022 蹂躙
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右翼の一団が7名が弾き飛ばされる。
その様を目にした瞬間に逡巡するのは、優先すべきは己を含めたパーティーメンバー五人全員の生存。
其れはパーティーのリーダーとしての責務である。
大型魔獣の緊急討伐依頼により近隣から集まった差程親しくもない冒険者。
その寄せ集めがこの臨時討伐隊である。
その為、ただでさえ効果的な連携は望ず、混乱に陥った現状では尚更である。
例え己自身が命を賭して挑んで単独では相手を屠るには届きえないことは明白。
他冒険者の助力が得難いとなれば、己がパーティーで挑むのが最善手となる。
だがしかし、己がパーティーだけでは化け物を屠るには火力が乏しく最適解とはなり得ない。
己のパーティーはイビルボアの正面を請け負っていた事から幸いにも現時点では全員が無事。
討伐隊を組んだとはいえ関わりも薄い他の冒険者を救うため、仲間の命を掛けてまで闘う価値があるか?見捨てるか?といった考え頭を過る。
そんな考え振り切るが如く頭を振り、意識をそして気持ちを切り替える。
「神聖魔術を使える者は負傷者の治療を!悪いが死亡者は一先ず捨て置く!撤退前提で動くぞ!!安全優先で一度距をとり体制を立て直す!!」
呆然とする周囲の冒険者へと短く指示を激として飛ばす。
「タンカーは攻撃を受け流せ!魔術攻撃は瞳を狙え!」
そう叫ぶと魔術はそこまで得意ではないがイビルボアの瞳を狙って石礫を放つ。
瓦解した右翼の負傷者達からイビルボアを引き離し治療を行わせるためであり、己のパーティーメンバーへと行動開始を伝える為であった。
こうして絶望的な撤退戦が開始されたのである。
フロレアールは歩みを止めて悩んでいた。
巨大なフィアースボアに冒険者達が蹂躙される様を垣間見たことで、助けるべきか否か迷いが生じる。
見ず知らずの他人など自身が知り得ぬとこで日々多くの人が亡くなっている。
当然、今迄気にした事なと一度も無い。
亡くなる様を垣間見て、手が届くのに助けなかったとしたら、その罪悪感はいかほどであろうか。
このまま無視して町に到着しても蹂躙劇から逃げ果せた者が遅からず町に惨劇を伝える事が想像に難くない。
そうなれば町は失われた命への悲しみと魔獣への恐怖に包まれる事であろう。
最悪の場合には魔獣が町へと至る可能性もある。
その際に私は間違いなく魔獣と相対して屠ることになるだろう。
そもそも悲しみや恐怖に包まれた町に滞在する趣味も無い。
となれば、不思議と冒険者達を救う事が正解と思えくる。
何方にしても町に滞在してれば遅かれ早かれ傾国の美貌で魅了従属させる羽目になる。
そうであるなら手の届く範囲であれば救える命は救おうと決意する。
フロレアールは即座に認識加速となり、白メイスを右手に取るとブースト状態で化け物に向かって駆け始める。
イビルボアを負傷者と治療に当たる者たちから引き離す事には何とか成功する。
しかし陣形の立て直しは疎か撤退へ取り掛かる糸口さえ掴めない。
そんな最中に己も逡巡し悩んだ事が他の討伐参加者の手により現実となる。
それはイビルボアから最も距離がある左翼を担っていた者たちの大半が、己の命可愛さに逃げ出したのである。
イビルボアと対峙する者たちを掩護にも加わらず、負傷者や治療施す者を見捨てる決断を下したのである。
己自身も逡巡した逃走、その様を目にした者たちに動揺が走り、取り残された事実に一部の者達の目が絶望の色に染る。
次の瞬間、動揺が影響したのか定かではないが盾タンクがイビルボアの攻撃を受け流し損ねる。
真正面から盾で受け止めた事で盾タンクが生じると弾き飛ばされ、リーダー(仮)が巻き込まれる形で大きく弾き飛ばされる。
辺りに響く悲鳴。
それに呼応するが如くイビルボアが一際激しい雄叫びをあげる。
イビルボアのその視線は街道方向に向けられたが、その事実に気付く者はいない。
弾き飛ばされた盾タンクは気絶したのかピクリとも動かない。
自身も頭を打ち付けた影響か頭部からの流血で片目の視界が失われ、脳震盪の影響で立ち上がる事もままならない。
横たわる盾タンクと立ち上がろうと足掻く自分の元に仲間の女魔術士二人が別々に駆け寄り、抱き付くと同時に治療魔術を施してくる。
中心となりイビルボアと相対し、また指揮をとっていた者のその姿に付近に残っていた冒険者達は一様に絶望を深める。
ある者は脱力してヘタリ込む。
またある者は手から武器が滑り落ちる。
ある者は涙を浮かべ天を仰ぐ。
またある者はガタガタと震え失禁する。
痛む全身とそれを癒す治癒魔術。
大切な人の温もりを感じつつそれが失うことへの焦燥感。
相反する様々な感覚や感情を感じつつ、これはダメかもしれないとの絶望により心が折れかける。
それでも愛するものと大切な仲間を守るため、イビルボアの姿その目にを捉え立ち上がろうと顔を上げた時、それは突如として現れた。
イビルボアは遠方より己を覗き見ていたバケモノには気付いていた。
だからこそ、ソレが急襲してくる事を念頭に置き、矮小な人間たちに取り囲まれる事を許さなかった。
矮小な人間たちがソレの意識を僅かでも傾けさせる撒き餌になればと無理には仕留めず捨て置きもした。
逃げ出す羽虫は意に返さず、無謀にも己と対峙する矮小な人間どもを叩きのめした時、ソレは動き出した。
己を鼓舞する為に雄叫びを上げ、己に迫り来るソレに目を向ける。
イビルボアは確かに見た、ソレは矮小な人間の中でも更に小柄な小さきメス、全身を白き衣で包んだバケモノが矢のような速さで迫っているのを。




