021 上位種
ご愛読ありがとうございます。
拙い文章ですが、面白いと思って頂けましたら“ブックマーク”や“いいね”、“感想”等にて応援頂けると幸いです。
これらの応援は執筆に際しての大変励みなりますので宜しくお願いします。
おはようございます、フロレアールです。
昨晩はたっぷりと愉しみましたけと、ナニカモンダイアリマスカ?、無いのであれぼそれで宜しい。
私はスノコと干し草の敷布団を収納を済ませてドーム小屋を後にする。
次いで拠点施設を地魔術で分解、整地して固めた土地は収納から不要な草や葉、低木を粉砕しつつ混ぜ込み柔らかい土壌を生成する。
ポッカリと森の中に開けた空間、僅か三晩の拠点だったが念願のOFUROの影響なのか思いのほか感慨深い。
でも、立つ鳥跡を濁さず。
この開けた空間も数年後には小さいながらも多くの木が立ち並ぶことだろう。
そして10年も経てば立派な木々に成長して森が再生する事を願う。
そうして私は名も無き小さな森を後にしたのであった。
それは僅か2年後には立派な樹木型モンスタートレントの群生地と成り果てる哀れな森。
それは少女の皮を被ったバケモノが何も意図すること無く膨大な魔力と糧を大地に与え、さんさんと陽の光が降り注ぐ開けた土地に起因するものとはフロレアールはつゆ知らず。
拠点を後にした私は、四日前に自らが大地に盛大に削り描いた転倒の痕跡を地魔術で隠蔽しつつ街道方向へ向かう。
相変わらず探知には黄色い点は見受けられず、ヒューマンなども見受けられない。
トボトボと歩きながら己がトラウマの痕跡と対峙し隠蔽すること小一時間程で隠蔽し終える。
あ、肉厚ダガー君は生憎見つかりませんでしたよ。
あの速度で弾け飛んだので、きっとお星様に成られたのでしょう。
日は未だに頂点に達しておらず、ブースト状態で移動すれば件の五人組を遠目に観察した森まで正午迄には辿り着ける。
そこから普通に走れば目的の町に夕刻前後で辿り着くことも可能となる。
ブースト状態のリスク(腹ペコ)は猪肉で補えば事足りるので一先ず街道近くの森までブースト状態で一気に駆け戻ることにしたのであった。
問題なく森に辿り着いたフロレアールは、モッキュモッキュと猪肉の串焼きと串揚げを頬張りつつ探知で周囲の様子を確認する。
幸いなことにヒューマンなどの旅人の類は居ないことから街道への復帰地点を目的地の町寄りにして少しでも移動距離を短縮する。
それは可能な限り早く町に到着する為、万が一に到着が遅くなった事で宿に泊まれない、または食事を摂りそこねでもしたら、目も当てられないからである。
そうして串焼きと串揚げの双方を10本を平らげ終え、残った串を収納に収めて街道に向かい走り出したのであった。
街道を町へ向けて走り続けること2時間ほど、常人の全速力と変わらぬ速度で走り続けているフロレアール。
簒奪値が加わった体力は常人能力では減ることも無く、疲労は一切感じることは無かった。
それどころか恐ろしい事に息が切れることも無く、汗一つかいてすらいなかったのである。
簒奪値の仕事で体力も当然バケモノに至っており、ブースト状態でもなければスタミナの自然回復量が消費に負ける事は無い。
その気になれば一昼夜であろうが走り続ける事も自らを慰め続けることも可能なのである。
もうそろそろ町に着く頃だと思うのだけどと考えていると、街道からやや離れた地点に黄色い点が一つ現れる。
それを対峙する様にヒューマンと思われる赤い点混じりの集団が鶴翼の陣組みつつ距離を詰めつつあるのが分かる。
探知の部分拡大で状況を確認するとかなりの大きなフィアースボア一匹に対して冒険者達は19人、そして嫌なことに赤い点が御丁寧に五個揃い踏みされておられます。
町に近いからか付近には平原が広がっており、遮るものもないことから拡大目視すれば直接視認することも可能である。
けれども件の五人組のリーダー(仮)は感知系のスキル持ちの可能性が高い。
そうとなればわざわざ身バレの恐れを犯してまで無理に直視する必要は無いのである。
せっかく相手方が都合良く町から出払っているのだから、今のうちに私は町に向うことにしたのであった。
とはいえ、フィアースボアが急に向かってくる事も考慮して気は抜かない。
フロレアールは探知で拡大確認だけは行いつつ町へと急ぎ足で歩を進めていた。
探知で眺めていた鶴翼陣の両翼先端がフィアースボアに掛かりかけたその瞬間事態は急変する。
フィアースボアが予想だにしない速さで駆け出し、右翼側7名が弾き飛ばされ陣形が呆気なく瓦解する。
「えッ!?フィアースボアってそんなに強いの?それに動きも速い!?」
慌てて拡大ポップアップの視点を見下ろし映像から真横からの視点に切り替え絶句する。
真上からの映像でも大きいとは感じていたが、側面から見たその姿は、人の背丈を軽々と凌駕する肩高を有していた。
既視感のある左肩から背にかけてコブ状の腫れは、大型ムカデ型モンスターと激しい闘いを繰り広げていた個体に違いなかった。
その大きさは討伐隊のなかで頭一つ抜けた大柄な盾タンクの背丈ですら七割程度である。
その肩高は優に2.5mを超え、体重は2トン近いと考えられる。
その極悪とも言える巨躯を誇る魔物は、自身を害そうとしていた未だ健在な者共に一切の慈悲なく襲い掛かる。
フロレアールが巨大なフィアースボアと勘違いしている其れは上位種のイビルボアであった。
辺りには、くぐもった呻き声が僅かに聞こえる。
イビルボアに吹き飛ばされたもの達の大半は意識を失っている。
辛うじて意識を保っている者も負傷の影響かまともな身動きは取れず、ただ呻き声を上げている。
突如として起きた蹂躙劇に、その場にいる冒険者たちは半ばパニックに陥りかけ思考が停止する。
「神聖魔術を使える者は負傷者の治療を!悪いが死亡者は一先ず捨て置く!撤退前提で動くぞ!!一度距をとって体制を立て直す!!」
イノシシ型の魔獣は猪突猛進との言葉が示す通り、自身の正面の敵へと一直線に襲い掛かる。
このことから、正面に盾タンクを配した鶴翼陣又は全周包囲で討伐するのがセオリーとされている。
今回もセオリーに乗っ取り苦戦しつつも無事に討伐を終える筈であった。
討伐隊に参加している者の過半数は以前にも同等のイビルボア討伐戦の経験を有していた。
尤も今回は、その固定概念が奇しくも先制攻撃を受ける要因となり、其の一撃で討伐隊の半数近くが倒れ戦闘不能に陥っている。
一団がパニックに陥り掛けた時、咄嗟に声を挙げた者は、奇しくも五人組リーダー(仮)であった。




