004 支度と旅立ち
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村全体を従属させているのなら、そのまま村に居て気楽に過ごせば良いと思う人もいるかもしれない。
でもね、私の立場になって冷静に考えてみてよ。
同じ環境に住み続けるなら小さな村よりも大きな街のほうが良いと考えるのが当然だと思うの。
だって街の方が美味しい料理や可愛い服とかも村とは比べものにならない程、沢山あるはずだしね。
ワタシナニカマチガッテルカナ?
それに加えて、以前に旅の吟遊詩人が謳っていた、美少女魔道士の物語が大好きだった。
謳われし彼女は盗賊や野党などを駆逐し、富と名声を得ながらながら旅をする。
そんな物語にも憧れがあったことも村から旅立つ理由の一つであることは否めない。
他の理由としては大きな問題を抱えていた。
そう似非聖女の発覚である。
聖女スキルを有していないことは、当然ながら誰にも話してはいない。
加えて似非どころか傾国の美貌との悪女そのものの代名詞たるユニークスキル。
これって聖女と対極の詐欺案件だよね!?
万が一に露見したら、間違いなく神殿や教会から命を狙われて消されること請け合いである。
恐らくは人々を誑かす聖女を貶めた悪魔とかに認定されて最終的に処刑される結末が想像に難くない。
救いとしてはユニークスキルは他者から確認できないことだが、私自身その気になれば従属状態の相手ならば保有しているスキルを聞き出すことは容易い。
それに一部の裁定官やマジックアイテムには事の真偽を判別するスキルがあると広く知られている。
これについては幼少教育での嘘つきはダメとの小話ネタなんだけど念には念を入れておくことにしよう。
不幸中の幸いとしては、上級クラスの神聖魔術自体の行使は可能なため、似非聖女でも問題は無いとも思える。
だけど、上級クラスの神聖魔術の行使以外に、聖女や聖人のみが可能な事があった際には詰むことは確実である。
加えて成人となった今では権力者による囲い込みなどを受けることも考慮する必要がある。
最悪のケースとしては城や神殿などに軟禁されることも考えられる。
その時はステータスにものを言わせて実力行使も辞さない心構えをしておこう。
それとは別になるが、チートな傾国の美貌の従属状態にも厄介な落とし穴が露見した。
それは結果として私個人に不利益となりえる行為でも、当事者が私に対して良かれと思っている場合には従属による自動的な抑制が働かないことにある。
これは村の神官が過去の蘇生時に聖女発見との一報を神殿に送ろうとしていた事から推察される。
その時は私が成人の儀にてステータスプレートを賜る前であることから聖女としての周知を望まない旨を伝えたら、神官は二つ返事でアッサリと承諾したのである。
そのことからも間違いなく当時の神官は従属状態であったはずである。
加えて今回の成人の儀を終えた直後の事である。
神官が改めて神殿に聖女降臨の一報を入れようと既に封書の準備すら終えていたのだ。
私は反射的にその封書は消し炭にして、神官を尋問して同様の封書が無いことを確認した上で、神官には他者へ周知することを禁じたのだった。
神官に関しては今後の心配ないと思うけど、一抹の不安を感じる。
確かに“成人の儀の前は周知を望まない”と言ったのは私だけれどもね。
まぁ、傾国の美貌の注意点が分かったから良しとしましょうかね。
因みに私が聖女であることが村外に伝聞されることを私自身が望んでいないことは、リザレクションを行使してお通夜から一転して聖誕祭となった際に村中に認知されている。
村の住人以外が居る場面では、私は聖女と称されることも無かった。
この事から生まれ故郷の村以外には私が上級クラスの神聖魔術を使えることは知られていないはずである。
色々と理由は並べたが、最終的に私は憧れの美少女魔道士の名言「悪人に人権は無い」に則って、盗賊や野党を狩りながら富と名誉を稼ぎながら一人旅をすることを決意するに至ったのであった。
私フロレアールは自慢ではないけれども、生まれてこの方村から出たことが無い。
そんな私は当然ながら旅に必要な知識や道具、装備品などは一切持ち合わせていなかった。
知らないことは悩んでも埒が明かないと村の人達に尋ねる。
すると基本的な旅の知識について親切丁寧に教えてくれたので最低限必要な知識は得られた筈である。
だが、その際に私は村を出て一人旅をすることを決意した旨を伝えたのがマズかった。
口を滑らせた瞬間に皆が自宅へと駆け戻り、各々が所有している旅に必要と考えられる装備品やら物資などを持ち寄ってきたのだった。
