028 チェーネの小さき英雄
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最初の目的地とした町チェーネに到着する。
人生初の旅、それも一人旅に加えて様々な予定外の事態にも直面した事もあり、フロレアールは一際大きい達成感を味う。
そして故郷の村よりも大きな町に対する期待で、人よりもたわわな胸をより大きく膨らませるのであった。
イビルボア討伐地点から真っ直ぐに向かって3km程の距離にチェーネの町は位置していた。
ライジン達を無視して街道を進んでいれば2km強程であったことからギリギリ探知に映らなかったようである。
もし町が探知に映っていたら、討伐隊の運命は違うものになってい筈である。
ライジン達に町のことを色々と尋ねながら、怪我人や体力が回復していない者も複数居ることから、一時間ほどを要してゆっくり移動する。
チェーネの町は、人口500人程の町としては小さ目の規模だが、近隣の村や町へと伸びる街道のハブ宿場町との事で、食材などの在庫も町の規模以上に豊富だそうである。
因みに、町にあるのは教会なので後日忘れずに立ち寄ろう。
町に宿屋は三件あるがライジン達冒険者は冒険者ギルドに併設してる宿舎に宿泊しているそうである。
素泊まりだが今回の様な周囲の町までが広範囲対象となる緊急討伐依頼の参加者は無料で使えるとのことだった。
通常時でも冒険者なら町の宿の三割程と格安で泊まれ、価格は町により異なるそうで、冒険者ランクが低い者が優先して使える仕組みだそうである。
尤も部屋は大き目のベットと小さなテーブルだけの寝る為だけの部屋との事で、マジックバックが無いと防具の置き場にも苦慮する羽目になるらしく、初心者冒険者の登竜門と一つだそうだ。
因みに壁は薄いのでギシアンしてると周囲に筒抜けとなり、行為中に壁や扉のドン叩きと怒りや怨嗟の罵声を浴びせられ、翌朝には「昨晩は〇回もお愉しみでしたね。」と具体的な回数を示されて揶揄われるそうである。
最悪は魔術が撃ち込まれる事も稀にあるそうでギシアンしたいのなら素直に宿屋を使うのが推奨との事でした。
チェーネの町にある食事所は、酒場を兼ねるのが冒険者ギルド、宿屋三件、専門店が一件、食事所が三件あるらしく、宿屋は宿泊客か宿泊客の連れ以外は料金が割高になるから宿屋客以外が使う事は稀だそうである。
因みにこれは他の町などでも変わらない世間の一般常識とのこであった。
なのでライジン達冒険者は、互いの情報交換や他者の会話を聞いての情報収集も兼ねてギルド併設の酒場を用いることが多いらしい。
尤も取り交わされる会話の全てが真実では無いので真偽を見極める力を養わないと痛い目を見る事になるそうで、こちらも初心者冒険者の登竜門の一つなのだそうである。
私に関するものとしては、白ローブと白マン姿は旅神官の修行者、または派遣先が決まった神官が目的地までの移動の旅の際に身に着けているそうである。
稀に生まれ故郷の教会などで神官候補が多すぎた際に派遣先が決まらずに追い出され流浪により自ら空き教会を探すことになる運悪き人も居るらしい。
尤も普通は一番上に外套を羽織っているので一目瞭然な私の着姿は普通は見かけないそうだ。
神官の中には直接戦闘系や肉体能力向上系のスキルを持つ者が神官戦士と称されてとり、私の様に白いメイスを携えているらしい。
神官戦士は高い直接戦闘力と魔術攻撃力を保持しており、加えて治療魔術での自己回復力によって継戦能力までもが高いため、一部のユニークスキル持ちを除けばチート的な存在らしい。
そこで私は、自身を神官戦士として修行の一人旅に出たとの体にする。
保有スキルの詮索は御法度とされていることから、今回のイビルボアの頭蓋を一撃で粉砕したのは保有の攻撃系スキルによるものとして誤魔化すことにした。
こうしてチェーネの町へは、日が傾くまで今暫くの猶予を残して入口へと至る。
チェーネの町は空堀と1.5m程の石造りの壁に囲まれている。
街道に面する町の入口の門は門番が二名、門に隣接する形で堅牢そうな石造りの建屋があり、衛兵の詰所とのことである。
討伐隊は私を加えると総勢20人となるため、町に入るためのステータスプレートによる身分証明は若干渋滞気味である。
私は初めての事なので最後尾に着いて他の人達の様子を伺いていた。
ライジン達はここ数日は討伐に関係して町を出入りしていた事から門番達とも顔見知り程度にはなっていたらしく、身分証明と言うよりは雑談混じりの挨拶を取り交わしている。
私は身分証明を済ませて早く町に入りたかったのだが、その希望は叶いそうにないかなと諦めかけいた。
その時、イビルボア討伐完了の旨を誰かが伝えたらしく門番が歓声をあげ、何事かと詰所から待機の衛兵達が飛び出してくる事態へと繋がる。
それが討伐完了の歓喜と知れると集まった衛兵達や労わらる側の冒険者たちも揃って歓喜に湧く。
その様は観ていて喜ばしく、そして誇らしいものであった。
「御使い様を無碍に扱うとは万死に値します。マナも少し回復していますので痴れ者共を教育して参ります。」
あ、ザンネンさんは御使い様呼び変わらないのと、その態度もブレない事に少し驚きつつも慌てて止める。
「ステイ、待ちなさい。数日に渡って恐怖していた魔獣が無事討伐され恐怖から解放されたのだから目くじらを立てることでは無いです。」
「御使い様の寛大さに敬服致します。仰せのままに。一先ず門番の二人に声掛けをして先に身分証明を済ませる事に致しましょう。」
ザンネンさんは思考こそアレだが、どうやら優秀な様である。
少ししてカテジナが門番の二人を連れてくる。
「貴女がイビルボアを仕留めた神官戦士様だね。本当にありがとう、これで町の住人たち含めて安心して寝ることもできるよ。」
身分証明の前に感謝の言葉を掛けられると共に握手を求められる。
「それは良かったです。討伐隊の方たちにも幸いにも犠牲者が出なかった何のも幸いでした。」
そう返しつつ握手に応じる。
少し気恥しさは感じたものの、それは決して悪いものでは無かった。
厳密に言えば、犠牲としてザンネンさんの爆誕、サヘランさんの実る前の恋が消滅、クズ冒険者達の引退などが生じているが死亡者はゼロなので気にしない。
その後ステータスプレートを提示した際には一部のステータス値の高さに驚かれたものの問題無く終えて晴れて町へと入場する。
すると先に入場を済ませ歓声に沸く冒険者と衛兵達から感謝や労いの言葉を次々に浴びせられる事になり、今一度の気恥しさと誇らしさを感じるフロレアールであった。
それは英雄譚に謳われる者たちが成した偉業の前には霞み、比較する事すら恐れ多い事かもしれないが、間違いなく今此処チェーネの町に、町の人々を恐怖から解放した小さき英雄たちが凱旋した瞬間であった。
町を恐怖のドン底へと貶めていたイビルボア討伐完了と討伐隊帰還の報は瞬く間に町中を駆け抜けふ。
まだ日が傾き始めたばかりであったことも相まって、町では急拵えではあったが盛大な祝宴が住人総出で開催される運びとなった。
町を挙げての祝宴は夜遅くまで繰り広げられたのである。




