029 酒宴
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イビルボア討伐の報をチェーネの町を駆け巡っていた頃、ライジンたち冒険者とフロレアールは冒険者ギルドに討伐完了報告に向かっていた。
冒険者ギルドはかなりの広さを有する木造平屋建て横長の建屋で、そこに隣接する宿舎は二階建となっていた。
ギルドは入口から綺麗な受付嬢のお姉さんが居る受付窓口に面した一角と窓口裏が事務室や資料室などが備えられており、入り口から入って右手方向の建物の半分が酒場兼食事所となっていた。
ライジンたちが討伐完了の旨を受付嬢に伝え、確認部位はイビルボアの頭部を欠損した遺骸全体と伝える受付嬢は驚いた様子で、既に夕暮れとなっていたので今から街中での確認は困難との判断となり、明日改めて行われる運びとなった。
なお、討伐報酬に関しては既に用意されているとの事であり、確認完了後は速やかに支払われると聞いた討伐隊メンバーから歓声があがる。
そこで話しが出たのは私の冒険者登録についてであり、ステータスプレートがあれば簡単に登録は可能との事。
修行中の神官も稀に登録しているとの事であったので登録前提で前向きに検討すると伝えると受付嬢さんが嬉しそうに微笑み返してくれたところへ宴席が設けられるとの知らせと共に主賓としての招待を受けたのであった。
宴が始まってから三時間程が経ったが未だに宴が終わる様は感じられない。
周囲からは宴を楽しむ声や討伐を讃える声が飛び交っている。
「今日は朝まで飲み明かすぞぉ。」
「おい、主賓様たちの席で料理と酒が残り少ないところがあるぞ、じゃんじゃん追加を持ってい。」
「俺たちは生き残った、勝ったんだ。」
「俺は確かに見たあの化け物の頭が弾け飛んで真っ紅な華が現れたんだ。」
「それならあの嬢ちゃんの二つ名は紅華だに決まりだな。」
「Aランク魔獣の単独撃破なんだから二つ名付けないのは可笑しいだろ。」
「俺、討伐終わったら告白しようと思っていたんだけど諦めることにした。」
一部変な声も混ざっているが気にしたら負けである。
主賓席の中央ではフロレアールが一人フードファイトを繰り広げていた。
その隣には、少し嬉しそうにそして誇らしそうに甲斐甲斐しく給仕するカテジナの姿があった。
「御使い様、お飲み物をどうぞ、次にお召し上がりになりたい物があればお申し付けください。なんなら私をデザートとして御所望とあらば喜んでお受け致します。」
そう言いつつ、フロレアールのグラスに注ぐのは甘口で飲み口は良いが酒精度数の高い所謂落とし酒というもとである。
この日、フロレアールは成人後としては初の宴席であった。
成人の彼女には、酒が当然の様に振る舞われ、酒を飲み慣れていない彼女は、最初は度数が低い果実酒や蜂蜜酒を飲んでいた。
しかし、フロレアールに全く酔う気配が現れなかった為、徐々に酒精が強い酒が振る舞われて、漸く酒に酔っているのを自覚する程度に至ったのであった。
一方ほろ酔い気分のフロレアールは、全く満たされる気配が訪れない自身の食欲に戸惑っていた。
それは町総出の宴で主賓席の中央に座したため、宴に参加した住人全てに己の容姿を晒しすことになったのである。
結果として、町の乳幼児や床に伏せている者といった極一部の者を除くチェーネの町に住まう、そのほぼ全ての住人を一気に従属状態に貶めたのである。
それに伴い、従属の簒奪者が牙を剥き無慈悲に犠牲者達からステータスを簒奪する。
その結果、討伐隊19名、衛兵25名、住人488の合計532名が本日の贄となったのである。
フロレアールは簒奪値によるステータスの上昇により、急激に増加した生命力や体力を補うべくエネルギーを躰が欲したのである。
凶化されたステータスが驚異的な早さで口にした物を消化吸収する。
「そんなデザートを食べる趣味はないわよ。私はちょっとお花を摘みに行ってきます。」
躰の欲するがままに大量の料理や酒などを摂取したフロレアールは飲み食いした分は外に出るとの自然の摂理に逆らえず席を立つ。
「いってらっしゃいませ。」
仰々しく見送った後、カテジナはフロレアールが戻って来た際に手渡す手拭きを用意し、自身の収納からアルモノを取り出す。
それは媚薬であった。
冒険者というものは荒事が多く何時死が訪れてもおかしくはないものである。
彼女は惹かれた人といつの日か結ばれる時に己が逃げない様にする為に用意していたソレをフロレアールの飲み物を継ぎ足す事に併せて密かに加え入れる。
フロレアールは油断していた。
従属状態の者は悪意や敵意を抱けず、それに類する事は行いない。
だが、従属者本人が主人たるフロレアールの為になること、喜ばれることと思っている事に対しては抑止効果が働かないのである。
厠へは行ったが浄化魔術で事を済ませたフロレアールが思いの外早く席に戻ってくる。
カテジナは何も無かった様に手拭きをフロレアールに手渡す。
次いで料理をフロレアールに勧め、頃合いを見て媚薬入の酒を勧めフロレアールが飲み干す様を見届ける。
それから半時ほど経過するとフロレアールは食を止めて、上気した顔で飲み物をちびちびと飲むようになっていた。
するとカテジナが耳元で息を吹き掛けるように淫らに厭らしく呟く。
「御使い様、お食事は堪能されたご様子ですね。宜しければデザートに私をお召し上がりくださいませ。」
媚薬に侵され淫乱スキルまでもが作用しだしていたフロレアールからは断る選択肢が消え失せていた。
「それじゃあ頂いちゃおうかしら。」
とカテジナに甘く呟き返すと、そこからのカテジナの動きは迅速であった。
殊勲者であるフロレアールは宴に満足してお休みになられると町の上役と思しき者へ伝え、街の宿で一番良い部屋をすぐに用意するように申し付ける。
次いで未だに飲み騒いでるライジンたちにも同様の事を伝えると共に「フロレアール様はお酔いになられてるので同性の自分が部屋までお送りする。」と一言付け加えていた。
そうしてフロレアールの元へと戻りフロレアールを介抱する振りをしつつ、耳元で甘く囁いたり、耳や首筋にソフトタッチを繰り返して部屋の準備が整うのを待っているのであった。
暫くして部屋の準備が整いましたとの報を受け、カテジナはフロレアールを支える様にして宴席を後にするのであった。