結果として村中から様々なものが掻き集められてしまったのである。
持ち寄られた物資には当然ながら重複しているものが数多く発生する。
村人達がその中から一番良質で上等なものを厳選しつつ、時には協議しながら旅支度は急速に進められたのであった。
村中の住人が集まるお祭り騒ぎで厳選作業が進む中で重大な問題が発生した。
それは武器をどうするのかというものであった。
魔術を得意とする私だが迷わず声をあげる。
「ショートソードが使いたい」
そう、これだけは何があっても譲れなかった。
何故なら憧れの美少女魔道士はショートソードを携えていたと謳われていたのである。
だが、結果としてはその願いは叶わなかった。
ショートソードを譲り受けたまでは良かったわ。
憧れだったもの。
そして基本的な使い方を学ぶ最中に試し斬りを望んだのが誤りだった。
私は慣れない試し斬りに際して、己の人外ステータスで全力で臨んだ。
過去の英雄を凌駕する能力値が込められた一撃。
それは小さな田舎の村にあったショートソードが耐えきれるものでは当然なかった。
全力全開の一撃、それは謎の衝撃波と破裂音が生み出され、案山子代わりの丸太とショートソード自体を諸共粉砕したのであった。
その後は哀れんだ表情を浮かべた村の人たちから慰めを受けるも同時に死刑宣告を受ける。
「刃が付いてる獲物は扱いが難しいから別なモノでも構わないですかな?」
その問に対して夢敗れて死んだ目をした私がポツリと呟いた。
「もういいわ。扱いが簡単で壊れ難い頑丈な武器を選んで」
そうして用意されたモノ、それは白みがかったメイスであった。
そうだよね、剣などと違って刃が無いから握りや刃の向きを気にする必要もない。
引き斬るといった技術も必要としないなら素人の私にはピッタリ。
厚く重い金属の塊であるソレの特徴は他の武器が比較にならないほど頑丈でした。
朧気だけど何故か神官がドヤ顔していた気がする。
そんなこんなで旅支度が進み村の厳選装備と一人旅としては多すぎる物資が用意されている。
得られた物資や装備品でめぼしい物がこれらである。
お金(憧れの人も一番大事と言ってたわ)
それなりに可愛いと思える旅装束とフード付きの外套(村の奥様たちが絶賛裾上げなどのサイズ直し中)
やたら頑丈な白メイス、ナタとしても使えそうな良質な肉厚なダガー
そして旅人の必需品であるマジックバック二種である。
因みにこの世界のマジックバックには、ダンジョンから得られるものと錬金術スキル保有者成品の2種が存在している。
ダンジョン産の特徴としては収納後は時間経過が生じない。
一方の作成品は普通に時間経過するといった違いがある。
その二種を旅立ち時点で得られたことは幸運であると言える。
尤もこの世界のマジックバックの価値はそこまで高くない。
その理由は、複数のマジックバックを所有しても意味が薄いからのある。
例えを上げると私がAのカバンに収納した物品は別のBのカバンからでも取り出すことが可能なのだ。
収納量は使用者の魔力量に応じて増減するので、複数のマジックバックを所持しても増加はしない。
その為、個としてのマジックバックの価値は低いのであった。
そして厄介なのがマジックバックの収納可能量は二種のマジックバックの総和なのである。
複数所持は破損への備え程度であり、一つのカバンを複数人でシェアして使用することが当たり前となっている。
そうして迎えた旅立ちの時、因みに村人達は誰一人として引き留める声もあげなかった。
加えて言うと涙する人すら誰一人として居なかったよ。
うん、従属してるから引き留める行為になりかねない涙とかは出せなかっただけと分かってるの。
実は陰ながら嫌われてた訳じゃないよね?
でもね、実際に諸手を挙げて見送られると流石にSAN値が削られ涙が溢れてきたよ。
こうして私の旅立ちは涙ながらに始まったのであった。
フロレアールは現時点でヒューマン(人)平均の14倍程の身体能力を有しており、力と敏捷がピーキーながらも出力調整可能で、他の項目は常に全力全開で仕事をしています。
ショートソードの試し斬りで発生した衝撃波と音は、その一撃が音速を超えたことによるものとなります。
丸太とショートソードが砕け散ったのは、ソニックブームに加えて、音速での衝突、また技量がないので丸太にショートソードを叩き付けたことが複合した結果として生じました。
フロレアール自身が無事なのは屈強が人外なお陰です。
マジックバックの金銭的価値は現代のブランドバック程となります。
本来は錬金術のレアスキル保有者が修練により取得した魔術付与スキルを用いる事でマジックアイテムや魔道具作成が可能に至ります。




