027 名前と故郷
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「残念さん、サヘランを観ていて下さいとお願いした筈ですが、どうしてこちらに居られるのですか?」
サヘランの無念を少しでも晴らすべく、イントネーションを変えて嫌味を込めて問い質す。
「御使い様、私はザンネンではございません。カテジナで御座います。サヘランは先程意識を取り戻しましたので、ご報告に参りました次第でございます。」
一応はサヘランが意識を取り戻したの確認した上で此方に来たらしい。
「御使い様?。カテジナ一体どうしたんだ?。それにサヘランが無事に意識を取り戻したのは本当なのか?。」
どうやら、ライジンは狂信者にクラスチェンジした己のパーティーメンバーに戸惑っているようである。
「何変な事言ってるのライジン?御使い様は御使い様でしょ?それにサヘランが無事に意識を取り戻したのも本当のことよ。」
このザンネンさんことカテジナは、どうやら私と話しをする時だげクラスチェンジする様で、ライジンは理解が追い付かず混乱しているみたいね。
「御使い様のご慈悲をあの様なゴミたちが賜ったことは誠に遺憾ですが、御使い様の救世の一端を垣間見れたことで感銘を受けました。今後は私も微力ながら例えゴミたちだとしても可能な範囲で救いの手を差し伸べ、御使い様の御生誕の御地へと遣わせる事と致します。」
ライジンが「ウチのパーティーメンバーに何してくれてんですか!?」と先程の意趣返しの如くジト目で見てくる。
だが、私はサヘランを治療しただけで別にやましい事は何も無いので、気にも停めない。
数日とはいえボッチで鍛えられた私のSAN値はその程度ではビクともしないのだよ。
「話の腰を折ってすまないが少しいいか?」
リサイクル予定のゴミたち代表が恐る恐ると言った感じで会話に切り込んでくるも、即座に冷や汗を流し始める。
それは睨んだだけで人を殺せそうな目付きでカテジナが睨み返したからである。
「す、すいませんが、貴方様のお名前と故郷の名前を教えて頂ければなと。村に向かう準備とかもありまして、ほんとすみません。」
カテジナの表情が瞬く間に切り替わり、慈愛に満ち溢れたものに変わる。
「あぁ、そうですね。御使い様の御名前と御生誕の御地が判らなければ、そのゴミ同然の人生をやり直す事が叶いませんからね。」
このザンネンさんは私の名前と故郷が知れるチャンスと捉えたらしい。
「それでは改めて名乗るとしますが、私はフロレアール、故郷は此処から南方にあるローゼ村よ。何ならステータスプレートで確認してもらっても構わないわ。」
そう言って私はステータスプレートをローブの腹部分に設けているボタン付きのポケットから取り出す。
と、すかさず奪い取るかのようにザンネンさんが素早く手に取り、両手で持ち直すと恍惚とした表情を浮かべながら香りを堪能し始め、次いで頬擦りを始める。
「はぁぁぁ、御使い様、フロレアール様の香りと温もりを感じますわ♡。これ程のご褒美を賜れるとは辛抱堪りません♡。この様な機会をお与え頂けた事を神様へ心の底から感謝致しますわ。」
人前で決して晒してはいけないトロ顔と心の声を口にするカテジナの頭を簒奪値抜きの力でひっぱたいて蹴り倒す。
次いでステータスプレートを回収して改めて皆の前に差し出すが、誰一人として手に取るものは居なかった。
なぜなら、ステータスプレートの真下から、地面に這い蹲るカテジナが人を殺せそうな目付きで見上げていたのであった。
そんなことをしているうちにサヘランが貧血気味の重く感じられる己の躰を引き摺る様にしながら歩き、討伐隊が集まっているこの場所まで辿り着いく。
「目が覚めたのを伝えにいくって離れて何時まで待たせるんだ?。ちっとも戻ってこないし流石に冷たくないか?。って何でカテジナが地面に這い蹲っているんだ!?。」
サヘランはカテジナの痴態を目撃せずに済んだ様だが、逆に自体が飲み込めていない。
「気にする必要は無い。カテジナが少しバカをしただけだ。」
ライジンが場を収め、これ以上ややこしくなることを避けようとする。
「カテジナが馬鹿なことって何の冗談だ?。カテジナがそんなことする訳ないだろ。」
ゴメン、サヘランさんが知るカテジナはもう居ないんです。
今はザンネンに生まれ変わってしまって、本当にゴメン。
私は堪らず目を逸らし俯く。
「貴方が私の何を知っているというのですか?。直ぐに戻らなかったのはやんごとなき事情があったからです。貴方が目を覚ましたことは伝え終えていました。直ぐに戻らなかったのは、ここに居る皆が貴方よりもその事を優先したからです。そして事が済んだ頃に貴方が此処に辿り着いだけの話です。」
両手でパタパタと服に付いた土埃を手で払いなが立ち上がりつつカテジナはそう告げる。
「なぁ、ライジン。カテジナが以前より冷たいと思うのは俺の気の所為か?」
冷や汗を流しつつライジンが応える。
「皆が死ぬ様な思いを経験したんだ、お前なんて言葉通り本当に死に瀕していたんだぞ。彼女、フロレアールがイビルボアを倒してくれた。その上、お前の治療を請け負ってくれたから助かったんだ。」
ライジンがフォローを入れつつ私を紹介する。
すると私を見たサヘランの探知反応が赤から緑に切り替わる。
「そうだったのか。えっと、フロレアールさん?で間違いないかな。助けてくれて本当にありがとう。」
「気にしなくて構いませんよ。」
私は営業スマイルを浮かべて社交辞令では無く本心から、そうカテジナがザンネンさんにリボーンしてしまった事で、私の中でサヘランに対する貸しは帳消しどころか負債に転じたのである。
「フロレアール様はそう仰られていまますが、サヘランは感謝の念を生涯忘れない様にすべきです。そらから“さん”では無く“様”の間違いでは?。御使い様に対して不敬ですよ。本当ニ不敬デス。二度目はアナタとイエドモ許シマセンヨ?。ワカリマシタカ?」
カテジナが後半は目を見開いて感情が感じられない声で告げる。
「わ、わかった。以後気を付けます。フロレアール様申し訳ありません。」
サヘランは大型犬の様にシュンとする。
「無理に様付けする必要は有りませんよ。寧ろやめてください。それとサヘランさんも目覚めたことですし、そろそろ町へと向かいませんか?。今から移動を開始すれば日が落ちる前に到着できると思うのですが。」
私が様付けの辞退を明言にしたので狂信者以外は普通に名前で呼んでくれるだろう。
そして、ブースト状態を使ったことから早く食事を摂りたいとの衝動が徐々に強くなるのを感じ始めたことから、町に早く向かおうと提案するのであった。
この宵は久々に宿か店の料理を満喫できるのかと思う楽しみである。
そういえばライジンがお詫びに夕食ご馳走してくれるらしいので遠慮なくフードファイトさせて頂こうと思います。




