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024 奇跡の代償

ご愛読ありがとうございます。


拙い文章ですが、面白いと思って頂けましたら“ブックマーク”や“いいね”、“感想”等にて応援頂けると幸いです。


これらの応援は執筆に際しての大変励みなりますので宜しくお願いします。

「お話が纏まった様なので、横から失礼します。お使いになられてる白きメイスとお召になってる白き出で立ちから察するに神官様とお見受け致します。彼を、サヘランをお救い下さい。私の治療魔術では彼を救えなくて。目も覚まさず、状態も良くならないのです。」


所々が血に濡れ、青い顔、目には涙を浮かべ震える声で助けを求めてきた彼女には既視感がある。

それは先程までの交渉相手だったライジンのパーティーメンバーの女魔術士の一人であった。

フロレアールは神官?と疑問に思うがショートとはいえ白いローブに白いマント、加えてメイス使いとなればそう思うのは無理もないかと一人納得する。

私はビレタ帽とかは被ってないのだけどね。

近頃は評価がダダ下がりでストップ安な神殿や教会の関係者と勘違いされた事が腑に落ちないフロレアール。

ここで下手に否定してもややこしくなりそうなので否定も肯定もせずにスルーして話しを進める。


「...,治療魔術はある程度扱えるから連れて行って。他の症状が重い負傷者も次いで観るから動ける人は負傷者の状態を確認して。」


そうして案内された場所には、イビルボアの突進をまともに受けて弾き飛ばされていた盾タンクが横たわっていた。

大柄な体躯に似つかないヒュゥヒュゥとやや甲高く弱々しい呼吸音。

細く弱々しい呼吸には時折“ゴボゴボ”といった水中から空気が漏れ出るような嫌な音が混ざっている。

その顔色は青を通り越して白さすらも感じさせる。

マズイ、一目しただけで重篤と判る。

少なくても肺を損傷して死にかけており、パッと見でも両腕が潰されて折れているのが判るほどである。

幸いなのは出血が少なく感じられるのは彼女の懸命な治療魔術のお陰であろうか。


「ハイヒールを掛け続け出血はやや収まったのですが、マナがもう尽きてしまい。彼の傷も癒しきれなくて、お願いします、助けて、ください。このままだと、彼が死んじゃう。」


ついに耐えきれなくなったのか彼女は泣き崩れてしまう。

ハイヒール、神聖魔術の中級クラス下位とされる治療魔術。

その効果としては切断部が綺麗に残っていれば手足の結合も可能といったところだが、この状態では救命の奇跡に届き得ない。

少なくても中級中位のエクスヒール、願わくば中級上位のグレーターヒールが必要な程の重体である。


「治療を行う前に一つ約束して。私がこれから使う治療魔術については他言しないと。」


嗚咽する彼女からは声を出しての返答はなかったが、フロレアールの顔を見つめて何度も頷いていた。

彼女からの同意を確認し、フロレアールは膝を付き横たわるサヘランを改めて眺めて呟く。


「両腕の損傷に加えて、肺以外の他の臓器も傷付いている可能性が高いわね。となればエクスヒールでは届かないかもしれない。」


その一言を耳にした彼女は目を見開き絶望する。

フロレアールはそんな彼女を意に介さず、サヘランの胸に己が右手を乗せ、己が左手を己が胸の前で握りしめ、静かに瞳を閉じて治療魔術を行使する。


「グレーターヒール」


中級上位の治療魔術、その効果は欠損した手足や臓器すらも再生が可能であり、これを超える治療魔術は上級クラスに座するフルヒールが残されるのみである。

今回は肉体の損傷が激しいとはいえ、幸いにも欠損部位が無いことから問題無く救命に至ることであろう。

治療魔術による淡い薄黄色の輝きにサヘランの身体が包まれると目に見えて判るほどの速さで潰れ折れた腕は癒え、か細かった呼吸は緩やかだが強いものへと移り変わっていくのであった。


わたくしことカテジナは、本当の奇跡と言うもの生まれて初めて、それも間近で拝見する機会に恵まれた。

愛しき者に起きている奇跡を目の当たりとした瞬間、私は呼吸をする事さえも忘れ、その光景に心奪われ見つめていた。

奇跡の力を行使する彼女のその余りにも美しく神々しい見姿に、私は同性にもかかわらず見惚れ、ふと意識が戻った際に確信に至ったのであった。

彼女こそ神様が遣わせになられた神の御使いその人、あるいは聖女様その人であり、この恩に報いるために己が身を捧げねばならないと決意するであった。


僅かな時間が過ぎ、フロレアールの体からマナが抜け出る感覚が消えたことから、治療は完了したと判断して目をゆっくりと開く。

先程まで死の淵に瀕していたサヘランからは治療魔術を淡い光は消え失せていたが、その容態は安定し潰れた腕も綺麗に癒えた様に見受けられた。


「呼吸も安定したので、恐らくは大丈夫かと思います。ご存知かとは思いますが流れ出て失った血液は戻っておりませんので、暫くは無理をさせずに充分な休息と食事を撮られてくださいね。」


私は教会で重傷者への治療を終えた後のテンプレ微笑みながら彼女へと伝える。

そんな彼女の顔を見つめると、泣き腫らして赤くなった瞳は少しトロンと惚け、頬はうっすらと朱が差しており、何故か分からないが漠然としたプレッシャーを彼女から感じる。

それが己が貞操に危険に繋がり兼ねないジェンダーレスな発情者に対する危機感知センサーが発した警告とは、フロレアールは露知らず。


「聖女様、この度は誠にありがとうございました。私に出来ることがあれば何なりとお申し付け下さい。お望みとあらば、私めの躰や貞操ですらお捧げします。出来れば今晩にでも愛でて頂ければ幸いです。」


ドン引きであったが、傾国の美貌による魅了の影響が強く現れたと考え捧げ物については聞かなかったことにする。


「...、取り敢えず聖女様呼びは止めて頂戴。先の約束さえ遵守してくれれば他は構わないわ。」

「不本意ながら承知しました。それで御使い様は何とお呼びすれば宜しいのでしょうか?」


これは何の冗談なのでしょうか?瀕死な彼氏の治療を願い叶えたら、その彼女はNTRて熱狂的な崇拝者にクラスチェンジなされていました。

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