなさいませ。そして私共をお救い頂き、ありがとうございました。フロレアール様が謝る必要は御座いませんわ。」
「うん、ただいま。遅くなって悪かったわ。三人とも無事って言い方も変だけど、カルチナも救う事が出来て本当に良かったわ。」
「その、凄かったです!。对の白い翼を生やしたフロレアール様が現れたと思ったら、パって空が一面が真っ白くなって。それでドンバンって音が響き渡ったらスタンピードの魔獣とかモンスターが居なくなってて。空が紅と黄の華に覆われてて。ほんと凄かったです。」
「そんな事があったんだ...。黒百合様に翼が生えたら、もう天使様だね。でも、ちょっと残念です。天使様な黒百合様を見てみたかったなぁ。」
「キャローナ落ち着いて。話し方が抽象的でアホな子みたいになっるわよ。ことろで立ち話していても仕方がないから、一先ず冒険者ギルドにでも向かいましょうか。」
「「「はい。」」」
三人からの返事を受けたフロレアールは周囲に人が居ないことを探知で確認した上で、未だ血塗れの三人に浄化魔術を掛ける。
そして素足のカルチナを気遣い、自身とカルチナに飛翔魔術を行使してカルチナを抱き抱え僅かに宙に浮かぶ。
「えっ!、浮いてって、えぇ〜。く、黒百合様、その、は。恥ずかしい、です...。」
「カルチナ、貴女素足なんだから我慢しなさい。私が嫌ならキャローナに任せるわよ。何時ぞやの意趣返しで面白そうだけどキャローナも疲れているだろうから。私で我慢しなさい。」
「分かりました。黒百合様、お願いします。」
そう言うと顔を真っ赤にしたカルチナが姿勢を固定するのにフロレアールの首に腕を廻しもたれ掛かる。
「うわぁ、お尻と素足に当たる黒百合様のお胸がすっごく柔らかくてプニプニしてて気持ちいです。其れに凄く良い香りがします。」
顔を上気させたカルチナが遠慮のない感想を述べたかと思うとフロレアールの左側うなじや首元を“くんかくんか”と犬の様に嗅ぎ続ける。
「ちょっ、カルチナ羨ましいですわ。!!っ、そうですわ、えいっ♡。」
そう言い放ってカテジナが浮いて自身の背より少し高くなっていたフロレアールに後ろから抱き着くと、胸を揉みしだき始めるのに合わせて右耳の裏側をカルチナに負けじと嗅ぎだし始め、終いには舐めたり吸い付き始める。
「んっん、ちょっと、カルチナ止めなさいって、っん。」
「えっ、舐めなさいですか♡!?。はい、喜んでお舐めしますわ。」
「やっ、ちょっと離れなっん...。キ、キャローナ、悪いけどカテジナを、引き離して。」
「す、すみません。ちょっと私では無理そうです。」
言葉を聞き違えたのか故意なのかは判らないがカテジナが右耳にしゃぶり付き舌で右耳を嬲り始める。
しゃぶりつきながらザンネン(カテジナ)が、んんん(この様なご褒美を頂けるとは辛抱堪りませんわ)と唸る。
「っん、はぁ...。ザンネン(カテジナ)、いい加減に、しなさい!!。」
堪らずフロレアールはザンネン(カテジナ)にも飛翔魔術を行使して自身から引き剥がすと宙吊りの状態にする。
宙吊りのザンネン(カテジナ)はスカートが捲り上がり、白く美しい太腿と下着を露わにする。
お仕置としてザンネン(カテジナ)は、宙吊りの状態でギルドまで運ばれるのだった。
だが、当の本人は露出羞恥プレイの快感に目覚めてしまい、顔を上気させている事にフロレアール達三人は気付いていなかった。
パルミーナはチェーネの人々の異常さの原因がフロレアールにある事を察していた。
彼女が何らかしらのスキルにより、チェーネの町の全住人をその影響下に収めており、そして自身も既にその影響下にあると悟っていた。
其れはフロレアールから指示や頼まれた事に従順に従ってしまう自分に気付いた為である。
目的や理由を告げず町の全住人を集めろといった本来ならば従うはずも無い指示であった。
目的や理由を確かめた上で可否を判断しなければならない事は重々理解している。
彼女の圧倒的な力を目にした後だったとしても、そこまで冷静さを欠いていたとは考え難かった。
それなのに、何の疑問も抱かず出来るか否かだけの判断で其の指示に従っていた自分がいた。
だが、催眠状態とは違い己が判断して指示に従っており、こうして疑問を整理する事出来ることから自身の状態を把握しきれず困惑している。
加えて彼女が聖女である事、身体の欠損を有する死者を蘇生させた魔術について、彼女は命令としてこの件に関して口に出すことを禁じた。
こうして考え疑問に思う事は出来るのだが、実際に声として口にする事が出来なかった。
カルチナたちを蘇生させた後、彼女が近付いて来た際に問い掛けようとしたのだが、何故か問いとして口にする事が出なかったのである。
また、蘇生の奇跡を目の当たりにした人々からも聖女や奇跡といった言葉が一切発せられていなかった。
この事から少なからず行動の制限や強制を課すことが可能なのだろうとは推察出来ている。
危険なスキルの可能性も否定出来ない事から他のギルドに警告を発しようかとも考えたが思い留まる。
あれ程の人知を超越した力を保有し、身体の欠損を有する死者を蘇生させるなど聖女としても規格外と言える存在である。
その気になれば余計な手間を掛けずに目撃者を消してしまうか、その力で脅してえば済む話である。
命令された事も結果としては自身が聖女である事の隠蔽であり、町を救うために命を落とした者を蘇生させた事から悪人とは思えなかった。
こうしてパルミーナは他のギルドへの警告は行う必要は無いと判断する。
それが従属状態に陥いり思考誘導された結果だとはパルミーナは気付く事は無かった。
其れはフロレアールにとっては実に都合の悪い事であったが為である。
魅了後数日も経てばフロレアールに対する思考矯正が完了し、彼女に対して疑問を抱く事すら出来なくなるとは露知らずに。




