044 躾
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討伐確認を終えたフロレアール達は冒険者ギルドへと戻っていた。
カテジナも意識を取り戻していたが、ギルドの隅で体育座りをして頭を伏せている。
そう、カテジナはいじけていた。
起こすと面倒だからとギルドの隅に捨て置いて皆で広場に向かったのが拙かった。
その間に目を覚ましたらしく放置プレイがお気に召さなかった様である。
あ、カテジナが頭を上げて戻ってきた私たちの様子を少し潤んだ瞳で伺ってきている。
フロレアール達が一様に少し可哀想なことをしたと互いに顔を見合せ少し後悔する。
いたたまれない雰囲気がギルド内を包み込む。
その瞬間、カテジナの頬が上気して顔がニヤけ、プルプルと身震いし始める。
「くぅぅぅ、これが噂に聞く放置プレイ。哀れみと蔑みが混じった他人の視線に晒される屈辱と羞恥。コレは堪りませんわ。私、癖になりそう...。」
感想を述べたカテジナは蕩け顔を浮かべて己が身を抱きしめモジモジと上半身をくねらせ始める。
どうやら心配は必要なかった様である。
皆が一様に、サヘランですらゴミ見る様な目付きを浮かべてカテジナを眺めている。
本当に残念である。
新たな愉しみを見出したザンネンさんは御要望に応え放置され討伐関連の手続きが再開される。
まず始めにフロレアールの冒険者ランク及び二つ名の登録が行われる運びとなった。
報酬の受け渡し前に冒険者ランクの登録が行われるのは、過去に報酬のみを受け取り冒険者ランクの昇格を避けようとする者が結構な割合で居たからだそうである。
冒険者登録と違い今回は受付窓口に設置されている魔道具を用いての手続きとなった。
「それではステータスプレートをこちらの窪みに乗せてください。」
キャローナの言葉に従いステータスプレートをお腹のポケットから取り出す。
事務室の魔道具に類似したステータスプレートよりも一回り大きい窪みにステータスプレートを乗せる。
事務室の魔道具物と同じであったが窓口の魔道具には異なる点がある。
ステータスプレートを乗せた窪み以外にもやや小さ目の細長い窪みが複数設けられていた。
するとカルチナが事務室から何やら平たいケースを持ってくる。
ケースの中には六色の小さい棒がケース内の枠に綺麗に並んで収められている。
色は上から順に金、紫、赤、黄、青、緑があり、各色毎に太さと長さが異なる五種類のサイズが見受けられる。
「黒百合様、お待たせしました。今からAランク討伐ポイントを付与となります。」
そう言うとカルチナはケースの紫色の物の内で一番長くて太いものを取り出しキャローナへと渡し、その棒が丁度収まる細長い窪みに乗せる。
どうやら棒の色がランク、サイズが加算するポイントとなっている様である。
「それではポイント付与となります。これを終えると冒険者ギルドにAラング冒険者として正式に登録されます。最後の確認ですが宜しいですね?。」
「わざわざ確認するなんて仰々しいわね。勿論構わないわよ。」
「これも決まりなもので。Aランク到達となりますので次いで二つ名の登録をさせて頂きます。それではフロレアール様、こちらに手を乗せてください。」
キャローナに促されて事務室の魔道具と同様の手形に己が右手を乗せるフロレアール。
冒険者登録の際と同じ様に魔道具に付随するオーブが蒼く輝いた後に光を失う。
すると魔道具に置かれたフロレアールのステータスプレートに変化が生じていた。
それはステータスプレートに記されている己が名の上に”冒険者ランク:A“と紫色で他の文字よりも大きい太文字で記されている。
「改めて、おめでとうございます。これにてフロレアール様は名実共にAランク冒険者となられました。ご存知だとは思いますが、高ランク冒険者の方には準強制依頼が課されることがあります。街などへの入場の際に行われる身分証明の折に伝えられますので御留意下さい。」
「へ!?、ちょっとステータスプレートに冒険者ランクが記載されるなんて聞いてないわよ。それに街とかに入る毎に下手すると準強制依頼が課されるって罰ゲームか何かなの!?。」
「えっ、聞いてないって冒険者登録の前に説明してる筈ですが...。それにお渡しした手帳にも記述されおりますが...。」
「キャロちゃん、ごめんなさい。事前説明は金百合様が黒百合様にするからって拒否されちゃったの。手帳はお渡ししたのですが、やっぱり御覧になられてなかったのですね...。」
確かにザンネンが時間の無駄とか自分が説明するからと言ってカルチナを脅し、事前説明を止めせていた。
確かに手帳も受け取ったのだが、その直後にショックな出来事があってすっかり忘れていた。
「説明拒否されたからって、ちょっとカルチナ何してるのよ!。ランク登録終えたらステータスプレートを再度賜っても二度と消えないのよ!!。フロレアール様、本当に申し訳ありません。」
「黒百合様、すみませんでした。」
キャローナとカルチナが頭を下げてくる。
「えっと、二人とも謝らなくていいわ。カルチナが説明を止めたのはザンネンが脅したのよ。だから気にしなくていわ。手帳を受け取ったのも確かだし、目を通さなかったのは私の落ち度ね。」
「フロレアール様がそう仰るのなら...。この件は不問にさせて頂きます。でも、カルチナ二度目は無いからね。」
「フロレアール様、キャローナ。本当にごめんなさい。」
「キャローナ、カルチナも反省してるからその辺で許してあげて。全部ザンネンが悪い。後で始末しておくから。」
「分かりました。本来なら解雇相当の規約違反なので...。ご迷惑お掛けしました。」
たかが説明と思っていたけど重大な規約違反だったのね。
そういえば、カルチナも説明を止められた時に泣きそうになってた。
あれは脅されて貶された事だけに涙した訳じゃ無かった様である。
下手したら愛しの人と同じ職場を辞める事になる所だったのね。
さて、こうなれば駄犬を躾ないと。
「おい、ザンネン。こっちに来て正座しろ。」
カテジナは「はい!」と短く返事をして駆け寄ってきて正座する
その姿は待ての指示を受け続け、未だか未だかと待ち焦がれていた忠犬そのものである。
「オマエ、冒険者登録の事前説明を無理矢理止めさせて自分が後で説明するって言ってたよな?。私は未だ説明聴いてないのだけど、どういう理由かな?」
「それは説明する時間が惜しいからですわ。私は一時でも長くフロレアール様と共に過したいのです。ですが、私が一方的に話し掛け続ける事は望むものでは有りません。」
カテジナは両頬に手を添えて「キャッ、言っちゃった」とばかりに頬を朱に染めてイヤイヤと頭を左右に振る。
「そうか、なら駄犬には躾が必要だな。」
「!?、OSHIOKI、ご褒美ですか♡。」
フロレアールは左手でカテジナの顔を鷲掴みにする。
「オマエの欲望で私含めて他人に迷惑を掛けるな!。約束した事は守るものだろうが!!。」
フロレアールはそう言い放つと、顔と左手の相対位置を固定化させるイメージ構築して魔術として行使する。
併せて治療魔術も同時並行で行使しカテジナに掛け続ける。
その状態でカテジナの鳩尾を己が右足で幾度と無く蹴り付ける。
チェーネの町にある冒険者ギルドには「ゲハ」「ゴハ」といったくぐもった呻き声が響き続けるのであった。
カテジナがフロレアールに対して冒険者登録前の説明が行われなかったのは、彼女の中でのフロレアールに対する御奉仕の優先順位が残念な事になっているためです。
現時点の優先順位は以下になります。
一番が己を自身を捧げる淫らな御奉仕。
二番が百合百合教の布教と信奉者獲得や不敬者等の粛清。
三番が僅差でフロレアールの従者としての補佐等の奉仕や雑務。
四番がフロレアールからのその他の依頼事項への対応。
今回の冒険者に関する説明は、カテジナからフロレアールに対した提案でした。
フロレアールから明確な“教えろ”との指示が無かった為、残念ながらToDoリストにすら入りませんでした。




